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2015年04月09日06:38

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■獺狐余話(179) / 「愛妻物語」

●2015年04月09日(木)  夜が明けて、曇り

 ▼「ナラトさん、
   あれは絶対、ナラトさんが正しいです。

   オレ、普段は、絶対、奥さんの味方なんですが、
   これは事実問題ですから、ウソを言う訳にはまいりません・・」


 ▼「ねっ、そうだろう。
   キツネくん。

   晩ご飯の後、ボクは床について寝ようとしていた。
   妻はテレビを見ていて、サスペンスか、なんかのドラマで、
   俳優たちが、早口でしゃべってて、そのテレビの音量が耳につく。

   そのことを妻に言おうかな、と思いつつ、
   言わずにそのままにしていたら、そのうち
   眠気が勝ってきて、うとうと眠りについた・・」


  「ええ、そのとおりです。
   ナラトさんは、いつものように、晩ご飯を食べて少しすると、
   ちょっと眠たくなった、ゆうて、寝間でお布団に入りました」


 ▼「キツネくん。
   そのあとなんだ・・・。

   ボクは寝ついたあと、夢を見たんだ。

   どんな夢だったか、ストーリーは覚えていないのだけど、
   敵が空からやってきて、襲撃してくるので、それに備えて
   ボクたちは見つからないように、漁網みたいな網(あみ)を張って
   空襲を避けようと、必死に、家と家の脇の畑に、網を覆いかぶせようと
   するんだ・・・。

   ああ、早くしないと、上空に敵機がやってくる・・・、
   あせる心とは裏腹に、網はどこかに、ひっかかって、うまく張ることができない・・。
   蚊帳(かや)を張る要領で、四隅を引っ張って、漁網みたいな網(あみ)を吊るそう
   とするんだが、こんどは、重たくて、ひっぱれない・・・」

  
  「それですね、ナラトさんが、うなされていたのは・・・。
   となりの部屋から、なんか、うめき声みたいの聞こえてました・・」


 ▼「あれっ、そんなに、うなされていた・・?
   それで、まあ、ボクは、夢からさめたんだ。

   ほっとして、もう一度、眠りに着こうとしたら、
   妻が、何か鼻歌を歌っていて、おそらく、『数独』をやりながら
   歌っているようだった・・」


  「そうなんです。
   奥さん、サスペンス見終わって、『数独』はじめたんです。
   明日、奥さん休みやから、気分が、よかったからやと思いますが
   シャンソンやなくて、なんか流行歌みたいなメロディーを
   鼻歌でうたってました・・」


 ▼「だろう、キツネくん。
   たしかに妻は、鼻歌を歌っていただろう・・。

   それは間違いのない事実なんだ。

   で、ボクは再び眠りにつこうとしたんだが、
   その妻の鼻歌が、こんどは耳について寝られないんだ・・。

   ボクは、そのことを妻に言おうかとも思ったけど
   我慢して、そのままにして、横になって、眠気が来るのを待っていた・・。
   でも、妻は鼻歌をくりかえし、くりかえし、同じ曲を歌うんだ・・・。

   そうこうしているうち、また眠ってしまった・・」


 
 ▼「それで、さっき起きたとき、妻にそのことを言ったら、

   『アンタ、すぐに眠って、鼾(いびき)かいて寝てたじゃないの。
    アタシ、鼻歌なんか、歌ってません・・』

   と、言うじゃないか・・・。  だから、

   『いや、鼻歌、歌とうとったって・・』、とボクが言っても
   妻は、『いえ、歌っていません!』と、言い張るんだ・・・」


 ▼「ナラトさん、
   事実は、ナラトさんの言う通りなのですが、ナラトさんの言い方、
   口調に、なにか、咎(とが)め立てするような所があったんじゃないですか・・?」


  「いやいや、ボクは彼女を非難するつもりはないけど、いちおう
   こういうことがあった、ということを彼女に伝えたかった、だけなんだ・・」

  「ふーむ、それって、やっぱり、非難になりませんか・・・?」

  「まあ、そうなるのかも知れない・・。 だけど、ボクが思ったのは、
   ボクが、『鼻歌を歌っていた』という事実について言っているのに、
   その事実を妻が認めようとしない、そのことの問題点なんだ・・・」


  「ナラトトさんは、あくまで、事実関係で争うのですか・・?
   白黒をつけたい・・・、ちゅう考えなんですね・・・」



 ▼「キツネくん。 そこなんだ!
   ボクは、はたと気づいたのだ! 

   土屋賢二先生の『あたらしい哲学入門』をやったおかげだと思うんだが、
   これは、
   もしかしたら、無意識で鼻歌を歌っていた彼女にとっては、
   『歌っていません!』というのは、主観的事実であって、
   つまり、歌っていたという記憶が、全然ないということは、
   そんな事実は存在してなくて、それは「歌ってない」という
   ことなんだ・・、と思ったわけだ」



 ▼「かつてのボクなら、『ボクが歌っていたと言うんだから、キミは一歩ひいて、
   もしかして、ワタシは歌っていたのかもしれない・・・、と、どうして、そのように
   考えることができないのか・・』と、さらに問題を深化させ、感情的なこじれを
   きたしたと思う・・・」


  「ふーん、そうですか。
   じゃあ、事実関係は、もう争わないのですね・・・」

  「うーむ、必ずしもそうではないかもしれないが、まあ、どうでもいいか
   と、少し思うようにはなった・・・」

  「そりゃ、そうですよ。
   こんな『話』、犬も食わないどころか、屁にもならん『話』ですから・・」


 ▼「ところで、ナラトさん。
   屁にもつかない、きょうの『話』、日記のタイトルは、
   なんと、つけたら、いいでしょう・・?」

  「ああ、『愛妻物語』と、つけてくれ給え・・・」

  「ぎょぎょぎょ・・・、『愛妻物語』・・ですか?」


  「うん、そうだ。 『愛妻物語』だ。 きょうは、『naratoスペシャル』の
   次の映画をアップだろう。

   アップはしなかったけど、新藤兼人・監督の『愛妻物語』を見たんだ。



 ▼この『愛妻物語』は、新藤監督の監督第一作目の作品で、自分の脚本家としての
  生い立ちを下敷きにしているんだ・・。
  そのへんのことは、ウィキペディアの『新藤兼人』の項目に詳しく書いてあるけど、
  溝口健二・監督が、この映画の中では、『坂口監督』という名前で登場して、
  いいことを言うんだ・・・。

  坂口監督(滝沢修)が、主人公・沼崎敬太(宇野重吉、新藤兼人の役) の
  妻・孝子(音羽信子)に、こう言うんだ。

    「男というものは、女の支えがないと、ダメなものです。
     奥さん、力になってやんなさいね・・」


 ▼「ナラトさん。 それ、きょうの『話』と、どう関係するんですか・・?」

  「キツネくん。 まあ、それは、この言葉には、身につまされる、
   ということ・・・。

   この映画も、ボクが白黒にこだわることを避けた、もうひとつの理由なんだ。

   だから、事実関係は、どうでも、いいんだ・・・」

  





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