■獺狐余話(149)　/　「人には人の考えが・・・」

●2015年01月20日（火）　　　晴れ

　▼「おや、キツネくん。

　　　どうしたんだ。　元気がないねぇ・・。
　　　何か心配事でも、できたのか・・・？」

　　
　　　「いえ、そうではありません。
　　　　オレ、なんか調子こいて、言い過ぎたような気になってきたんです・・」

　　　「何のこと・・・？　　？？？」


　　　「きょお書いた『日記』のことです。　よく、そして深く、理解している人は
　　　　木下惠介さんのことも、山田太一さんのことも、そして、映画『日本の悲劇』のことも
　　　　よく、十分に、深く理解しておるのに、オレなんか、ちょっと感激すると、調子こいて
　　　　しゃべることです・・・」


　　「おいおい、ずいぶん、しょげてるじゃないか・・・。
　　　そんなことだったら、ボクなんか、これまで、何回、赤っ恥かいてきたか
　　　わからない・・・。

　　人には人の考えがあって、何も言わなくても、わかっている人がいて、
　　しかも、そのわかり方が、ボクなんかより、ずっと深くて、しかも、広く理解している人が
　　いるんだよ・・・」


　▼「ナラトさん。
　　　オレ、なんちゅうか、もっと自重せなあかん・・、そんな気分になっとるのです。
　　　もっと、慎重に考えなあかん・・・、と思うたのです・・・」


　　「キツネくん。　

　　　たしかに、慢心や妄語はよくないけれど、きみの言う『自重』とか『慎重』とか
　　　いう事が、自分も、本当によく知っている人と同じぐらいに知ってないと、
　　　自分の考えや判断を口にしてはならない、って事にはならんだろう。

　　　そんなこと言ったら、いつになれば、キツネくんは自分の考えや判断を
　　　いう事ができるようになるのだろう・・・？

　　　世の中、広いし、ほんとうに、すごい人も一杯いる。
　　　もし、そうだとしたら、きみは一生、黙っていなければならいようになるよ・・」


　▼「ボクもきみに、そうたいしたこと言えないけど、おっちょこちょいであるし、
　　　失敗もやらかす・・・。　　そして、恥もかく・・・。
　　　当然じゃないか。　そして、心にこたえた失敗で、少し学習する・・・・。

　　　そんなモンじゃないだろうか・・・？」


　　　「ナラトさん。
　　　　オレ、自分でも、ときどき、『短慮』やなぁ、と思うことあるねん・・。
　　　　むかしのことも思い出されるのです・・・。　物言えば唇寒し・・、そんな心境です」


　　　「キツネくん。キツネくにしちゃあ、ずいぶんな落ち込み方だなあ・・。

　　　　中には、これも、人それぞれの考え方だけど、そうやって、自重し慎重になって
　　　　深謀遠慮する人もいる・・。

　　　　だけど、安心していいんだ。
　　　　本当によく理解している人は、きみの知恵のなさ、言葉の足りなさ、そんなことも
　　　　十分、わかってくれているから、大丈夫なんだ」


　　　「ほんとうに、そうなんでしょうか・・・」

　　　「そりゃあ、そうだ。　深く理解する・・、ということは、知らないことを知る・・、
　　　　ということなんだ。

　　　　だから、安心していいんだ・・。
　　　　いつものキツネくんで、いいんだと思う」


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