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2017年11月24日10:00

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大学時代の仲間との例会/その2～那珂湊散策

(続き)

那珂湊駅の改札を出ると、出迎えの方がいる。
幹事Ⅰ田が海外青年協力隊でブータンに行った時同行した知人だとのことで、Ⅰ﨑さんと仰る。
ひたちなか市在住の元教師で、今は郷里のための活動をしている由。地元の歴史に詳しいのだそうで、しばし市内を案内して下さることに。
前述の車輌の件も、I﨑さんに教えて頂いた受け売りである。

小さな駅舎は1913(大正2)年にできた木造で、「関東の駅百選」にもなっており、李相日が監督して日本アカデミー賞最優秀作品賞を受賞した映画『フラガール』(2006)にも使用されたらしい。
駅前から細い道をくねくね歩く。何しろここらは古くからの道がずっと残っていて、真っ直ぐな道は国道だけだとのこと。

しばらく歩くと、丘の手前に古びた山上門がある。形式は薬医門。
これは江戸小石川の水戸藩邸にあった由緒のあるもので、1937(昭和12)年に移築された。
これを潜って丘(吾妻台)を昇ると、那珂湊反射炉跡がある。

黒船来航(1853)以来、国防の必要性を主張した9代目水戸藩主徳川斉昭が鉄砲,大砲鋳造の施設として、安政年間に作らせたものだ。
那珂湊は全国で4番目の反射型溶解炉建造地となった。伊豆韮山は3番目で、全国に10数ヶ所建造された。
建設技術者に呼ばれたのは南部藩士大島高任、大工棟梁には地元宮大工飛田與七が指名された。
那珂湊は、南部釜石から鉄鉱石を航路で運び入れ易いこと、那珂川上流の那須の粘土が耐火レンガに向くこと、また吾妻台が岩盤の上にあってしっかりしていることなど、好条件が揃った。砲身穴の錐によるくり抜きには、地元百姓の水車動力が利用された。
大砲は20門程作製され、幕府に献上されたが、1864年に起こった尊王攘夷派の内部抗争で起きた天狗党の乱(元治甲子の変)により、反射炉は完全に焼失した。この辺りは死屍累々のありさまであった由。
しかし、ここで培われた耐火レンガの技術は、日本のセラミック工業の歴史上に大きな意義をもったと言われる。
1937(昭和12)年に記念モニュメントとして復元され、現在に至っている。

この裏道を抜けて県立那珂湊高校の前を過ぎると、真言宗の古刹華蔵院(けぞういん)の墓地に出る。
墓地の山の急な下り坂の途中には、前掲飛田與七の墓があった。

華蔵院の正門を出て西へ歩くと、那珂川にぶつかる。
河口の方を見ると、赤く塗られた美しい海門橋があり、その向こうは太平洋である。
土手に上ると、河岸工事が続けられている。元は、この川岸はただの砂地だった由。

この辺りは標高が低く、東日本大震災の津波で大きな被害を受けた。土手を越えて水が宅地側に入り込み、多くの家が浸水によって傾いた。
その後、高台に作られた団地に住居を移す人たちもいて、所々空地になっているが、そのまま同じ所に家を建て替えている人も多い。
漁業者の倉庫もたくさんあったらしいが、今はない。

川沿いに河口方向に歩く。
河口には、那珂川が運んだ土砂が大洗側から伸びる長い砂州を作っていたが、1894(明治27)年、砂州を人工的に掘削し、河口を開けた。
併せて、那珂湊港を河口から堤で区切り、川がもたらす土砂の影響を受けない構造にした。
当日、殆ど風はなかったが、人工堤の岩に太平洋から直接打ち付けて割れる波は結構大きいように見えた。が、嵐の日はこんなものではない、とI﨑さん。

日和山(ひよりやま)裏手の急なジグザグの階段を上がると、開けた場所に出る。
ここは今、湊公園と称されているが、昔は「夤賓閣(いひんかく)」があった場所だ。
夤賓閣は、第2代水戸藩主徳川光圀(黄門さま)が1698(元禄11)年に建てた迎賓館ないし別邸である。
1部2階建てで、部屋数は30程もある豪壮なものだったが、やはり前掲の天狗党の乱(元治甲子の変)で焼失した。
最近その図面が発見され、建物を再現したいとの動きがあるとのこと。
但し膨大な費用がかかるため、ひたちなか市レベルでは不可能である。
I﨑さんの名刺を改めて見ると、「夤賓閣復元研究会」副会長となっていた。
湊公園には、光圀が須磨明石から遥々取り寄せたという樹齢350年にも及ぶクロマツが10数本残されている。大変見事なものだ。
日和山のなだらかな頂きに立つと、那珂湊の街から海岸線が南北に180度見渡せて、これはまさに絶景と言うべきだ。

これで、Ⅰ﨑さんの解説付き現地案内はお終い。
我々の今夜の宿泊所である春日ホテルにまでわざわざ引率頂いた。
ホテル着は14:30過ぎだった。