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2018年02月05日07:58

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「土の文明史」D.モントゴメリー

この本は相当面白いですぞw

まー なんと言っていいのだろう
土壌考古学とでも呼ぶのだろうか

土には一番表層のO層
次に表土のA層 
表土には長年積み重なった分解された植物や細かく砕かれた砂に含まれる養分がある
その下に下層土のC層
これは硬く締まった粘土層で
その下が岩盤層だ

ごく簡単に言えば
農耕に適しているのはA層で
A層は時間とともにその層の厚みを増していく
人間が農耕を行うと その表土はどんどん流出する
この時
自然増加分と農耕により流出する分がマイナスになり
数万年かけて形成されたA層がなくなれば
多くの場合もう農耕は不可能となる
そして その影響で文明は崩壊する
メソポタミア メソアメリカ
エジプト ギリシャ ローマに至るまで
文明崩壊の一要素は
このA層の流出による
ということだ

気候学者 火山学者 政治学者 宗教学者 歴史学者
皆それぞれの分野から文明への物言いをなすが
実験的に再現可能であり
かつての文明の地にその痕跡を立証できるのは
この土壌考古学くらいだろう
当然 今現在の我らの文明も
この課題からは逃れられない
現在もそれは進行中で
もっともその影響が顕著に出ている国家が
モンゴメリー先生の故郷であるアメリカ合衆国だ

建国直後からアメリカはそれに気づいていた
モンゴメリー先生の目に映るアメリカ建国史は
まさにこの 土壌流出に対する戦いの歴史だ

少し余談だが
日本の敗戦と同時にGHQによる農地解放が行われた
不思議な政策だと思わないか?
この 一見共産主義的にも見えるGHQの政策の動機はどこにあったのか?
本国アメリカでも取られていないこの政策の発想はどこから得られたのか?
個人的見解だけれども
おれはこの政策の基礎には
ローマのグラックス法があるのではないかと思っている
グラックス兄弟はローマの奴隷制の下にある大規模農場を分割し
小規模自作農に分散して与えた
この試みは概ね失敗に終わるのだが
何故にそのようなことを行ったかといえば
奴隷制では農耕の長期にわたる維持は不可能だと見抜いたからだ
不在地主による大規模農場経営は
短期的な換金農業や無理な連作を通じて地力を落とす
効率の悪くなった農地は放棄されて
そこから土壌流出が始まる
農業は目先の利益だけでは維持できない
施肥を行い 土壌流出に気を使い
コストがかかろうとも永続的な生産をしなければ
いずれその国家は移動することになる
そう主張したグラックス兄弟は今持ってローマの良心として語り継がれている
「奴隷制では農業は維持できない」
この摂理は深く人間の欲と経済に関わっている
遠い過去の伝説化したギリシャ文明の担い手たちは
皆 自作農だ
ギリシャ文明の末裔を自認する欧米人の根底に
幸福な自作農という概念は延々と脈打っている

ところが建国直後からアメリカは奴隷制による綿花栽培を主とした農業を行っている
ジェファーソンからワシントン その他大勢のアメリカの指導者は
この強欲を非難している
もちろんそこには平等に対するうっすらとした罪悪感はあった
しかし 彼らの主な主張は
土壌という資源の浪費が
いずれローマやエジプトやメソポタミアにある遺跡が示す
帝国の荒廃につながるのではないかという不安だ
当時のアメリカ人
特に南部の綿花栽培の不在地主は
農地に施肥をせず
使い切った農地を捨て無限にもあるように見える新たな土地に移動した
その方が利益が上がったからだ
奴隷制による奴隷制による農業では
維持可能な農業を行う技術的進歩もその努力も得られなかった
しかし綿花は50年で南部の肥沃な土地から表土を流出させた
北部には綿花は育たず
また莫大な利益を生むタバコも育たなくなりつつあった
北部にはすでに奴隷を住まわせることが困難になりつつあり
それを維持するべきであるという政治的価値は彼らにはなかった
逆に西部に進出しようとする南部の農業生産者は
土壌の荒廃を進め国土を荒廃させる人々に見えた
リンカーンは西部の奴隷禁止をうたって大統領となり
南部の綿花業者の西部への進出を止めた
ここに南北戦争の原因がある
あれは奴隷解放戦争ではなく
奴隷を解放することによる土壌流出防止のための戦争だったわけだ

そんな歴史を持つアメリカが日本を占領した後
農地解放を行ったわけで
農業から不在地主を放逐した
そうしなければ日本がたちいかなるという彼らの常識は
アメリカ帝国を支える占領地の健全経営にもつながるということだ
まー でっかいお世話だが
理にかなってないとは言えない

現在アメリカは不耕起農業の先進国で
土を耕さずに行う農地は
今後 全農地の40%ほどにまで増やすという
理由は土壌流出を最小限に止めるためだ
農業の省力化にもつながるというコスト的な理由もあるので
アメリカの農業界には好意的に受け入れられ
広く研究がなされている
反面 その際に用いられる除草剤の影響が
目下の問題として浮き上がってきている
日本では1%にも満たない普及率だ
最大の障壁は 日本の農業者の
「自分だけ耕さないなんて怠け者みたいだ」
という感情だという
これは深い

さて こういった農業による土壌流出の問題を
日本列島に当てはめてみるとどうなんだろう
日本列島だけが その影響を受けないということはありえない

白砂青松という美しい風景を作り上げたのは
言わずともで土壌流出の結果だ
そして最近言われる砂浜の減少は
アスワンダムを作って農業を壊滅させた近代以降のナイル川と同じ轍に違いない
拝金主義と無知が これほどまでに技術の発達した現代社会を脅かしている
世界が貿易で結ばれ
日本は工業と金融でやっていくという決断をしてから幾久しい
世界の自由貿易協定は
一種の飢餓防止策であり また見方を変えれば
力のない地域に飢餓を押し付けることによる選択的生き残りの術であるかもしれない
何事も終わってからでないとその本質は見えてこない

一つ 面白い話があったw
中国の農業での非常に特異な例だ
紹興地域では稲作が盛んで
他の地域が飢えても飢えずに済んだという
実りが豊かでも米は他の地域に輸出せず
そこの住人は通常の二倍三倍の米を食べたという
そのせいで通常の何倍ものうんこをした
そのうんこは肥料となり
翌年の収穫を増大し続けさせたということだ
なんかこー もんの凄い話だw
しかし 遺伝的に世界最大のうんこ量を誇る日本人の胃腸は
いかなる環境下で鍛え上げられたものであるか?

人肥は今のご時世嫌がられるが
実は下水処理場から出る泥を加工した肥料は
市販されてないが農家は共同購入で手に入れている
こいつをちょいと入れるだけで
大根や人参は丸々と肥えて見栄えもいい
それはもうびっくりするほどだw
田舎の小さな畑で 腰の曲がったおばあさんが
ふくらはぎほどの大根をひょいひょい収穫する陰には
日本人のうんこがある
家畜の少ないこの島で
最高の肥料はうんこだ

もしかしたら 世界中の人間のうんこを
作物に還元できれば
きっと持続性のある文明が期待できる
かもしれないw
それには何が必要か?

南洋のマエンゲ族の畑は
村人の評価にさらされ続ける
上質な 配慮に満ちて肥えた畑は
「ぺ」という「美しい」という意味の彼らの言葉で評価される
きっと村人が何人かで通りかかり
各々目配せし合いながら
「ぺ!」 
うん「ぺ」やねー
とか言い合ったに違いないw
ギリシャの自作農にも通じる美意識だ
もしかしたら 水稲の実る様を初めて見た縄文人も
「ぺ♪」とか思ったかもしれない
そういった感性は何より大事だ

全ては美意識でできているw
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