木々のざわめきを背に時雨れる蝉の声
真っ青な空に立ち上がる入道雲
荒々しく突き出る岩の間におそるおそる
沢の水はつめたくて、差しこんだ足首から
私は超合金のロボットに変身した
操縦士のアキラはこの非常事態に遭遇し
必要以上に痛がっている
(クゥゥ、ま、負けるものか!)
先に沢を登りはじめた父が笑いながら言う
「何ぁんが こん位で冷たかか!」
頑丈な父はロボットのようにデカい
私は川底の石を足先で選びながら
ガキーン、ガキーンと進む
ふくらはぎの辺りでつめたい水が
夏の息をとり込む音がつづく
父のポロシャツの背中が入道と重なる
もくもくと湧く筋肉にあこがれて
追いつこうと拳を握りしめるが
焦りだけが空回りしている
見上げるたびに父は小さくなって
「父ちゃーん!」
と、叫んでみるが応えはかえらない
取り囲む林はうな垂れている
父が見えない
あぶくは弾け、ロボットは立ちすくむ
木々の葉を雨が打ちはじめた
聞こえるのは水の音ばかり
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