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2012年03月14日22:33

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■失う

●3月14日(水)  晴れ

 ▼10日程前、仕事帰り喫茶店に寄った。
  小一時間、「本」を読んで
  そこを出て、駅に向かった。

  改札の手前で、上着のポケットに手をつっこんだが
  定期入れがない。
  左ポケットには、いつもハンカチとティッシュと定期入れを
  収めるのだが、定期入れだけがない。

  念のため、入れる筈のない右のポケットを探るが、
  いつもどおり、タバコとライターが入っているだけで、定期入れはない。
  ズボンのポケットも見るが、左に小銭入れ、右に携帯電話が入っており、
  これも、いつもどおりだ。

 ▼いま着ているダウンコートは、ポケットが斜めに付いていて
  底が浅い。
  喫茶店でコートを脱いで横に置いたときに、
  何かの拍子に、定期入れが落ちることはあるかもしれない。

  でも、定期入れだけが落ちるはずはない。
  おそらく、職場で制服から私服に着替えたときに、
  定期入れを移し替え忘れたのだと、思う。

  そう思うが、更衣室でポケットのものを移し替えたときの
  定かな記憶がない。漫然としている。

 ▼職場にあるはずだ、と思いつつ、喫茶店まで来た。
  私が座っていたテーブルに、すでに次の客が座っていたら
  いやだなぁー、と思いながら喫茶店のドアを開けた。

  女店員が、おやっという顔をしたので、
  私は定期入れが落ちてなかったか、聞いた。
  「さぁ・・」というので、さっきまで座っていた席に行くと、
  幸い客はおらず、私はテーブルの下をのぞいて、それらしいものが
  ないので、そそくさと店を出た。

 ▼家に帰って、妻に報告した。
  「どっかで、定期入れを落としたかもしれない・・」
  職場の制服にあるかもしれない、ということは言わなかった。
  それは、制服のポケツトになかった場合に備えてのことだった。

  翌日、出勤してロッカーを開け、制服の上着の左ポケットを探した。
  定期入れは、あった。
  が、思っていた通り定期入れがあったことの安堵感よりも、
  制服の左ポケットから移し替える際に、定期入れがないことに気づかず、
  また、あとから定期入れを移し替えたかどうかを思い出せないことに
  私はショックを感じていた。


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