mixiユーザー(id:9160185)

2016年12月22日23:24

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12月、意味のない橋と思慮深いカラス


少し前に
壊れた橋の上に立って
きみは笑顔を浮かべている
ひびわれたセメントは
ゆうべの雨のせいで
稼働停止した工場の
機械のようなにおいがする

その橋を苦労して渡っても
きみはどこにもたどり着けない
そこになにがあったのか
判別もつかない
ワンルームマンションの部屋程度の
苔むした空地があるだけだ
目にしたところで
どんな納得も得ることは出来ない

橋の下には
ひどく水の少ない川が流れている
退屈しのぎの時の小便のように
渋々といった調子で音もなく流れている
一晩中雨が降り続いても
この川を満たすには全然足りないのだ
もしきみが足を滑らせて落下したら
間違いなくどこかの骨がポッキリと折れるだろう

橋のこちら側に公衆便所があるだろう?
あそこは昔ちょっとした名所だったんだぜ
女子トイレの
一番川に近い個室で
何人もの老若男女が自殺したんだ
夏よりは冬の方が多かったな
何人かは発見されたとき
それが人かどうかもすぐには判らない状態だったらしいんだ
一度だけ
そんな騒ぎを見たことがある
綺麗な女の子だったよ
死んでるかどうかもよく判らない
綺麗な女の子だった

きみは橋の下を覗き込んでいる
危ないよ
そこのセメントは特にぐらついているんだ

橋の向こう側に大きなカラスが居る
きみのしていることに興味があるらしい
カタパルトに乗った戦闘機みたいな恰好で
きみの背中のあたりを見つめている
あのカラスがどんなことを考えているのか
スマートフォンが教えてくれたら面白いのに

12月だというのに
妙に気温が高くていやになっちまうな
長袖の先で額の汗を拭う
きみは
おどけた調子でぼくに手を振っている
きみの指先に合わせて
カラスの
くちばしが揺れている
大事な話をしなくちゃいけないのに
空は


気持ちよく晴れている

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