mixiユーザー(id:60260068)

2014年01月29日20:16

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『あぶく』


木々のざわめきを背に時雨れる蝉の声

真っ青な空に立ち上がる入道雲

荒々しく突き出る岩の間におそるおそる



沢の水はつめたくて、差しこんだ足首から
私は超合金のロボットに変身した

操縦士のアキラはこの非常事態に遭遇し
必要以上に痛がっている

(クゥゥ、ま、負けるものか!)



先に沢を登りはじめた父が笑いながら言う

「何ぁんが こん位で冷たかか!」

頑丈な父はロボットのようにデカい



私は川底の石を足先で選びながら
ガキーン、ガキーンと進む

ふくらはぎの辺りでつめたい水が
夏の息をとり込む音がつづく



父のポロシャツの背中が入道と重なる

もくもくと湧く筋肉にあこがれて
追いつこうと拳を握りしめるが
焦りだけが空回りしている



見上げるたびに父は小さくなって

「父ちゃーん!」

と、叫んでみるが応えはかえらない



取り囲む林はうな垂れている

父が見えない

あぶくは弾け、ロボットは立ちすくむ



木々の葉を雨が打ちはじめた

聞こえるのは水の音ばかり





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