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2013年11月14日23:35

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彼女を堕とせ 蜘蛛のように(第6章)

ニンマリと意地悪く笑ったその女生徒はまるで演劇の台詞のようにゆっくりと歩きながら更に皆を扇動する。

「そうよね?よくよく考えてみたら東田君は転校してきたばかりで学校のことが良くわかってないから瀬能さんに色々質問したり聞いてみたりするのは当然だものね……ごめんね、東田君。私、言い過ぎちゃった……でもね?わかってもらいたいのは私、ううん私達はっそれだけ次の演劇祭に向けて頑張っているの!だからこそ強く言いすぎてしまったのよ」

 ああ思い出した。 この女生徒は二年の先輩で優香が入部するまでは主役級を担当していた人だ。 つまりは恋慕の嫉妬以外にも役を奪われたことの嫉妬もあるのか……それにしても、

「だから悪いのは東田君よりも瀬能さんの方よね?演技のときに対して何の意見も出さない。こちらの意見と指示を待っているだけで何もやる気が見えないもの……それなのに異性交遊だけは熱心なんてどうしようもないじゃない?そう思わないの!みんな」

 最後の言葉をより張り上げて彼女は聴衆達にアピールする。

 なるほど昨年まで主役を張っていただけあって頭も悪くないし、度胸もあり、顔も世間一般的に見れば美人でもある。

 なにより声が大きいので、元々演劇に興味があって入部したのではなく優香を見て入部したものが大多数の彼らのような所謂にわかにとっては声高に大きく主張されて一部の人間が賛意を表明した以上何の異論もないだろう。 

 東田も先ほどまで一方的に罵倒されていたせいか、わざわざ異論を挟んで波風を立てることもしないようだ。  

 場の趨勢は決した。 すでに判決は下りたのだ。 後は囚人がやってくるのを待つばかりである。

 無実の罪を何の打ち所も無いであろう人間が裁かれてしまうのは昔からよくある事、要はそうならないように目立たず立ち回るかもしくはその無実の人間を陥れる側の人間になればいいのよ。

 あの人の言葉を思い出した。 真っ白なシーツを乗せたベッドに座ってあのおっかない瞳で見下ろしながら……。 そしてその後に続いた言葉は……たしか……。

「お、おはようござい……ます」 

 静かにでも煮えたぎった悪意のこもった部屋ではコーヒーに垂らされたミルクのようにはっきりと見て取れるほどの存在感を出しながら未だ自分の罪を知らない囚人がやってきた。

 その後のことはまさに地獄。 ただその一言だけだ。


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