丸の内の三菱一号館美術館の後、渋谷へ移動。
Bunkamuraザ・ミュージアムで開催中の「スイスの絵本画家 クライドルフの世界」展を観る。
エルンスト・クライドルフ(1863-1956)は、スイスの画家・詩人で、19世紀から20世紀へ移り変わる時代に生まれた絵本黎明期の代表的作家である。
療養生活を送ったアルプスで自然と親しみ、殊に花や虫等の小さな生き物達に興味を持ち、彼等を登場人物に擬人化した絵本を作った。
想像力豊かで不思議な詩情を持った彼の絵本は、今もスイスで、世界で愛され続けている。
この展覧会は、クライドルフの絵本原画を中心に、全225点で構成された、日本で初めての本格的回顧展である。
・会期 6/19〜7/29
時代はアールヌーボー(ドイツ語圏ではユーゲントシュティール)の生まれた時代で、アールヌーボーも、植物の曲線的な様態を装飾性豊かに採り入れた。
ヨーロッパにおける工業化の極端な進行時代に、自然に回帰しようとする精神は、人間にとって自然なものだったろう。
また、人は、どんな物からも顔を読み取ろうとするようにできているらしい。極端な話をすれば、車でも電気製品でも、3つの単純な点さえあれば、それは眼と鼻(または口)と認知するのだそうだ。
益してやクライドルフのような情緒性に富んだ人物が、隔絶された世界に療養しながら、大自然の中の植物の生成や形態にメルヘンや物語を感じたのも、道理に適った事だったのではなかろうか。
処女作『花のメルヘン』(1898)から、生涯で25の絵本を彼は制作した。
絵だけでなく文章も殆ど自分で創作した。
展覧会は、これらの本を時代を追って章立てした構成を採っており、それにプロローグ「肖像と風景」、エピローグ「夢の世界」を加えている。
私は絵本世界に埋没する子供でもマニアでもないので、人間としての彼に興味を持って展覧会を観た。(そういえば、観客に母親と子というパターンが大層多かったのを想い出す。)
そんな観点からは、プロローグとエピローグにある肖像や風景画等、絵本でない単独の絵画作品に人間クライドルフと直結する世界があるように思えて、面白く観たのだった。
写真1 『自画像』(1916)
写真2 『花のメルヘン』(1898)より「夜のぬすびと」
夜は、Shibuya Hikarie へ初めて行った。
8階のクリエイティブ・スペース「8/ 」にある小山登美夫ギャラリーで、映画監督の「デヴィッド・リンチ展」をやっているのを、たまたま知ったので。
リンチを映画監督とだけ既定してはいけないのだろう、このギャラリーの為の新作、リトグラフ10点と水彩12点を展示、且つ販売していた。リトグラフで10数万円、水彩画で90万円弱という値段が付けられていた。
リンチらしい、殺伐とした都会の心象風景(と言っていいかどうか?)で、全てモノクロに近い色使い。
・会期 6/27〜7/23
写真3 『Hand of Dreams』
現在は、奈良美智版画展をやっている。
・会期 7/25〜8/6
明日は写真美術館のレポートをして、東京小旅行記を閉めたいと思う。
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