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2014年08月31日11:32

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■獺狐余話(30)　/　「素数ゼミ」の話(17)　最終回

●2014年08月31日（日）　　曇り

　▼「ナラトさん。

　　　早よう『話』の続きをしましょう・・。

　　　オレ、わくわくしとんねん。

　　　『学問』ちゅうのも悪くないナー

　　　と思えるねん。

　　　『学問』には、『学問』の考え方というものがある、

　　　そうゆこと、結構、面白いことやと思うねん」

　　「キツネくん。

　　　かなり『学問』が気に入ったみたいだね・・。

　　　それは『学問』というよりは、『論理学』や『数学』や、

　　　また『科学』と呼ばれているものの考え方に共通している

　　　思考方法なんだ・・。

　　　感性ではなく、理性の『話』なんだ・・」

　　「ナラトさん。なんか、また、ややこしそうなことになりそうやから、　

　　　もう、『学問』の『話』はいいです。

　　　『素数ゼミ』の『話』をしましょう！」

　　「ああ、了解。

　　　では、『素数ゼミ』のいよいよ、本当の『最終回』だ」

　▼「キツネくん。

　　　また、ボクの作った『表』を開きながら、説明を続けることにしよう・・」

　　　・http://www.geocities.jp/narato/umekomi/2014_08_26_all.html

　　　　　　表①
　　　　　　

　　　　　　表②
　　　　　　

　　　　　　表⑤
　　　　　　

　▼「表①、表②、表⑤は、氷河期の、あるレフュージアにいた「１５年ゼミ・１６年ゼミ・

　　　１７年ゼミ・１８年ゼミ」の５００年後の生き残りを考えるための『表』だったね」

　　「５００年後には、それぞれの子孫の『純正種』の数は、元の数に対して、

　　　以下のようになる。
　　　
　

　　　　１５年ゼミ　　1/256　　＝　０．００３９１　＝　０．３９１　％
　　　　１６年ゼミ　　1/64　　＝　０．０１５６　＝　１．５６　％
　　　　１７年ゼミ　　1/8　　　＝　０．１２５　＝　１２．５　％　
　　　　１８年ゼミ　　1/512　　＝　０．００１９５　＝　０．１９５　％

　　　

　　　この結果をまとめたのが、さっきの、表⑤、だったね・・」　　　

　　　　　　

　　　拡大図：http://www.geocities.jp/narato/umekomi/2014_08_26_pic05.html

　▼「途中、飛ばした、表③、表④、は、このレフュージアのセミたちが、３組が

　　　出会う周期と、４組、つまり全種類のセミが出会う周期を、示したものだ。

　　　　　　

　▼「３組の出会いのなかでは、１５年ゼミと、１６年ゼミと、１８年ゼミの出会いが

　　　最も早く、７２０年後なんだ。　

　　　早いといっても、最初の出会いから７２０年後だから、表⑤の２組の出会いの

　　　表の、４８０年のあと、２４０年も経過しないと、３組が出会うことはない。

　　　また、４組全部が出会うのは、実に、１万２２４０年後なんだ。

　▼「『氷河期』は約１８０万年ぐらい続くので、仮に『氷河期』の初期に

　　　４組全部が出会ったとしたら、そののち、１２２万４０００年後までに

　　　何回出会うかというと、１００回だ。

　　　４組全部が出会う。出会うサイクルが１万２２４０年とは、そういうことだ。

　　　そうやって、４組が１００回出会い、１８０万年続いた『氷河期』が

　　　終わり、現在、私たちが生きている２０１４年に、この４組のセミがどうなたか。

　　　結論を言えば、この世には、アメリカに、『１７年ゼミ』だけが生存し、

　　　ほかの、１５年ゼミも、１６年ゼミも、１８年ゼミも、存在しない、

　　　という事実だ。」

　▼「このことは、逆に言えば、２０１４年、現在、『１７年ゼミ』だけいて、

　　　その前後の、１５年ゼミ・１６年ゼミ・１８年ゼミがいない現象を説明する

　　　する、ひとつの『仮説』として、『素数』と『交雑』というキーワードで

　　　出した『解答』と、考えることができる、ということなんだ」

　　「なるほど。

　　　ナラトさん、うまい説明の仕方、考えましたね・・」

　　「いや、キツネくんに、ほめてもらえるとは、光栄なことだね・・」

　▼「キツネくん。

　　　当時、いったい、何匹くらい、(セミは何頭とも数えるが・・)、どれくらい

　　　のセミが棲息していたか。

　　　ボクは全くわからないが、たとえ無尽蔵にいたとしても、きっと、生き残れるのは、

　　　『１７年ゼミ』くらいしか、いないだろうと、思ってしまうね・・」

　▼「いや、このことは、実は、現在の『１７年ゼミ』が、１８０万年前の

　　　原初的なセミから変化し、『１７年周期』という生き方・生存方法を獲得した

　　　過程ではないのか。

　　　あるいは、たまたま、『１７年ゼミ』となってセミが、生き残った、ということ

　　　ではないか。

　　　ここに、『ダーウィン』の提唱する『自然淘汰・適者生存』の法則が

　　　作用している、と考えることができる、という事なんだ・・」

　　「ナラトさん。
　　
　　　オレ、ダーウィンも理解しました・・」

　　「キツネくん。

　　　ダーウィンはいろんなことを言っているから、ダーウィンのすべてを理解した

　　　わけではないけど、『進化論』の本質、とは、そう言うことなんだ・・」

　▼「大事なことが、もうひとつある。

　　　それは、この『素数ゼミ』の『適者生存・生き残り説』は、数学モデルを用いた

　　　ひとつの『仮説』であると、いうことだ。

　　　現実の現象を、合理的に説明することができるか、どうか、それが試されている。

　　　もし、１７年ゼミを飼育して、１７年周期ではなく、１６年や１８年のサイクルで

　　　暮らしている生態が明らかになれば、この『仮説』は崩れてしまう・・」

　▼「そして、『数学モデル』は抽象化して、基本的な骨格を明らかにするが、

　　　もし、その抽象化の中で、本質的な事柄が検討されず、モデルに反映されてないときは、

　　　それは、証明手続きの『論理』において、失敗しており、仮に、その『仮説』で

　　　現実を説明できたとしても、それは『誤り』である。

　　　この『誤り』は、『仮説』の結果と現実との不一致にあるのではなく、

　　　現実を写し取る手法、つまり、『モデル』それ自身が、現実と異なっている
　
　　　と、いうこである。

　　　表⑦は、そのことを説明するための『表』であるが、もう詳しくは説明しない。

　　　簡単に、表の「意図」だけ説明すると、これまでの論議は、すべて、

　　　『ある年に、ＡセミとＢセミが出会った。次に出会うのはいつか』という

　　　問に答えるものであったが、実は、「その年に出会わず、１年、２年、ずれて

　　　出会うセミがいる。　そして、その『ずれているセミ』はその年には地中で

　　　生きており、そのセミのことも考慮しなければ『モデル』は不正確なものに

　　　なってしまう、ということを言いたかったのだ・・・」

　▼「ああ、ナラトさん。

　　　オレ、ナラトさんの言いたいこと、

　　　わかってきました・・」

　　「ほんとうかね・・？」　

　　「げ、げ、げ、・・・、

　　　ナラトさん、オレを疑っているんですか・・」

　　「いや、疑いはしないが、もし理解できているのなら、

　　　インターネット上に書かれている『セミの寿命』についての記述で、

　　　明らかに、『誤っている』ものがある、という事に気づくはずなんだが・・」

　▼「えっ、それ、どういうことですか？

　　　よく、わかりませんが・・・」

　　「キツネくん。

　　　もう一度、『定義』の問題にもどって考えてみよう。

　　　セミの寿命は、何年なのだろう・・」

　　「ナラトさん。

　　　まだ、本当のところは、『誰も知らない』というのが

　　　実態だ、でしよう・・」

　　「そう、その通り。

　　　わずかな観察記録があるだけで、それも、個体単体を、何代にわたって

　　　観察したものではない。

　　　正確な実験をしようと思えば、まず『純正種』を得なければならない。

　　　何代かにわたって飼育・交配して、『純正種』を発見する。

　　　その上で、『純正種』どうしの交配で、かっちり「４年」とか「５年」とかの

　　　ライフサイクルであるか、それとも前後に幼虫期間が、長くなったり、短く
　
　　　なったりするのかを、明らかにしなければならない。

　　　そうでないと、ある一頭が「５年」ライフサイクルということが観測できても、

　　　そこから、結論じみたことは何も言えないのだ」

　▼「つまり、『５年』というのは、何が発現したものかわからないからだ。

　　　もし、そのセミが『純正種』であれば、『純正種』○○セミは、「かっちり
　
　　　５年ゼミ」とか、「５年と６年」にバラつくとか、言える。

　　　しかし、『非純正種』の場合、何が子孫に出現したのか、さっぱりわからない。

　　　ただ単に、その一頭は「５年サイクルだった」という事実だけで、そこから、

　　　次に論理を進めることができないんだ」

　　　「なるほど・・・、ナラトさん。

　　　　また、少し、はきりしてきました」

　▼「しかし、キツネくん。

　　　推計学というのがあるだ。

　　　数学モデルや、統計の技法を駆使して、意味のない集団や、でたらめの現象

　　　と思われているものの中に、法則や規則、隠されている事実を明らかにすること

　　　ができるんだ」

　　「へぇー、それはホンマですか・・？」

　　「キツネくん。

　　　きみは一体、いままで何のために『素数ゼミの謎』にかかわってきたのだ。

　　　『素数ゼミ』の存在が事実か、どうか、それを調べてきたんだろう。

　　　そして、その手法は、世代交代のときに、『交雑』ということに目をつけ、

　　　『交雑』による、『純正種』の減少ということを利用したのだ・・」

　▼「はぁ、それはそうなんですが・・・。

　　　まだ、意味がよく呑み込めません・・」

　　「では、キツネくん。

　　　もし、仮に日本のセミが、「４年ゼミ」、しかも、かっちり「４年ゼミ」

　　　だったと仮定して、１００万年も生きてこれるか、どうか。

　　　また、「４年ゼミ」という性質に、適者生存の法則上、帰結するかどうか、

　　　これは観察によらない、『論理』の世界の問題だ・・・」

　　「ああ、わかってきました・・。

　　　なるほどね。

　　　実際、観察ではデータが集められないし、データがあっても、それが

　　　何を語っているのか、わからない。

　　　だとしたら、逆に、いろんな「数学モデル」や「論理」を駆使して、

　　　いまある現象そのものが、そのような「数学モデル」や「仮説」のもとで

　　　起きるか、どうか、それを調べる、ということですね」

　▼「そう、よくわかったね。

　　　実は、この吉村先生の研究には、いろいろ反論もあるのだが、その中で、

　　　ちょっと的外れのもの、「数学モデル」で現実を測る、ということを理解してない

　　　方もおられるのだ・・」

　　「そうなんですか・・、

　　　研究者の人でも、そうなんですか・・」

　　「そして、彼らは『偶然、そうなった』というのだ。

　　　では、その『偶然』はなぜ起きるのか、それに迫るために「モデル」

　　　という思考方法を採用するのだが、それが理解できない・・。

　　　小さな範囲で、彼は『論理』をとらえている・・」

　▼「キツネくん。

　　　一度、『日本のセミの寿命』問題に挑戦してみないか？

　　　果たして、日本のセミは、なぜ、地下に４年も５年ももぐって生活するように

　　　なったのか。

　　　
　　　また、４年とか、５年とか、それは、かっちりとした「周期」なのか。

　　　あるいは「傾向」や、「幅を持った性質」なのか。

　　　単純なことでは、５年や６年かけて地上に上がって来るセミが、どうして
　　　毎年、鳴いているのか。

　　　『ずれ』で毎年、セミが地上にあがってくるとして、そのサイクルが重なる年に、

　　　異常に多くのセミが鳴いたり、セミの『裏年・表年』はないのか。

　　　これらは、『数学的』な問題なんだ。

　　　したがって、『仮説』を立てて、計算することができるのだ」

　▼「また、ずれて「６年」で出て来るセミは、幼虫の生育条件のばらつきの遅い、

　　　早いなのか、それとも『交雑』によって「６年ゼミ」が６年目に出てきたものか。

　　　そんなのを「数学モデル」で、明らかにしようとは思わないかね・・」

　　「何を言っているんですか・・、

　　　もし興味があるのなら、ナラトさんが自分でやったらいいでしょう・・。

　　　オレに、お鉢を回さんといてください・・」

　　　
　　「そうかね。残念だナー・・。

　　　ボクは、いろいろ、やる事があってね、もう『素数ゼミ』の事だけに

　　　関わっている訳には、いかんのだよ。

　　　だいたいの考え方が分かれば、それで、よし、とせねばならんのだよ・・」

　▼「最後に、インターネット上の『セミの一生』の参考ページを掲げておく。

　　　なんなら、キツネくん。

　　　これらのページの記述が、正しいか、どうか、一度、目を通してみるといいよ。

　　　結構、面白いよ・・・」

　　「いや、オレも大筋、了解したので、いちおう

　　　目は通しますが、いちいち、これらの記述の『正誤』について、コメントする

　　　つもりは、ありません・・」

　　「うん、それでいいんじゃない・。

　　　では、キツネくん。

　　　１７回にも及ぶ、おしゃべりに、付き合ってくれて、

　　　ありがとう」

　▼「また、『素数ゼミ』の話を読んで下さったマイミクのみなさん、

　　　ありがとうございます。

　　　「イイネ！」をいただいて、調子にのって、蜿蜒と１７回も続け、

　　　最後までお付き合いくださったマイミクさんは、

　　　さぞ、お疲れのことと思います。

　　
　　　９月は、こんな「続き物」でなく、なるべく一回限りの「読み切り」を

　　　心掛けます」

　■以下、参考ページ

　▼「報道」

　　　「17年周期の「セミ」大発生が間近に、米国」

　　　「13年か17年で大発生するセミ：謎を日本の研究者らが報告」

　▼「ウイキペディア」

　　　「セミ」
　　　　・https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BB%E3%83%9F

　　　「周期ゼミ」
　　　　・ https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%91%A8%E6%9C%9F%E3%82%BC%E3%83%9F

　▼「フォーラム」

　　　「お話（素数周期ゼミの不思議」
　　　　・http://www.mathforum.jp/taiken/mathmath/vol03/semi01.html
　　
　　

　▼「セミの家」
　　　・http://homepage2.nifty.com/saisho/Zikade.html

　　「『日本セミの会』について」
　　　・http://homepage2.nifty.com/saisho/cicadaclub.html

　　「よくある質問」
　　　・http://homepage2.nifty.com/saisho/faq.html
　　　　この中に、【Ｑ４】セミの幼虫期間を教えて下さい。
　　　　何年地中にいるのでしょうか？、というのがあります。

　　　　回答は、以下のとおり。

　　　　「セミの幼虫期間ですが、正直なところ、まだ十分に解明されていない
　　　　　のではないでしょうか。しばしば７年ということが言われますが、
　　　　　この根拠はあまりありません。
　　　　　少なくともすべての（自然環境下における）アブラゼミ、さらに他の
　　　　　種も含め７年ということはありません。
　　　　　すなわち分かっているのは主に室内における飼育によるもので、
　　　　　限られた状況下での結果です（屋外と気温も異なることが多い）。
　　　　　したがって、自然の環境ではさらに年数が延びる可能性も否定できま
　　　　　せん。

　　　　　一口にセミの幼虫の期間と言っても、種によって異なること、同じ種
　　　　　でも温度や栄養状態によって、必ずしも一定ではないことを御承知お
　　　　　き下さい。

　　　　　ニイニイゼミの場合は産卵されてから成虫になるまで４年～５年、
　　　　　（主に４年）と確認されています。
　　　　　産卵された年のうちに孵化して地中に潜ります。

　　　　　ツクツクボウシは産卵された翌年の夏に孵化し、その後１年～２年
　　　　　（主に２年）の幼虫期を過ごします。

　　　　　アブラゼミも翌年孵化し、その後３～４年の幼虫期、ミンミンゼミも
　　　　　翌年孵化し、その後２～４年の幼虫期、クマゼミも翌年孵化し、
　　　　　その後２～５年の幼虫期を過ごします。

　　　　　ヒグラシはニイニイゼミ同様その年のうちに孵化しますが、幼虫期間
　　　　　は分っていないのだと思います。

　　　　　ちなみにセミはトンボやバッタ類と同じく不完全変態をし、サナギに
　　　　　ならず幼虫から直接成虫になります」

　　「セミの一生７年説を追う」
　　　・http://homepage2.nifty.com/saisho/life.html

　　　　アブラゼミの一生は「７年」は本当か
　　　　　佐藤隼夫：　アブラゼミとミンミンゼミについて「６年説」
　　　　　石原保：　ニイニイゼミについて「４年説」
　　　　　加藤正世：　アブラゼミについて「７年説」(たまに８年のものあり)
　
　　　※アブラゼミの一生
　　　　「現在考えられているのは５年で羽化する個体が多い（らしい）が，
　　　　　環境によって１－２年ずれるということだと思います」。

　　「セミの参考文献など」
　　　・http://homepage2.nifty.com/saisho/reference.html#6

　▼「蝉雑記帳」
　　　・http://www003.upp.so-net.ne.jp/cicada/index.htm　　　　

　　　「３と４の偶然（「素数ゼミの謎」への反論）」
　　　　・http://www003.upp.so-net.ne.jp/cicada/hanron.htm

　　　「４倍する幼虫期（「素数ゼミの秘密に迫る！」への反論）」
　　　　・http://www003.upp.so-net.ne.jp/cicada/hanron4.html

　　
　■文字数オーバーのため、「音楽案内」は省略。

　　前の「日記」をご利用ください。

　

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