■備忘「身辺雑記」　　あがって・・・

●2013年11月12日（火）　　曇り

　▼「アンタ、きょう、ごみの回収が終わった後、コンテナー置場の掃除は
　　　うちが当番やから、あのゴムホースの使い方、教えて！」

　　妻がめずらしく、私にお願いをする。

　　「ああ、ええよ。　で、今日、シャンソンの練習日？」

　　「そう、早く回収に来てもらわんと、、シャンソンに間に合わへんわ！」

　　妻は、急いでいる様子で、ごみ回収車の来るのを待っている。


　▼「あれっ、いつの間に来たんやろ？、アンタ、気ぃーついた?」
　　「いゃ、全然わからんかった」

　　ごみの回収が終わり、環境局の車はいない。

　　妻は、慌てて、当番の、散水栓のカギとデッキ・ブラシを持って、
　　ごみステーションに行く。　私も、そのあとについて行く。

　　「ガスのカチットと同んなじで、ここにホースの先をつないで、
　　　あとは、リールからホースをひっぱったらいいだけや！」

　　「わかった、あとはワタシがやるから・・」


　▼ごみステーションの掃除が終わって、また、しばらくして

　　「アンタ、きょう午後、奥須磨公園、散歩に行くの？」
　　「天気があとひとつだし、イイモトくんが居れば、喫茶店にでも誘うかな？」

　　「そう。　ワタシは、さぁ、行かないと・・・。　どう、帽子、いい？」
　　「寒くなってきたから、ちょっと厚手で、ゴテゴテしてても
　　　いいんじゃないかな。　それで、いいと思うけど・・」

　　「そう、じゃー、いってくるわ！」


　▼妻が出かけてから、しばらくして
　　私は、イイモトくんに電話した。

　　「がんもどきの炊いたのと、キャラぶき、かぼちゃの煮たのがあるから、
　　　よかったら来る？」

　　私は、妻に言われている。
　　「アンタは構わなくても、ワタシがいやなの！！」

　　その「妻の禁」を破って、彼を家に呼んだ。

　　妻は、忙しくてままならぬ、『片付けのできていない部屋』を
　　他人に見られるのが、大のキライである。


　▼「うちの奥さんには、内緒。　あがって・・。
　　　そっちは見ないで。　こっち、こっち・・」

　　私は、やってきたイイモトくんを、なるべく居間の方を見させないようにして、
　　私の部屋に、招き入れた。

　　「いゃ、悪い。　いっしょに飲もうかと、思って・・」


　　そうやって、イイモトくんと私は、しゃべり始めた。


　　　　・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


　▼団地の入口で、すれちがって、翌日か、翌々日に
　　彼の家を訪ねた。

　　同じ団地の、棟が違うだけで、歩いて５分とかからぬ所に
　　彼は住んでいる。

　　部屋の中は、すっきりし過ぎるくらいに、何もなかった。
　　３年前に、６５歳で退職して、一時、嫁さんの実家に行って
　　暮らしていた。

　　奥さんの方は、もう１０年くらい前から、実家に帰っていた。

　　「この家、売ろうと思うとったけど、売らんで、よかったわ！」


　▼話を聞くと、１年前に離婚し、ひとり、この家にもどってきて、
　　いまは、一人暮らしということだ。

　　なんか、急にオジイサンになったように、老け込んでいる。

　　リファーレに降りたら、あと帰り、階段あがってくるのが
　　しんどくて・・・、などと言う。
　　
　　いろいろ話したけど、
　　「ちゃんと、自炊して、メシ食わんと、いかんよ！」と言って
　　私は、家に帰った。


　▼それから、また何日かして、彼が訪ねてきて、妻に、

　　「あれっ、イイモトさん、久しぶり。　でも、家にあがったらタメよ。
　　　いま、散らかってるから・・」

　　と、玄関口で制され、私とイイモトくんは、啓明学園の方の喫茶店に
　　行った。

　　坂道を上るのを見ていると、ほんとうにヨボヨボしている。

　　彼は、帰りに登るより、帰りは下りの方が楽だから、と言うので、
　　オートバックスのそばの喫茶店に行った。

　　また、そこでも、話をした。

　　こっちに戻ってきて、一度、倒れたことがあるらしい。

　　「もう、このまま死ねたらいいと思った・・」、などと言う。


　　
　▼話をするうちに、いろいろ彼の「現状」がわかってきた。
　
　　同情することもあり、家に帰って、妻にそのことを話すと、

　　妻も、「ほんと、かわいそー」と言う。

　　そんな、ことで、手料理なんか、あまり食わないだろうし、
　　一緒に、飲もうと思いついた。


　▼「あぁ、疲れたー」と、妻が帰ってきた。

　　「イイモトさんと、どっか行った？」

　　私は、一瞬とまどう。ぅっ、と詰まる。

　　「あのー、がんもどき、などあるから一緒に飲もうって、
　　　呼んだのよ。　ボクの部屋に直接、行って、この居間は
　　　素通り、・・・」

　　「なんやの、家にあげたらダメと、言ったのに・・・」

　　ちょと叱られたけど、妻もＩくんのことは、家族ぐるみで
　　つきあっていたから、よく知っており、許してもらった。


　▼「喫茶店にいっしょに行った・・・、って言えばいいのに・・」
　　と、妻に、ウソも方便だ、みたいに言われた。

　　しかし、問題は、「彼の元気」である。

　　妻は、なんとかなる主義だから、

　　「まぁ、大丈夫よ！」と言う。

　　私も、「まぁ、大丈夫」だと思う。

　
　 ★★★　　★★★　　★★★　　★★★　　★★★


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