■獺狐余話(154)　/　「反復、または、なぞる」

●2015年01月30日(金)　　　雨

　▼「ナラトさん。
　　　きのおも、きょおも、メジロの観察して、オレたち
　　　しあわせですね。

　　　　　
　　　

　　　つまらんこと、しとるように思うんやけど
　　　けっこう、楽しい・・・」


　▼「キツネくん。
　　　そうだね・・・。　見る人から見ると、なんという『時間の浪費』か
　　　と思われるだろうね」


　　　「ナラトさん。
　　　　オレ、はじめのうち、ナラトさんが「空の写真」撮っとるの見て、
　　　　ゆわへんかったけど、心のなかでは、『アホくさっ！』と思うておったのですが、
　　　　自分で、メジロの写真、撮ってみて、それをつなげたりして遊んでおったら、
　　　　同んなじことの繰り返しに、飽きないことも、あるんだなぁー、思ったりして・・・。
　　　　
　　　　これは、小津安二郎の映画について、吉田喜重・監督のゆうとった『反復とずれ』
　　　　ちゅうことでしょうか・・・」


　▼「キツネくん。
　　　急に、奇抜なところに結びつけてくるんだねぇ・・・」

　　「いえ、そおゆう訳でではないのですが、あの『シンポジウム』ちゅうの見たから
　　　ゆうたまでのことです・・・。

　　　メジロがミカンをついばんでおって、これを写真で撮ると、一枚ずつの写真は、
　　　同じように見えるが、少しずつ、ずれて、反復しておる・・・」


　　「おや、おや、こんどは、スライド・ショウかい・・・。
　　　まあ、だいたい、『反復』とか『繰り返し』とか、そんなものは、退屈なものに
　　　相場が決まってるだろう。

　　　日々の暮らしも、反復と繰り返しだ。　反復と繰り返しは同じように見えて
　　　少しずつ、ずれてくる。　そのずれは、日々の暮らしがいつのまにか
　　　人生というものにつながって、子供が成長して大きくなって、親は老いて
　　　ついには死んでいく・・。子もまた、それを反復、繰り返し、結婚しては
　　　子をもうけ、親がそうであったように、歳老いてやがて死ぬ・・・。

　　　そういうことの、よろこびと言うか、たのしみと言うか、退屈しないことの不思議
　　　みたいなもの・・・」


　▼「ナラトさん。
　　　落語なんかも、何回、同じ『話』、聞いても面白いでしょう・・。

　　　『本』なんかでも、よく、ゆうやないですか、『読むたびに、新しい発見がある』
　　　なんて・・・。
　　　あれって、恰好つけなんですかねぇ・・。
　　　それとも、まえ読んだけど、もう内容をよく覚えてないから、新鮮に読めて
　　　新たな発見があるんでしょうか・・。


　　　オレなんか、ナラトさんの奥さんといっしょにテレビ見てると、ミステリー番組で
　　　途中まで見て、『あっ、これ、前に見たことあるわ！』って、気づくのです。


　　　それから、オレ、『なぞる』ちゅうのも気になるんです・・。
　　　『なぞり書き』というと、お手本の上から、お手本どおりに真似て書くことですが、
　　　どうも、本物より下に見られているような気がするのです・・」


　▼「キツネくん。
　　　なんか、問題が拡散しているような気もするけれど、たしかに、『なぞる』ことは
　　　『反復』に似ているかもしれないなあ・・・。

　　　芸事の『稽古』の、『おさらい』というのは、『なぞる』ことだし、人生を生きるときだって
　　　あの詩人でクリスチャンだった八木重吉は『キリストを生きてみよ！』と自分に言った
　　　と思う・・・。

　　　もし、『なぞる』ことに、『反復』と同じように、なにかの不思議がなければ、退屈する
　　　だろうね・・・」


　　
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