【映画】　映画２本

雨の１日。今日は自宅で古い映画を２本観た。
いずれも今日初めて観る映画だ。雨に備えて（？）昨日購入した。


【１】　「虹男」　（牛原虚彦監督／小林桂樹、曉テル子、他／1949年　大映）

昭和24年の映画なので、もちろんモノクロであるが、ある場面だけカラーになっている。

オープニングからいきなり伊福部節全開。そう、これがこの映画を観たくなった最大の（？）理由だ。

物理学者の摩耶龍造博士の別荘で起こった放火殺人事件をめぐるミステリー映画である。物理学者の助手の菅八郎がその別荘で刺殺されて別荘ごと放火されたのである。新聞記者の鳥飼美々は、ライバル記者で恋人の明石良輔とこの事件を追う。その容疑者が美々の友人の由利枝であることを聞き、彼女の無実を晴らそうとする。

摩耶家には奇妙な伝説があり、虹を吐く「虹男」が現れ、この虹を見た者は変死をとげるという。事件発生後も、女中のかねが公衆電話から「虹が見える」と叫んで殺されていた。摩耶家の人間も奇妙な人ばかりで、物理学者の龍造は人工虹を作る研究をしている。長男の勝人は奇妙な虹の絵を描く画家、次男の豊彦は５年の家出からひょっとり帰ってきた、ちょっと胡散臭い人。摩耶夫人は、もともとのこの家の人で、物理学者やその連れ子を財産目当てと疑っている。

みんな怪しい。物理学者は友人の研究を盗用して学位を取ったり、画家はメスカリン常用者で、その幻覚を絵にしていたり、由利枝は八郎の子を宿していたり、みんなそれぞれ秘密を持っている。また舞台の摩耶家が古い洋館であるなど、いかにもミステリーの王道。

摩耶夫人も「虹を見た」と言って殺され、命は取り留めたが、龍造も由利枝も「虹を見た」と言って倒れる。この虹の幻影の場面だけがカラー映像なのだ。　虹の幻影はメスカリンの幻覚作用だ。（メスカリンが国際的に禁止麻薬となったのは1971年らしい。つまり、当時は合法だった？）

結局、意外な人が犯人であった。これには最後まで気付かなかったな。

当時の新宿駅前（？）の映像など、貴重な映像も楽しめる映画。なんといっても、伊福部昭の音楽が光っている。（これがあるから映画が良くなっている感じ。）


その摩耶夫人つながり（？）ではないが、もう１本は摩耶夫人から生まれた釈迦である。

【２】　「釈迦」　（三隅研次監督／本郷功次郎、勝新太郎、他／1961年　大映）

釈迦の誕生から入滅までを描いた、156分の大スペクタクル巨編映画である。大映オールスターキャスト出演だ。多少史実と異なる映画的脚色があるが、それはいいだろう。

釈迦族の王子シッダ太子が生まれて「天上天下唯我独尊」と叫び、いきなり20年後へ話が飛ぶ。ヤショダラー姫を妻とする権利を得る決闘で従兄のダイバ・ダッタに勝つ。これ以来ダイバ・ダッタはシッダ太子に常に恨みを持ち続ける。

シッダ太子は、自分の恵まれた境遇と、身分差別が生む世の無常に悩み、旅に出て出家する。出家したシッダを想いつつ寂しく暮らすヤショダラーに邪な愛を抱くダイバは、ヤショダラーを犯してしまう。ヤショダラーは自害し、ダイバは釈迦家を追放される。

菩提樹の下で６年間の瞑想をするシッダ太子。森からは魔羅が現れ悟りを妨げようとするが、それを振り切り、ついに悟りを開く。この魔羅が現れる場面の音楽は、そのまま伊福部昭の交響頌偈｢釈迦｣にも使われている。他にもこの曲につながった音楽が多い。書き忘れたが、この映画の音楽も伊福部昭である。（オープニングに、上田仁指揮東京交響楽団、と演奏者まで表示される。）

ここまでが前半で、悟りを開いて仏陀となった釈迦（シッダ太子）は、以降は影かシルエットだけとなり、画面に姿を見せなくなる。

後半は、仏陀の教えを乞うて集まる人々と、ダイバや王国をめぐる話になる。怪しげな神通力を身に付けたダイバは、アジャセ王子をだまして味方に引き入れ、大神殿を建造し、仏教徒を迫害する。

仏陀は、日照り続きの土地に雨を降らせたり、継母の嫉妬で目をつぶされた王子の目を元通りにするなど奇跡を起こし、仏陀の元に集まる人も増えてくる。

アジャセ王子はダイバの行いに疑問を持ち、だまされて父を殺してしまったことを悔やみ、仏陀に帰依する。ダイバはアジャセ王子を父殺しの悪人と民に宣伝し、自ら国王となることを宣言する。しかし、仏教徒を火で処刑しようとするや、仏陀の怒りが奇跡を呼び、神像は崩れ地面は割れ、ダイバは地割れの底に転落する。しかし、自らの過ちを認め改心したダイバに、仏陀は慈悲の心を示しダイバは救われる。

仏陀の教えはさらに広まり、ついに入滅の時を迎えた。仏陀の教えは永遠に人々の心に刻まれていくのであった。めだたしめでたし。

という、見応えのある映画であった。