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2013年11月14日23:21

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彼女を堕とせ 蜘蛛のように(第6章)

 授業終了を示すチャイムが鳴ったとほぼ同時に教室から飛び出し、すぐに優香の居る教室へと向かう。

 優香の居る教室まではざっと数十メートル、そこに到達するまでにすべきことを超高速で組み立てる。 まず彼女を教室からすぐに離れさせる。 優香の教室には演劇部の部員がかなりの人数居る。 あのメールは演劇部員全員に発信されたかもしれない。 そうなれば……。

 頭の中でカッと火がつくイメージが沸いた。 奥歯を強く噛みこんだせいで頭痛がする。ああどうしよう俺はいま信じられないほどに、理不尽なまでに怒り狂っている。

 あの女の首を締め上げて、叩きつけて、頭を砕いてやりたいと本気で思ってしまっている。 そんな自分自身も同じようにしてやりたい気分だ!

 俺が心を震わせるのは優香だけのはずだ!俺が本気で心から考えるのは優香だけだ!

 どんな理不尽で、腹の立つことがあっても俺は優香以外に心を動かされてはいけないんだ! それがたとえ喜びでも怒りでも悲しみでも楽しいという感情さえも全て俺の中のそれは全て優香のためだけに存在している!

 そういう約束を……契約をしたんだ……あの日彼女に言われて……。

 教室から出てくる同級生達の驚く姿を交わし続け優香の教室に到着する。 すぐに全力の力で教室の扉を開き、名前を叫ぶ。

「優香!」

 教室内でポツリと椅子に座っていた優香が振り向く。 呆けたような、驚いたように大きく瞳を開いている。 

「恭……くん?」

 彼女の姿を確認すると同時に走り出して優香の手を引っ張って教室外へと引っ張り出していく。

「えっ?ちょ…ちょっと…ど、どうしたの!」

 疑問符を上げ続ける優香の声を無視して俺は学校の廊下を走り続ける。

 燃え上がった脳内で静かなところを探し続ける。 すれ違う奴らが驚いたように振り替えるところを見るとよっぽど今の俺は血走った目をしているようだな。
 
 一つの場所を思いついて俺はそこまで優香を引っ張っていく。 この頃になると優香は何も言わず黙って俺の引っ張る方向へと共走り出していた。 強く握り締める俺の腕を強い力で……。

 やがて目的の場所に着いたことで俺は掴んでいた優香の腕をやっと放した。 手のひらにはじっとりと汗をかき、強く握ったためかジンジンとした痺れと優香の細い腕の感触だけが小さく残っていた。

「ど、どうしたの?いきなりこんなところに引っ張って……」

「あ、ああ……じ、実は……」

 そこで口が一旦止まる。  まずどういう風に話をするかを考えなくてはならない。

 一旦周囲を見渡し、しばし考える。 幸い俺が優香を連れてきた場所は移動教室ばかりが集められた校舎裏で、掃除の時間等以外で人が来ることは滅多に無い場所なので、例の画像のことを聞きに来る人間はまず来ないはずだ。
 
 よく考えてみたらあの画像を見た後はどうやって優香を連れ出すということしか思っていなかったことに気づき、どう説明しようかというのを忘れていた。

「い、いやあ……ちょっと……優香と話したくてさ」

「……?」

 とりあえず考えがまとまるまで話を伸ばそう。 そのためにもまず誤魔化すためにこのことを言っておかないと、

「だって最近東田と三人でお昼食べてただろう?たまには……その……二人で……過ごすのも悪くないと思ってさ」

 やや照れたようなニュアンスを含ませる大事なところに少しだけ間を空ける。 
「あ、ああ……そ、そうだったんだ。わ、私も……たまには……二人もいいなって思って……たから……嬉しいな」

 モジモジと少しだけ頬を紅色に染めて、優香がつつと俺の隣に来る。 そしてチョコンと俺の制服の袖口を持って照れたようにニッコリと笑った。 

「……とりあえず座ろうか?」

 コンクリート部分の上に載っているホコリやらゴミなどを払って促す。
 
「う、うん……」

 ややぎこちない返事をして優香が座ったのを確認してから俺も隣に座る。 やや間が開いてしまったので取り繕うように話を始めた。 とりあえずは取り留めの無い話をしながらゆっくりと説明を考えるとしよう。

「急に教室に行ってゴメン……なんというか……ちょっと焦ってたというか……なんというか」

 ポリポリと頭をかきながら照れ笑いを表情の表層に浮かべる。 これは事実であり、確かに俺は焦っていたのだから噓は言っていないのだ。
 
「う、うんちょっとだけ驚いたけど……」

 優香が黙る。 何か落ち込んでいるように俯いているように見える。

「だ、大丈夫?」

 心配して声をかけると、何か泣き笑いのような表情を出して、

「嬉しかったの……学校であんな大きな声で名前を呼ばれて……それで腕を引っ張っていかれて……それで私と二人になりたかったって言われて……凄く嬉しいよ」

 涙を浮かべて、特別綺麗な笑顔を浮かべた優香は美しかった。 基本的に優香に対しては冷静に接している(虫ケラである俺が見捨てられないために)がその姿は反則だった。

 心臓がドクリと高鳴る。 ああマズイ、止められない……止められそうに無い……だってこんなにウツクシテクカワイクテキレイナカノジョヲミタラ……。

 ブーンブーンブーンブーン。 ブブブブッブブブ。

 頭の中の固い物が融解しそうになった瞬間、俺と優香の携帯が同時になった。

 その瞬間、はじかれたように俺は後ずさってあわててポケットの中を探る。

 優香も一拍遅れてスカートのポケットに手を入れている。
 
 取り出した携帯の画面には知らない番号。 一体誰だろうとは思わなかった。

 この携帯の持ち主は十中八九あの女だ。 おそらくは俺に昨日の時の様に挑発の電話をかけてきたのだろう。 いま俺の後ろには優香が居る……出ても大丈夫だろうか?

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