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2014年10月24日21:37

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伊勢物語異譚『むかし鬼ありけり』


男、鬼とぞ呼ばれける
人を食らはざりけり
むかし女をぬすみ出でける高き人
鬼一口にて女を食いけり
と言ひしことなむ偽りなりける
率ていきけるほど女を憂きものと飽きけるに
あばらなる藏にうちすててけり
さて、足ずりをして泣けるは女なり
かの鬼、かなしと思ひてあらはれれば
女いとおどろおどろしきさまにて逃げ出でて
道をすぎてはづれて川におちてけり
鬼いみじく泣きつつ詠める


女がために夜さりの月の叢雲よかねて我身を隠さざらまし


鬼、泪かきたれてほえつつ山にかくれにけり



【註釈】
《伊勢物語六段目の別解》
高き=身分の高い
率て(ゐて)=引き連れて
憂き=わずらわしい
飽き=いやになり、飽き
あばらなる=荒れている
さて=そうして
足ずり=地団駄ふむ
かなし=不憫だ
おどろおどろしき=恐ろしい
いみじく=ひどく
(和歌中の)女=(め)女
夜さり(よさり)=今夜
叢雲(むらくも)=群がる雲
かねて=前もって
搔き垂れ=雨などが激しく降り
【和歌訳】
今夜の月の群がる雲よ、女の為に前もって(月の光を遮って)私の姿を隠してくれれば良かったものを

*游月の創作です
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