ロックンロール・イズ・バック!!
思わずそんなことを叫ばずにはいられない。当時、八面六臂の活躍ぶりを見せていたアウトキャストのアンドレ3000が放った“ヘイ・ヤ!”。南部のどこか垢抜けないヒップホップ・ユニットの片割れに過ぎないと思われていた彼がアメリカ全土を制したのは、まさかのマージービートをもじったようなプリミティヴなサウンドだった。アンドレはPVの中で、ビートルズのようなロックンロールの権威に扮し、エド・サリヴァン・ショーを模した60年代風のステージで暴れ回る。
シンプルながら凝った和声進行、ファンキーなグルーヴを醸し出すシンセ・ベース、キュートな旋律をなぞる鍵盤の単音。そして南部の郷愁を感じさせるコーラスにおけるパンチライン。アンドレのユニークなラップに騙されてはいけない。たとえばフランク・シナトラの“マイ・ウェイ”のように、たとえばエルヴィス・プレスリーの“ハウンド・ドッグ”ように、アウトキャストの“ヘイ・ヤ!”は生まれた瞬間から往年のスタンダード・ポップスのようなクラシカルな佇まいをしている。
あるいは白人ロッカーたちは“ヘイ・ヤ!”に対して嫉妬すべきかもしれない。なぜなら、彼らの衝撃を日本のお茶の間で例えるのなら、地方巡業をしている売れない演歌歌手が、アメリカから突然やってきたジェロにすべての話題をかっさらわれたようなものだから(ちょっと違うか)。
かつてエルヴィスに奪われたことによって生まれたロックンロールを、半世紀の時を経て再び白人たちから奪い返したアウトキャスト。まさしく、ロックンロール・イズ・バック!(言い過ぎ?)
00年代のポピュラー・ミュージックにおいて、間違いなくベスト10には入る名曲中の名曲。僕の価値観を一新させた曲でもある。
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