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2006年08月08日02:57

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●ニセ管理人日記(13)/■キツネはキツネになる (1)

■キツネはキツネになる (1)

 ●もしもし
  きつねくまぞうです。

  こんばんわ。

  夜もだいぶ更けてきました。
  まだ、起きておられますか。



  ところで、
  きょう、ナラトさんは大阪まで出かけました。
  マンション管理人の二次の面接試験です。

  暑い、暑い、ゆうて帰ってきました。
  ワタシが、


   「面接、どうでした?」


  と聞くと、


   「ようわからんけど、なんか受かったみたいな気がするんだ」


  と、ゆうてました。

  合格ならば、会社から また連絡があるそうです。

  そして、いまは、


   「果報は寝て待て」


  ゆうて、寝ています。





 ●ナラトさんは、もう 半分は
  新しいところの「マンション管理人」になったような気分で
  いるようです。


  大阪からの帰りには、その新しいマンションも下見してきた
  ゆうてました。


  そして、けさ、ワタシが朝寝坊してたら、ナラトさん、
  この日記に、「ことば歳時記」というのを書いていて、


  ワタシが思うには、これも新しいマンションの管理人に
  採用されたとき、日記書く余裕がなくなっても、連載しやすいもの、
  ちゅうことで、準備したんやないかと思います。



  まぁ、どうなるのか、見守るよりほかありません。






 ●で、ワタシ、「きつねくまぞう」の話ですが、
  いよいよ、どうしてワタシが市役所をやめたか、
  また、やめねばならなくなったか、そのことをお話するときが
  来ました。



  ワタシが酔っ払って、三田村先生のところを訪ねたことは、
  「ラクダは砂漠へ(序)」に書いたとおりです。


  そして、《ラクダは砂漠に帰り、キツネはキツネになる》とは、
  どうゆうことか、そのことのまえ半分について、
  「ラクダは砂漠へ(1)(2)」で書きました。



  きょうは、後半の「キツネはキツネになる」話です。


  それは、ワタシが三田村先生を訪ねた翌日の話です。


  自分で自分のことを書くのは、ちょっと恥ずかしいので
  三田村先生がワタシの、そのときのようすを書いたつぎの文章を
  読んでみてください。


  ワタシの童話を、本当にわかってもらうためには、
  ワタシはワタシがキツネであることを、みんなにどうしても
  知ってもらう必要があったのです。






 ●キツネはキツネになる (1)


  キツネの身にかわったことが起きたのは、その翌日のことでした。
  前の晩、キツネがべろべろに酔っ払って、ふらふらしながら
  帰ったので、わたしは心配になって、つぎの朝、市役所へ
  ようすを見に行ったのです。  



  もちろん市役所へ行ったところで、だれがキツネか、
  わたしには、よくわからないのですが、それでも きのう
  帰りぎわにいった、


  「先生、あしたです、あした。
   ぼくは やりますからね。見ていてください。
   きっとやりますからね」

  というキツネのことばが、頭からはなれないのです。



    (なんにも起こらなければいいが)



  そう思いながらわたしは、市役所へ入っていきましたが、
  心配したとおり、市役所の中はいつもとなんだか ようすが
  ちがっていました。



  いつもだと、あちこちの窓口に人がちらばっているのですが、
  その朝は、どうしたわけか ほかの窓口はがら空きで、
  ただひとつの窓口に黒山のような人だかりがしていたのです。


  「やっぱり何かあったんだ」


  わたしは胸をドキドキさせながら、人だかりの後ろのほうから
  回りこんで見ました。


  そこは、戸籍係の窓口でした。

  
  カウンターの向こうには、いつか見た、タヌキのような丸顔で、
  眼鏡をかけた戸籍係の青年がいるはずでした。



      フォト





  しかし、なんと
  そこにいたのは、キツネでした。



      フォト





  キツネは、青い背広に えんじ色のネクタイをきちんとしめ、
  真剣な顔つきで まわりの人たちに向かって、さけんでいました。



  「みなさん!
   わたしは戸籍係の木常熊造です。いままでは人間のような
   顔をして、人間のかっこうをして働いてきましたが、本当は
   わたしは、キツネなんです。
   きょうから、本当のすがたで くらすことにしたんです。
   どうか、よろしくお願いします!」



  けれども、カウンターの前の人たちは、こわごわキツネを見つめる
  ばかりで、だれも近寄ろうとしません。


  カウンターの内側では、市役所の職員の人たちがキツネを遠巻きに
  して、なにやら ひそひそ話していましたが、キツネはその
  人たちに向かっても、よびかけました。



  「ねえ、みんな。どうしたって言うんだい。
   そりゃあ、ぼくがキツネだとわかって、びっくりしたろうけど、
   でもぼくは、いままでのぼくと かわりはないんだよ。
   さあ、いつものとおり いっしょに仕事しようぜ」



  でも職員の人たちは、キツネのほうをチラチラ見ながら、
  相変わらず ひそひそ ささやきかわしているだけでした。


  しばらくすると、職員の人たちの輪がくずれて、背の高い
  男の人がキツネのほうにやってきました。

  市役所のえらい人のようです。


  「きみ」

  
  男の人は、キツネの肩をポンとたたくと、やさしそうな声で
  言いました。



  「話はあっちで聞こう。さあ、わたしの部屋へ来たまえ」

  「いやです!」


  キツネは、男の人の手を振り払いました。



  「話すことなんかありません」

  「おや、どうしてだね。話し合えば、お互いにわかり合えるじゃ
   ないか。さあさあ、わがまま言わずに、あっちに行こう」



  男の人は、キツネを抱きかかえるようにして、立ち上がらせ
  ました。
  すると、キツネは、いきなり机にしがみつきました。



  「ぼくは どこへも行きません。ぼくは ここで仕事が
   したいんです!」

  すると、男の人の顔色がさっと変わりました。



  「ばかなことを言っちゃあ いかん。大事な市役所の仕事を
   キツネなんかに、まかせられるか。おい、きみたち!」 


  職員のほうをふり返った男の人は、パチンと指を鳴らしました。

  すると、バラバラバラっと 七、八人の職員がかけ寄ってきて、
  しがみついているキツネごと、机を持ち上げると、奥のほうへ
  運びはじめました。




  わたしは たまらなくなって、

  「待て!、なんてこと するんだ!」

  と、さけびながら、前へ飛び出そうとしました。



  けれども、そのときには、のこった職員がカウンターの外に
  出てきて、


  「みなさん、なんでもありません。なんでもありませんよ」

  「さあさあ、ここから はなれてください。はなれて!」


  と言いながら、乱暴に人だかりを ちらしはじめたのです。



  わたしは、職員のひとりに腕をつかまれ、外へ押し出されて
  しまいました。


  そのとき、サイレンの音が聞こえてきたのでした。





  それっきり、キツネはどこかへ行ってしまいました。




  どこへ連れて行かれたのか、あのあと わたしは何度も
  市役所に行ってみましたが、キツネはどこにも見当たりません。


  キツネが仕事をしていた机には、新しい戸籍係がすわっていて、
  わたしがキツネのことを聞くたびに、病気で入院しているとか、
  もう市役所をやめたとか、言うのです。




  そして、くわしいことを聞こうとすると、

  「さあ、よくわかりません」

  と、迷惑そうな顔つきで、そっぽを向くのでした。





 ●さて、さて、
  キツネは どうなったのでしょうか。気になるのですが、
  その続きは、また次回、書くことにしたいと思います。





  
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