mixiユーザー(id:60260068)

2015年02月25日13:05

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詩『おじいの桜』


おじいのおぼつかない足が
突き出た根っこを上手にこえて
裏庭の奥にたたずむ桜をめざす

悪戯っこな顔をして、にやり
忍び足のはずの一歩ごとに
落ち葉がいじわるをするが
おじいは聞こえずお構いなし
ヒヨがよぎれば指を立てて、しぃ

桜の幹の少ししめった肌に、ばぁ
しわがれた声
しわがれた指
両手をついて見上げる先に
わずかなつぼみを膨らませ
風に?
枝をふるわせる

幹に背をあて目をつむり
機関車だった心臓をひびかせて
おじいは何やらひとりごと
まだ寒い空にむかって

表でクラクションがのびる

庭のおさなごが転んで泣きはじめると
桜は枝をふり
精一杯の花びらを舞わせる
母の下駄が近づいて
桜に負けずに涙をながす





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