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2014年11月01日22:29

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詩『いなか都会』


扉は左右にひらき
私を中洲にして人が流れていく
降りそそぐアナウンスの滝が背をおせば
車内を出ていく匂いと押しこまれる匂い
見知らぬ世界はとざしたままで
たまごが当たらぬように整然と
550Hzはやさしく通り
オーケストラのチューニングと咳払い
ひとかけらの過去に引かれたあと
静かにレコード針をふるわせる
よぎる白い鉄柱が急ぎはじめて
間もなく青い空
可笑しな顔したビルが首をのばす
空をうつした川が見えると
突然の悲鳴と
影が目まぐるしく
子供はひっきりなしに首をふり
おしり
片足がひっくり返えっておちる音が浮き立つ
ママが耳うち
胸のキャラクターは勇敢に
黒い目がふたつ
天井のポスターは変わらずゆらり
隙間の田んぼが遠くまでつながって
立ち上がる雲はクッキリ
黒い目がふたつ
私を取りもどしたニコちゃんに
そっぽ向きながらチラリ
いたずらな眼差しと口一文字
割って入るアナウンスと緩む床
未来にもたげる乗客のからだが
もう一度ひとかけらの過去を覗くと
ひらいた扉から滝に入る前に手をふって
一文字は三日月に
ママの影で白いモミジがふるふる
そして私は川になる



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