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2017年06月11日19:40

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【音楽】 東京交響楽団演奏会 〜ラプソディ

今日は川崎に行った。毎日通っている川崎だが、今日は仕事ではない。ミューザ川崎に、東京交響楽団の演奏会を聴きに行ったのである。「ラプソディ特集」と題する演奏会だ。

プログラムは次のとおりである。

 ・E.シャブリエ:狂詩曲「スペイン」
 ・C.ドビュッシー:アルト・サクソフォーンと管弦楽のための狂詩曲
 ・G.ビゼー:「アルルの女」第2組曲より間奏曲
 ・F.リスト:ハンガリー狂詩曲第2番
 ・G.エネスコ:ルーマニア狂詩曲第1番
 ・伊福部昭:日本狂詩曲
 ・外山雄三:管弦楽のためのラプソディ

   指揮:井上道義/アルト・サクソフォーン:上野耕平
   会場:ミューザ川崎シンフォニーホール (開演:14:00)

楽しそうなプログラムなので、これは聴きに行きたいと思い、行くことにした。その期待を裏切らない、楽しい演奏会であった。

オーケストラの音合わせが終わり、指揮者の井上さんが登場すると、拍手が鳴っている中でいきなり演奏が始まる。もちろん、その瞬間に拍手はピタッと止まったが、さあこれから演奏会を始めるぞという厳かな雰囲気ではなく、今日は気楽に聴いてね、という感じである。

1曲目のシャブリエの「スペイン」は聴いていて楽しくなるような、つい身体が動いて踊りたくなるような演奏であった。もともと楽しくて明るい音楽なのだ。素直に楽しんで聴けばよい。(もちろん、みんな静かにマナーよく聴いていたのは当然だが。)

このあとは、アルト・サクソフォーン奏者の上野さんと指揮者が現れ、2曲目のドビュッシーだ。今日のプログラムの中では、唯一馴染みの薄い曲であったが、自宅のCD棚をあさったらCDは持っていた。1曲目とは雰囲気がガラリと変わり、ドビュッシーらしい、ちょっと気怠いようなメロディーも多く、アルト・サクソフォーンの音色にこれまたよく合っている。上野さんのサクソフォーンはさすがという感じであった。

このあと、井上さんと上野さんは引っ込みかけたが、すぐにステージ中央に戻ってくる。曲が終わるたびの、出たり入ったりの「儀式」は省略ということだ。井上さんがマイクを取り、「もう、アンコールです」で、「アルルの女」の間奏曲が始まった。今日のプログラムで唯一「ラプソディ」ではなく、プログラムにも予め「アンコール」と記載してある。もちろん、アルト・サクソフォーンが活躍する曲だから加えたのであろう。印象的なメロディーがアルト・サクソフォーンによって奏でられ、これも良い感じであった。上野さんはうまい。井上さんの指揮もうまい。最近ほとんど聴くことのなかった「アルルの女」組曲も、間奏曲だけ取り出して聴いてみると、なかなか良い曲だなと思った。

休憩のあと、なぜかオーケストラがステージに上がる前に井上さんが登場。「今日はなぜアルルの女を入れたのでしょうか」と説明する。「アルルの女は劇音楽で、女に出会った男は不幸になるのです。もちろん、幸せになる人もいますし、男性より強い女性もいます。」と、なんだかよく分からない説明だったが、あとは考えてくれということなのだろう。

オーケストラに「入ってきていいよ」と呼びかけ、「では、もう一度、指揮者らしく登場します」と言って引っ込む井上さん。次はリストの「ハンガリー狂詩曲第2番」だ。前半はゆったりと重厚な演奏で、リストのこの曲はこんなに重かったのかと思ったが、もともとはピアノ曲で、オーケストレーションしたのはリストではない。その重厚な雰囲気から一転して、後半では一気にテンポを速めて熱狂的に盛り上げる。これには会場もヒートアップし、演奏終了後に「ブラヴォ」の声があがった。

このあと、また井上さんがマイクを取ってトーク。曲が終わるたびに出たり入ったりはしない。「ハンガリーの次は、そこと接しているルーマニアです。私も若い頃にルーマニアにも行きました。当時はチャウシェスク独裁時代で、冬なのにホテルにも暖房がなく、ヘアードライアーを夜じゅうつけて暖を取っていました。(「ヘアードライアー」で会場から笑い) そんな環境でも、オーケストラはこの曲は楽しそうに演奏するんですよ。」

そんな紹介でエネスコの「ルーマニア狂詩曲第1番」が始まった。そういうトークを聞いた直後だからという訳でもなかろうが、本当に楽しそうに演奏しているように聞こえた。そして、後半の激しくなる部分、私がこの曲で一番好きな箇所では、思わず鳥肌が立ってしまった。これは素晴らしい演奏だ。

ヨーロッパを巡ったあとは、日本である。また井上さんのトーク。「東京交響楽団は昔から伊福部昭と縁が深く、伊福部の曲を演奏するとなると血がたぎります。日本狂詩曲は20歳の頃の作品でこの作品で世界に認められた訳ですが、実はオーケストラの音のバランスが難しいんです」ということである。

「日本狂詩曲」は「夜曲」と「祭」の2曲からなるが、1曲目の「夜曲」は、しみじみと日本情緒だ。太鼓のリズムに乗せて、ヴィオラのソロが情緒たっぷりに奏でる。オーケストラでは目立たない役回りのヴィオラも、この曲では主役である。ヴィオラのソロをじっくりと聞かせてくれたあとは、オーケストラ全体に引き継がれていき、最後の方のハープは琴のような響き。西洋の楽器を使って、日本的情緒を響かせる伊福部昭と、それを的確に演奏するオーケストラ。実に素晴らしい。

こうやってしみじみと浸っていると、2曲目の「祭」は派手に盛り上がる。さあ、楽しいお祭りの始まりだとクラリネットが告げると、いきなりドンチャン騒ぎのわっしょいわっしょい。しかし、ただ音が大きいだけの音楽ではなく、むしろ過度な大音響にならないように抑えつつ、しっかりと盛り上げるという演奏であった。演奏前に「音のバランス」と言ったとおり、さすが井上さんという、実に素晴らしい演奏になった。(この曲は、ただ大音響で突っ走る演奏もある。)

最後は外山雄三だ。日本人には馴染みのメロディーが満載の音楽である。演奏が始まると、出だしがちょっと合わなかったのかやり直しになった。こういうのは珍しいかもしれない。あとは、「あんたがたどこさ」、「ソーラン節」、「炭坑節」、「串本節」と続き、このあとが、この曲のハイライト「信濃追分」である。フルートソロによる「信濃追分」にじっと聴き入っていると、井上さんの「うりゃ」と掛け声とともに「八木節」が始まり、これまた最後は盛り上がってしめた。

「外国に演奏に行くと、アンコールにこの曲を演奏することが多いです。という訳で、今のがアンコール」と、今日はもうアンコール演奏はないことを告げて終了。

長大な交響曲を聴く演奏会もいいが、こういう演奏会もいい。今日はとにかく楽しめた演奏会であった。いい気分で休日を終えることが出来そうである。

クラシック音楽の演奏会は堅苦しいというイメージの人が、私の周りにも時々いるが、今日のような演奏会に行けば、そんなイメージは払拭されるのではないだろうか。
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