mixiユーザー(id:9160185)

日記一覧

目覚めてはシャワーを浴び、地図を見て行先を決め、ひがな一日どこかの店を覗き込み、気に入ったちょっとしたものを買ったりミユと夕食を共にしたりしているうちに数日が過ぎた。六日目の夜、ホテルの部屋に車が出来上がったとモリから連絡が入った。「驚くぜ

続きを読む

翌朝、変に早い時間に目が覚めた。だが、充分に眠ったという感じがあったので、そのまま起きることにした。昨夜は部屋に戻るなり歯を磨いて眠ってしまった。気持ちが幾分和んだことで、身体がようやくロング・ドライブの疲れに気付いた、という感じだった。シ

続きを読む

文庫を5冊、雑誌を2冊、ハードカバーを1冊買ってホテルの周辺まで歩いて帰ってくる頃には、いろいろと考え過ぎて軽い頭痛すらしていた。そして、都会に憧れて出て行ったやつらはみんなこんな混乱に陥ったのだろうかなどとぼんやり考えていた。いや、彼らは

続きを読む

最後に、どこかしらに塗料が残っていると思うからその色で塗っておくよ、とモリは言った。任せる、と俺は答えた。それから修理工場を出て、ホテルの方角へブラブラと歩いていると、巨大なデパートを見つけた。15階建てくらいだろうか?隣に、ほぼ同じ高さのタ

続きを読む

おかしな夢の感触を目覚まし代わりのシャワーで洗い流し、服を着た。そして、今日のうちに着替えも少し買っておこうと思った。考えてみれば、この街に滞在するつもりなんか、出発したときにはまるでなかったのだ。ずいぶんとあわただしい旅だ、と俺は思った。

続きを読む

マンションの正面玄関の前には、一流のホテルによくあるみたいな車回しがあった。そこに滑り込んでいく俺のトライアンフは、致命的なまでに笑えない冗談のように思えた。車が止まるとリナはふう、と一息ついて俺に微笑んだ。「ほんとは、ささやかなお礼にコー

続きを読む

夜がだいぶ更けてきた頃に、リナは一度目を覚まし、キャンディーを一粒なめる間ぽつぽつと話したが、キャンディーがすっかり溶けてしまうとまた眠りに落ちた。今度は本格的な眠りのように見えた。俺は、カー・ラジオで流れている曲に時々耳を澄ましながら、前

続きを読む

リナの仕事に追加注文はなかった。リナは荷物をまとめ、ホテルを引き払い、自分の街へと帰ることになった。事務所側が急ピッチで進めたいらしく、打ち上げをする時間は取れなかった。リナがその知らせを受けたのは夕方で、その時間になるとこの街にはリナの街

続きを読む

あと一ヶ月はかかるだろう、と言っていたリナの仕事は、半月で済んだ。俺がハンドルを握ったことで、リナが一人であちこちしているときよりスムースに進められることが多かったのだ。駐車ひとつとっても、駐車場を探す時間が省ける。移動中に事務的な仕事をす

続きを読む

次の朝、朝食を取る前に工場へ顔を出してみると、社長もすでに来ていて、昨日と同じように電話に向かってなにやら喚いていた。俺と目が合うと片手を上げて、「待っててくれ」のポーズをとった。俺も無言で頷いた。不自然なほどに静まりかえった仕事場の中に、

続きを読む

まずは、リナの車がある駐車場に行って、その日必要なリナの荷物を俺の車に積み込んだ。手伝おうかと言ったが運転だけしてくれればいいから、と言うのでそれに徹することにした。彼女の車はプジョー・403だった。俺の趣味をどうこう言えたギリかよ。いや、車

続きを読む

次の日、バーガーショップに顔を出すとすでにリナが来ていて、カウンターでユイと何か話し込んでいた。ユイがあ、と言い、リナが振り向いて手招きをした。呼ばれなくてもカウンターには間違いなく行くのだが。「ね、次の日曜、ユイさんと私とシチさんで一緒に

続きを読む

たわいない話をしたり、窓の外の景色を見ていたり、工場の中を案内してやったりしながら夕暮れ前までそこに居た。それから、リナの希望で駅の裏のレストランに移動した。ユイはまだ来ていなかった。休みの日かもしれない。席について、少し早い夕食をとりなが

続きを読む

素敵な景色なんて言っても、観光などにはまるで需要のない、弱小工業地帯のこの街のことだ。俺が思いつく「素敵な場所」とは、ひとつしかなかった。ユイに冷やかされながらバーガーショップを出て、そこまで歩いていった。白い無地の長袖シャツと、ベージュの

続きを読む

翌朝、俺はいつものようにバーガーショップでいつもの注文をし、ユイのからかうような視線を避けながら、いつもの席に腰を下ろした。ハンバーガーを頬張りながらコーヒーの湯気越しに窓の外を眺めていると、やがてリナが入ってきた。きっと、いつもの席に座る

続きを読む

帰りの車の中では、リナはほとんど眠っていた。最初の休日が今日ということは、ずいぶんな期間を休みなしで働いていたわけだ。それは彼女のいる事務所の方針なのか、それとも彼女自身の方針なのか…?どちらにしてもずいぶんな働き者に違いない。こんな変わり

続きを読む

昔、友達の家があった駐車場代わりの空地に止めてある俺の車を見て、リナはとても難しい顔になった。「これは、人を乗せて走ることが出来るのよね?」そうじゃないと困るな、と俺は答えた。「でないと、俺が今まで乗ってたのはなにかの間違いだったってことに

続きを読む

駅前のバーガーショップであの女はいつも途方も無く真剣な表情で長い髪を編むのだ、まるで、左右の髪を均等に編みこむことが出来たらそこかしこで厄介な話を起こしている原子力発電所が一基、音も立てずに消え失せるというミラクルが実現すると信じているみた

続きを読む