「アフォーダンス入門」

佐々木正人先生著

この手の書物として非常に優れている
この手の書物というのは　専門書への導入のための書物という意味だ

優れていると思われたのは
この著書の新しい分野の自然科学に対する姿勢だ

人間の認知に関わる事柄であれ
これは自然科学の一分野だ
自然科学の理論を　都合よく社会現象や他の自然科学に対し
不確定な類推に用いてはいけない
そこのところを注意深く排除する姿勢をかたくなに守る著者の姿勢は清々しい

先だって書いた日記のミミズの話は　この本に書いてあるw
そこだけ読んでも実に楽しい
その話はダーウィンの研究について述べたもので
他にもダーウィンが解き明かした　サンゴ礁の「環礁」が何故できたのかという話や
植物は回転しながら成長するという
一体どこが人間の認知に関係してくるのか全くわからないような話が並ぶ
ダーウィンが誤解され　今も誤解され続けている
「生物は無目的に変化し続ける」というテーマの再確認でもある

それらの話が
アフォーダンスという新しい概念に
一気に流れ込んでいく様を
平易な　ともすれば童話のような語り口で書き現わすのは
この著者の自らが抑えに抑え込んだ興奮と情熱に相違ない

もしかしたら　我々は
もう一回　ダーウィンに教えを請うことになるのかもしれない
「ミミズに知能がある」
そう言った言葉の裏にある意味と
限りない想像力の地平は
我々自身の「認知」という不思議極まりない世界を変えていくかもしれない

久しぶりにいい本を読んだ気がする
どんな分野に興味のある人にも一読を薦めたい