●2012年06月18日 (月) 曇り
▼蒸し暑い。
職場は節電でエアコンはつけない。
冷房も除湿もなく、室内の扇風機は湿った空気を
かきまわしているだけで、外に出た方が涼しい。
こんなときは、家に帰って、
焼酎のロックに限る。
もちろん、ピールがあれば「こんなときは、ビールに限る」だし、
ウィスキーがあれば、「ロックはウィスキーに限る」となるわけで、
結局、何でもいいのである。
まだ「夏」の手前の「梅雨」ではあるが、帰宅して、
ランニングを脱ぎ、パンツ一枚になって
カラカラと氷の音が鳴るグラスを傾け、冷えた焼酎が
ごくりと喉元を通過するとき、
「よくぞ男にうまれけり」とは、言うべきか。
▼先日の土曜日、夜9時からNHKで
『
永久の泉』というドラマをやっていた。
藤原新也『コスモスの影にはいつも誰かがかくれている』の
「尾瀬に死す」が原作だそうだ。
ドラマでは熊本が舞台。
余命4カ月の妻を阿蘇山中で殺害した容疑で、仕立屋の夫・倉本(小日向文世)が
逮捕される。その男の弁護を依頼された還暦過ぎの国選弁護人の山内(寺尾聡)。
倉本は妻を殺したと自供しているが、山内は、倉本の夫婦の関係を調べてみると
二人には子供はいないが、夫婦仲はとてもよく、倉本には妻を殺す動機が見つからない。
倉本の自供に疑問を感じた山内は、娘の百合(鈴木杏)とその恋人の寺部(山本耕史)と
ともに阿蘇山へ行き、事件当日の夫婦の足取りを追う。
山道を歩きながら、死を直前にした妻と、それに向かい合わねばならぬ夫の
二人の姿を思い浮かべる。
やがて、山内は「倉本は妻を殺していない」と確信する。
それは、妻に先立たれた山内自身の過去とも、二重写しになってくる。
▼毎日JP「視聴室:永遠の泉」は、
「水を効果的に使った映像や阿蘇の風景が、静謐(せいひつ)な空気感を
漂わせ、美しいドラマに仕上がった」
と評している。
仕立屋の妻・芳子を演じた奥貫薫が、大袈裟でなく、よかった。
NHKらしい「佳作」である。
TVのチャンネル権は妻にあるのだが、この日は二人で
これを観た。
描かれているのは、死にゆく妻と、先立たれる夫である。
ティッシュを目頭にあてながら、
「あんた、心配せんでもええよ。あたし絶対、あんたより長生きするから!」
「反対に、先に死んだら、化けて出てくるから・・」と、妻は言う。
女は元気である。
▼ところで、ドラマでは、山内の妻・雅江(田中美佐子)が亡くなったとき、
娘の百合が、「家のことやお母さんのことほっといて、どうして
お母さんの体の具合が悪いことに、気づかなかったの」
と、父の山内をなじる場面がある。
そして、事件が解決し、検事になった娘に、山内はこんな話をする。
それは、妻が癌を発病してからのことで、妻は久しく戻っていない
実家の天草で、親戚の通夜があり、それに夫婦二人して行った。
そのときのことだ。妻は、自分の死を覚悟していて、山内に
「ありがとう」といった。
「あんとき、母さん、ありがとうって言うたとさ」
「言いたいことも言わんで、黙って尽くしてくれて、しかも、ありがとうって」
「その言葉を思い出して救われたとよ」
「死んでからも支えてくれる言葉を残していってくれるなんて、
凄かなぁ女は」
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