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2015年10月24日22:22

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【散策】 韮崎 芸術の秋

天気のよい秋の休日。絶好の行楽日和であるが、芸術の秋らしく、今日は美術館に行くことにした。行先は山梨県の韮崎である。自宅最寄駅から南武線で立川に行き、立川から中央線に乗り換え、高尾始発の小淵沢行きに乗換える。車内はハイキング(山歩き)に行くような格好の客が多い。中央線は高尾を境に雰囲気が変わり、慌ただしい都会の電車から長閑な路線になる。早速次の相模湖で特急の通過待ちというが、しばらく停車したのち、なぜか特急が通らないうちに出発した。ハイキング客は藤野と上野原でかなり降りてしまったようだ。笹子からは長いトンネルが続き、勝沼ぶどう郷のあたりで甲府盆地が眼下に広がる。中央線の中でも好きな風景だ。塩山では特急の待ち合わせをするが、そのあとの山梨市でも、「横浜線の事故で遅れていた特急はまかいじの待ち合わせをするため、発車が遅れる」という。相模湖で抜かれるはずだった特急だろう。おかげで8分の遅れで発車した。急ぐ訳ではないのでどうでもよいが、中央線と関係なさそうな横浜での事故の影響を受けるとは思わなかった。韮崎にも8分遅れで到着した。

韮崎駅をおりると、予想はしていたが、「祝ノーベル医学・生理学賞受賞 大村智博士」の文字が飛び込んできた。韮崎出身の科学者がノーベル賞を受賞したため、韮崎は町全体が祝賀ムードで、このあとも至るところで「祝 大村智博士」の文字を見かけることになる。

さて、その大村智博士は、輝かしい業績でノーベル賞を受賞した科学者であると同時に、美術館館長としてのもう一つの顔がある。絵画や陶磁器を収集するという趣味があり、それらに触れる喜びを分かち合いたいと、この韮崎に美術館を開館したのである。それが韮崎大村美術館で、今日の目的地である。

韮崎大村美術館に行くには、バスがあるが35分も待つようだ。歩いて行くには駅から少し遠い。そこでタクシーを使って行くことにした。タクシーでは10分ほどである。急に訪れる人が増えたのか(自分もその一人だが)、タクシーは慣れた感じでさっと大村美術館に向かった。美術館は釜無川を渡ったさらに先の静かな山間にある。入館料は510円である。早速中に入ると、ノーベル賞効果(?)なのか、かなり賑わっていた。

中に入ると、まずは企画展示室で、実りの秋に相応しく、果物を描いた絵画が展示されている。鈴木信太郎の「ザクロと栗」など、一見素朴なようでいて味わいがあり、これは結構気に入った。鈴木信太郎の作品はこの美術館の主役であり、2階にも鈴木信太郎展示室があるが、豊かな色彩と温かみのある作風で、今日初めて接した画家ではあるが、なかなか良いと感じた。1階の奥は女流作家の展示室だ。大村博士は女子美術大学とも接点があり、女流作家には特に思い入れがあるとのことである。女性が描いた女性の絵で、なんとも言えぬ表情が何かを訴えかけてくるような作品が2点あった。1つは、栗原喜依子の「静かなる日・夏」、もう一つは堀文子の「アフガンの王女」である。この「アフガンの王女」の顔が誰かに似ている。あっ、と気付いた。黒柳徹子さんがモデルなのだ。訊くとそのとおりであった。「徹子の部屋」というTV番組でも、背景にこの絵の複製が掲げられているらしいが、TV番組の方は分からない。黒柳さんの肖像画を描いた訳ではなく、あくまでも「アフガンの王女」を描いたのだという。他に、高尾みつの「自然回帰スペース05-8-C軌跡」という抽象画も気に入った。ちょっと理系的(?)な匂いのする絵である。

外に出ると雨宮敬子作「大村智先生の像」がある。館長の像も芸術作品の一つだ。もちろんノーベル賞受賞が決まる前に作られている。2階は前述のとおり、鈴木信太郎展示室があるが、やはり素朴な温かさがある絵が多いように感じた。風景画では「銚子の風景」が気に入った。また、展望カフェもあり、中央には陶芸作品が展示されており、窓からは八ヶ岳や茅ヶ岳などの山々が見渡せる。風景そのものが、最高の風景画なのかもしれない。しばらく美術館内にいて、十分に堪能したので外に出ることにした。

すでに正午を過ぎており、隣りに蕎麦屋があるので昼食にちょうどいいと思ったが、かなりの行列が出来ている。「大村先生のノーベル賞受賞後訪問者が多く、当店も混雑しているので、メニューを限定して提供します」という貼紙があった。1時間ぐらい待たされそうな雰囲気だったので、この店はあきらめて、駅の方に戻ることにした。駅への道は来た時のタクシーで大体分かった。歩くと40分ぐらいだろうと見込んで、のんびりと歩き始めた。釜無川の手前は長閑な風景だ。道ですれ違う中学生か高校生が「こんにちは」と挨拶をする。見知らぬ同士でも挨拶を交わすとは、都会ではほとんどないことで、少しばかり気持ちが晴れ晴れする。さらに行くと、豆腐屋の喇叭の音が聞こえた。見ると本当に豆腐屋で、喇叭の音を合図に豆腐を買いに来た主婦、こんな昭和時代の光景にまで出会うとは、些細なことでもうれしくなる。

釜無川を武田橋で渡ると韮崎市役所だ。ここも大村博士のノーベル賞を祝う横断幕が掲げられている。市役所の敷地内には武田太郎信義の像がある。武田氏初代当主であり、武田信玄は子孫にあたる。甲斐といえば武田である。現在は大村智博士一色だが、韮崎ゆかりの人物は他にもたくさんいるのである。その一人が阪急グループの創設者である小林一三である。市街地に入ると「にらさき文花村」というものがあり、何かと思ったら「小林一三生家跡」の碑があった。実は小林一三が韮崎出身だとは知らなかった。タクシーかバスで戻っていたら気付かなかっただろう。さらに少し歩くと、雲岸寺がある。窟観音で有名なお寺だ。洞窟のようなものがあり、そこを抜けると見えるのが、韮崎平和観音である。駅からも見えたので気になっていたが、折角だから近くまで行ってみた。駅を見下ろす高台におられ、韮崎の町を見守っているようだ。

下におりて駅前に出ると、まだ昼食を食べていないことを思い出した。もう正午をかなり回っている。駅前にある市民交流センター内の「コーナーポケット」というベーカリーカフェで食事をする。この市民交流センターは「ニコリ」という名称らしい。このニコリの中にも大村美術館サテライトスペースがあったのでもちろん入ってみる。こちらは無料だ。絵画と陶芸作品が展示してある。「あ、これは鈴木信太郎の絵かな」と思って近寄るとそのとおりで、絵画には全く疎く、鈴木信太郎も今日初めて知った画家なのに、なんとなくこの人の作風が気に入ったようだ。隣りには「ふるさと偉人資料館」がある。小林一三と保阪嘉内の2人に関する展示を中心に、郷土の偉人に関する資料が展示されているが、寡聞にして知らない名前も多い。入口付近には、大村智博士について急遽付け足したような展示もあった。2階は図書館である。少し覗いてみると、やはり大村博士関連のコーナーが設けられている。寄生虫や微生物の本、ノーベル賞の本などだ。寄生虫の本が頻繁に借りられるとも思えないが、これを機会に興味を持つ人が増えるだろうか。

駅前には「ライフガーデンにらさき」というショッピングモールもある。駅から見るとよく分からないが、近くに行くとかなりの大型モールである。駅側は裏側でモールの表口は反対側だ。韮崎の市街地も改札口のある側とは反対側の線路の向こうだし、どうも韮崎の駅と町の関係が不思議である。ショッピングモールといっても買物をするでもなく、結局はいつものとおり(?)書店を覗いただけである。

そろそ帰ることにする。中央線の電車に乗り、甲府からは隣りに停まっていてすぐに接続する、特急かいじ116号に乗って立川まで帰った。秋の休日を楽しんだ一日だった。
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