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2014年11月09日20:09

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【音楽】 オーケストラ・ニッポニカ演奏会 (安部幸明交響作品展)

朝から降っていた雨も昼前には止み、昼近くに家を出て四ツ谷の紀尾井ホールに向かった。今日はオーケストラ・ニッポニカの演奏会を聴きに行ったのである。

プログラムは次のとおりである。

 ・安部幸明:オーケストラのためのセレナーデ
 ・安部幸明:弦楽のためのピッコラシンフォニア
 ・安部幸明:オーケストラのための交響的スケルツォ
 ・安部幸明:交響曲第2番

   指揮:鈴木秀美

今日は完全な安部幸明特集で、こうまとまって聴ける機会は滅多になかろう。しかも、いずれも私にとっては初めて聴く作品である。安部幸明の作品で聴いたことがあるのは、交響曲第1番、シンフォニエッタ、アルトサクソフォーンとオーケストラのための嬉遊曲、弦楽四重奏曲第7番が全てである。CDにして1枚+約1/3。他に発売されているCDも見かけず、聴ける作品が限られていただけに、今回の演奏会は是非行きたいと思っていた。


安部幸明は、自らの作品につき、「私の作風だが、調性があることはいうまでもない。それに三楽章、あるいは四楽章から成る古典的なソナタの形の曲を作ることを好んだ」と語り、東に民俗主義の狼煙があがっても無視し、西に前衛の狼煙があがっても、これまた無視、という姿勢を貫いたらしい。特に同世代の伊福部昭などの「チェレプニン楽派」には批判的な立場を取り、西洋音楽の和声理論に基づいた音楽こそが自らの感性に合うとしていた。こう書くと、伊福部昭の音楽とは正反対のように思えるが、上に挙げたわずかに聴いた作品を聴く限り、むしろ相通じるところもあるような気さえしてくる。(実際、伊福部昭と安部幸明との戦後作品における類似性を指摘する評論家もあった。)

ほとんど馴染みのない作品ばかりのプログラムだが、紀尾井ホールは大入りだった。いつも通り、女性演奏者の衣装は青や緑系統が多く、黒一色の衣装で揃えたオケとは視覚的にも雰囲気が違っていてよい。

1曲目の「セレナーデ」は楽しい曲だった。これが今日聴いた中で一番良かった。小序曲、行進曲、子守唄、スケルツォ、夜想曲(ひとりごと)、終曲の6曲からなる。序曲は華やかに始まり、行進曲は愉快な音楽、子守唄で眠くなり(?)、スケルツォはノリノリ。夜想曲は、「ひとりごと」という副題も付いているが、なるほどチェロのソロが結構続くのである。安部幸明はチェロ奏者を志したこともあり、この部分には思い入れがあるようだ。そういえば、今日指揮をしている鈴木秀美さんもチェロ奏者だ。夜想曲というから、しみじみと静かに語るような曲かと思っていたら、結構力強い曲のように感じた。(もともとそういう作品なのか、今日の演奏がたまたまそうなのか、独奏をしたチェロ奏者(女性)の視覚的要素(詳細略)が作用したのか、いずれかは分からない。)

「ピッコラシンフォニア」は、弦楽オーケストラのための小交響曲だ。安部幸明が73歳の時に作った作品ということである。冒頭の主題のメロディーは耳に残るが、全体としてはやや印象が薄い曲のように感じた。もっともこれは、全く初めて聴く曲に耳が馴染んでいなかったせいもあろう。

休憩のあとの「交響的スケルツォ」は10分程度の短い作品で、安部幸明28歳の時の作品である。どことなくさっき聞いた「ピッコラシンフォニア」とも雰囲気が似た感じだが、若い時の作品が45年後の作品「ピッコラシンフォニア」にも通じるとは、ずっと作曲姿勢を変えなかった安部幸明らしいのかもしれない。いずれにせよ、作品自体は、もう少し聴いてみないと分からないかなという印象だ。あと、最後の部分で打楽器が少し合っていなかったように感じたが、もともと楽譜がそうなっているのか、演奏の乱れなのか、単なる自分の錯覚なのか、なにしろ初めて聴く曲なので分からない。

最後の「交響曲第2番」は、冒頭の上昇音階がエクセルシオールな気分で(意味不明)、「おっ、これは面白そう」と思った。ただ、その後はいろいろとごちゃまぜな感じがして、なんだか分からないうちに第1楽章が終わってしまった印象だ。(あとでプログラムの解説を見てみると、日本的な音階が中途半端に現れて、時に日本的素材が使われながら、日本的感覚からは遠いという不統一感があり、民族主義を批判し西洋音楽を絶対としていた安部幸明には皮肉な結果となった、ということらしい) 第2楽章のコーラングレで奏でられるメロディーは、歌詞でも付けて歌いたくなるような感じで、心地よい気分になったが、そのあとも様々に展開して、そのまま切れ目なく第3楽章に突入。交響曲に関しては、今日聴いた限りでは、第2番よりは第1番の方がいいかなという印象だ。

今日聴いた曲を次に聴く機会があるのかどうかさえ分からない、貴重な演奏会だったが、「セレナーデ」と「交響曲第2番」はもう一度聴いてみてもいいかなと思う。(録音が出ないかな。) 

まだまだ自国の作曲家には冷たい日本のクラシック音楽界だが、こうやって演奏会で取り上げられる機会があれば、少しずつでも聴かれるようになっていくのではないだろうか。
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