ジャンボ鶴田怪物伝説(324)

83年６月６日、大津市皇子が丘体育館(観衆2700人発表)のメインイベントはリック・フレアーvsブルーザー・ブロディのノンタイトルのシングルマッチ60分１本勝負。

２月10日にはミズーリ州セントルイスのチェッカードームにてＮＷＡ世界ヘビー級王座を賭けて対戦(１-１から60分時間切れ引き分け)した黄金カードが日本でも実現しました。

試合は両者額から大流血し、もつれ合って両者場外乱闘となり観客席の奥まで入っての乱激戦、収拾がつかなくなり15分10秒、ノーコンテストとなっています。

残念ながらこの日の興行はノーテレビであり映像は残っていません。

セミファイナルは馬場、天龍組とディック・スレーター、ビル・アーウィン組。天龍が延髄斬りからアーウィンをフォール。

鶴田はセミ前でロディ・パイパーと注目のシングル戦、15分44秒、逆さ押さえ込みによりフォール勝ちをしています。

シリーズ最終戦、６月８日、蔵前国技館(観衆12500人満員発表、テレビ収録)は３大タイトルマッチが組まれました。私はこの興行は見に行っています。

ダブルメインイベント第２試合で鶴田は１年ぶりにフレアーのＮＷＡ世界ヘビー級王座に挑戦。

３本勝負は原則撤廃となっていた全日本プロレスでしたが、この日はこのタイトル戦のみ60分３本勝負。

体格差で勝る鶴田がスタートから試合を優勢に進め、フレアーは足４の字固めを執拗に狙っていきました。

鶴田はジャンピング・ニーパットでフレアーをダウンさせると、バックに回ってフレアーのボディをしっかりグリップしてのルー・テーズ式のバックドロップ。

29分39秒、完璧な体固めで鶴田が１本目を先取しました。

２本目は30分しか残り時間がなく、フレアーがニークラッシャーからついに足４の字固めに鶴田を捕らえるも鶴田はギブアップせず。

ストレート勝ちによる王座奪取を狙う鶴田でしたが後一歩攻め切れず、60分時間切れのゴングが鳴りました。

この瞬間、客席からは鶴田がついに新ＮＷＡ世界ヘビー級王者になった、と大歓声が沸き上がりました。

反則、リングアウトによる勝利ではベルトは移動しないのはファンにも刷り込まれていましたが、１本目をフォール勝ちしているのだから王座移動かと思われても何の不思議もありません。

しかし、本部席の原軍治リングアナからは「鶴田が２フォールを奪っていないのでベルトの移動はありません」と場内アナウンスがありました。

その瞬間、客席は怒号と罵声に包まれ、「フレアー、もう日本に来るな！」という痛烈な野次が飛びました。

この為の３本勝負だった訳ですが、実際には鶴田が新王者になったと思った観客がかなりの数いたことは確かでした。

ダブルメインイベント第１試合は馬場のＰＷＦヘビー級王座にブロディが挑戦。(60分１本勝負)。

この試合で印象に残っているのはブロディの攻撃に激怒した馬場が場外に逃げたブロディを追ってリング下を「走った」ことでした。

後でテレビ放送を見たらそのスピード感は伝わって来なかったですが、確かに走っていました。観客席からは大きなどよめきが巻き起こっています。

試合はブロディがレフェリーにぶつかり、レフェリーが失神している間にブロディがチェーンを持ち出してしまい、馬場もブロディのチェーンを使って反撃。

蘇生したレフェリーがこれを見てゴングを要請、13分48秒、両者反則を宣告し、引き分けにより馬場が２度目の防衛を果たしています。

セミ前は天龍とスレーターがシングルで対戦、天龍が逆さ押さえ込みでフォール勝ち。スレーターは精彩を欠いていました。

新ＮＷＡインターナショナル・ジュニア・ヘビー級王者チャボ・ゲレロにマイティ井上が挑戦。

大会場での久しぶりの大一番となるＭ井上はキャリアに裏付けられたレスリングマスターぶりを存分に発揮。

フライング・ショルダーアタック、サマーソルトドロップの連発であわや王座奪取かと思わせました。

しかし、フライング・ショルダーアタックをチャボにかわされ場外に転落、すかさずチャボは場外のＭ井上にプランチャ。

このまま場外戦となり11分25秒に両者リングアウトの引き分けでチャボが王座初防衛に成功しました。

タイトルマッチ３つはいずれも不透明決着で終わりました。

新日本プロレスとの興行戦争は新日本が６月２日、蔵前国技館で猪木vsハルク・ホーガンのＩＷＧＰ優勝決定戦を持って来て13000人超満員発表。

この日の全日本は▲500人の12500人発表でしたが立錘の余地もなかった新日本に比べて空席もありました。新日本のＩＷＧＰが全日本に勝利。

また、猪木の舌出し失神事件もあり話題性でも新日本プロレスが持って行った感がありました。