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2014年05月09日00:38

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■「ひたむきの女たち」

●2014年05月09日 (金)　　晴れ

　▼どこかで読んだはずだと思って「本」を探すが、見つからない。

　　松尾尊兊『本倉(ほんぐら)』に、牧瀬菊江『聞書　ひたむきの女たち　　無産運動のかげに』
　　の書評があって、なつかしく久しぶりに『ひたむきの女たち』を読もうと思って、探した。

　▼「本」が家に収まらなくなって、本棚からあふれた「本」を、横幅４０センチ、
　　高さ２０センチ、奥行き５０センチくらいの衣装ケース、約６０個に詰め替えた。

　　もう、かなり前のことだ。
　　(この当たりのことは、2006年06月30日や2009年07月19日の日記に書いてあった)

　▼そして、『ひたむきの女たち』をようやく探し、パラパラ目を通した。

　　目を通してみたが、昭和２０年代のはじめ、「共産党」への子供たちの反応が書かれて
　　いた文章が、その「本」のどこに書いてあるか、見つからない。

　　著者の牧瀬菊江さんが「聞書」をしたのは、次の１０人である。

　　　　橋浦　はる子　　　──　「赤瀾会」からメーデーに初参加
　　　　島野　初子　　　──　第１回国際婦人デーで初演説
　　　　梅津　はぎ子　　　──　富士紡保土ケ谷工場争議のリーダー
　　　　松井　菊子　　　──　スパイ査問事件のハウスキーパー
　　　　高橋　ヨキ　　　──　東京市バス組合の婦人部長
　　　　重井　しげ子　　　──　藤田農場の大争議
　　　　吉田　フサ　　　──　群馬共産党事件
　　　　志多伯　静子　　　──　沖縄「オイル事件」のレポーター
　　　　立花　キミエ　　　──　在日朝鮮人活動家の妻
　　　　井上　里雨　　　──　モップル活動に献身
　　

　　たしか、本文よりも小さな文字で書かれていたような気がする・・。

　▼大正１５年(1926年)、ジュネーブで国際労働会議で、「日本の紡績女工の夜業は
　　人類文明の汚点」とまで言われた。

　　明治・大正期、日本の紡績女工は、低賃金と昼夜二交代１２時間労働、そして外出自由の
　　ない生活に苦しめられた。いわゆる唄にある「かごの鳥」である。

　　その年の５月、富士瓦斯紡績保土ケ谷工場で、待遇改善を求めるストライキが起きた。
　　その先頭に立ったのが、２２歳の梅津(旧姓・中平)はぎ子さんだった。

　▼梅津さんは明治３７年、高知県高岡町(現、土佐市)に生まれた。
　　１７歳の時、気の進まぬ見合いを嫌って、隣町の周旋人に２０円の支度金を借り、
　　高知・浦戸から船で家出し、横浜のはずれの富士紡保土ケ谷工場の女工となって
　　働きはじめた。

　　関東大震災(大正12年)のあと、労働組合もない保土ケ谷の工場にも争議の波は押し寄せて
　　いた。富士紡では、大正１４年１１月１４日に川崎工場で争議が始まった。

　▼女工たちの争議の要求は、次のようなものであった。

　　　一、近親者の危篤の電報が来たら、すぐ返せ
　　　二、借金があっても、外出させろ
　　　三、熱がなくても、病気のときは休ませろ
　　　四、貯金の引き出しを自由にさせろ
　　　五、面会を自由にさせろ
　　　六、労働時間を一時間短縮せよ

　　川崎工場から保土ケ谷工場にも、争議への呼びかけのビラが配られた。
　
　　それは、人権を取り戻す闘いであったが、会社側はもし川崎工場の争議がほかの工場に
　　うつると会社は争議に負けるので、必死であった。

　▼保土ケ谷工場でビラが撒かれた日、梅津さん、争議の呼びかけに応じ、夢中で機械の
　　上によじ登り、「みんな仕事しちゃだめよ、仕事しちゃだめよ、仕事しちゃだめ」と
　　三度、叫んだ。

　　すると、工場の機械がぴたりと一斉に止まった。これが歴史に残る「富士紡保土ケ谷
　　工場の大争議」の始まりである。

　　　　

　　　大正14年11月24日、婦人旗手を先頭に川崎市内をデモ行進する富士紡争議団
　　　　

　　　　
　▼大争議であったが、結局は敗北する。

　　この梅津さんの話は、私も身につまされることがある。
　　それは甲子園支部で、朝の８時１５分以前に行う「かご詰め」作業のボイコットである。

　　しかし、横道にそれるので割愛する。　どこかに書いた。
　　

　▼梅津さんは、大正１５年の第６回メーデー・横浜集会に参加している。このとき、
　　女性で参加したのは４人だった。

　　「メーデーに私たち紡績女工が参加するようになったことは、８０万婦人労働者の
　　解放と、さらに全無産階級の解放の決戦の日の近いことを、はっきり物語るもので
　　あります」と彼女は演説した。

　　そばに臨検の警官がいたので、「この人たちの公正中立は、黄金で武装し、国家権力で
　　武装した資本家の前に、すっ裸にした労働者をおいた時にのみ守れる厳正中立です」
　　とやった。これが翌日の新聞に載った。

　▼著者の牧瀬さんに、「４０年たっても、このあいさつを覚えているのは恥ずかしいから
　　です。<革命>はいよいよ遠のいているからです」と答えている。

　　そして、私が探していた文章はようやく見つかった。
　　
　　梅津さんの章の最後に「(１９６７年１２月)」と、聞き書きをした月が書いてあり、
　　そのうしろに、後日、「追記」した部分があった。

　　小見出しは、『戦後の活動』と付いている。

　　　　「(昭和)２１年、梅津さんたちの世田谷の「米よこせ」デモ隊が赤旗をかかげて
　　　　　皇居にまで入ったことは有名である。
　　　　　当時は、原っぱで遊んでいる子供たちが、『共産党になるもの、この指たかれ！』と
　　　　　言えば、子供たちは、みんなたかって来たし、『男と生まれたからには、
　　　　　共産党にならなきゃならない。だから入れてくれ』と言う電話がかかってきた」

　　

　▼さてさて、探し物は見つかったが、私は何を書きたかったか。
　　
　　「共産党」という「党」についてか、無産運動についてか。

　　そんなことではない。

　▼また、この「本」の最初に登場する橋浦はる子さんは、明治３１年生まれで、兄には
　　早稲田大学に通っていた時雄がおり、彼は大正１１年７月に創立された日本共産党に
　　参加し、翌年の第一次共産党事件で、堺利彦・山川均・渡辺政之輔・徳田球一らと
　　いっしょに検挙された。

　　また、北海道大学を卒業してクリスチャンになった兄・季雄は、有島武郎と
　　親交があった。

　　大正７年ころには、武者小路実篤の「新しき村」のことを、橋浦さんは兄たちを通して
　　生まれ育った鳥取県岩美郡大岩村で聞いていた。
　　　

　▼勉強したくて１８歳で上京し精華女学校の二年に編入してもらった。

　　大正１０年４月に結成された、日本最初の社会主義婦人団体「赤瀾会」に参加。
　　この年の第２回メーデーに「赤瀾会」の旗をもって参加したが、旗は警官に
　　奪われた。

　　　　

　▼橋浦さんは、理想主義者の兄・康雄の影響で、「結婚は、世の中でいちばん不幸な人と
　　することを考えていた」。
　　そして、結婚相手に選んだ男性は、ただの怠け者の遊び人にすぎなかった。
　　
　　それが分かったときには、二人の子供があり、母である以上、どんなにつらくても
　　耐える覚悟であった。　が、それさえも叶わず、ついには離婚し、二人の子供を
　　手離さなければならなかった。

　▼彼女が象徴するように、牧瀬さんがインタビューした１０人の女性たちは、
　　「党」というよりは、もっと手前の、人として認められる当然の権利を要求し、
　　貧困やそれに伴う不幸と戦った人たちだ。

　　そして、女性であるために、男性よりも多くの苦難に見舞われた。

　　いわば、ある意味で、「割りを食った女性」たちが、いまどうやって暮らし、
　　何を考えているかを、聞いている。

　　
　▼話は変わる。

　　偶然、さっきまで、テレビで「鈴木商店」金子直吉のことをドラマでやっていた。
　　神戸で起きた「鈴木商店焼討ち事件」のことは、まえ書いた。

　　関東大震災のとき、朝鮮人の虐殺があり、米騒動のときに、鈴木商店は
　　焼討ちにあった。

　　テロと暴動は、官憲だけでなく、私たち庶民も起こす。
　　戦争を始めるのも、政府でなく、庶民が「敵をやっつけろ！」と叫ぶ。

　　庶民を動かす勢力、操作する人びとがいる。
　　それは、「右」とか、「左」とか、レッテルの問題ではない。

　　それらの扇動や操作から自由になるためには、自分の考えをもつことが必要だ。

　　主人持ちでなく、自分のために戦うことが必要だ。

　　もっとも手前にある、「人権」や「理想」への思いは、何かの役に立つかもしれない。

　▼でも、いま書いたことも、私の探しものの糸口ではあっても、書きたいことではない。

　　思いはいろいろあり、あっちこっちに飛ぶ。
　　一方で、それは私のことであり、書くこともないかな・・、とも思う。

　　そうやって、昨夜はインターネットで、いろいろ探しものをしているうちに夜が明けた。

　　　★★★　　★★★　　★★★　　★★★　　★★★

　▼「音楽掲示板」案内 ――――　2014/05/09
　　――　" Music is Love in search of a word. "　―――――――――――　
　　