■夫婦ゲンカ
●アホだから、つまらんことをまた書く。
妻に知れたら、
「あんた、書くンなら、
自分のことだけにしとき！
あたしのこと、書いたら
承知せえへんから・・」
と、すでに言い渡されているから、
きっと、勘当もの（夫婦だから、離縁ものか）にちがいない。
●しかし、きのうの日記へのコメント欄で、いま
私が、妻に口をきいてもらえてない状態であることを
書いてしまっているので、夫婦ゲンカのことを書く。
ここしばらく、前回の夫婦ゲンカをした日を思い出せない
くらいに、夫婦ゲンカをしていない。
感じとしては、半年以上していないと思う。
夫婦ゲンカというものは、二人でするものだから
私が気分を害して妻に腹を立てたり、また、私が妻に
「こうあってほしい」と、何ら願わなければ
ケンカは発生しない。
ここ半年ばかりは、そういう意味で、
私は、妻に関心がなくなったわけではないが、
おかげさまで、妻に私は満たされていて、
何も腹をたてることはなかった。
●それが、三日前、妻が帰ってきて、いつものように遅い晩飯が
はじまろうとしていたときだ。
「あんた、はよう、おいでよ
ご飯にするよ。
すぐ来んと、しらんよ！」
と、居間から妻の呼ぶ声が聞こえ、私は
「ああ、いま、すぐいく。
ちょっと待って！」
と、対応した。
これは、我が家ではいつもの会話のパターンで、
別にかわったところはない。
しかし、この日、ミクシイで、私は日記を書いていて、しかも
リンクを４０個も貼り付ける作業をやっていた。
また、その前にも、昼間、寝ていて、朝まで起きているということが
二日も続いていた。
それで、妻は厳しかったのだと思う。
執拗に、私を連呼した。
「ああ、もう、すぐいく。
ちょっと待って、先に食べてて！」
と、私は答えた。
●で、妻は怒った。
妻が怒るのは当然で、妻が正しいから、私はあやまるだけで
ふだんは、それで、なんとか誤魔化して、平常にもどる。
でも、この日は、なかなか許してもらえなかった。
怒った妻は、私と口をきかない状態になった。
で、翌朝、朝まで起きていた私は洗面台にいる妻に、
「あっ、ここにおったの。
顔を合わしたら朝の挨拶ぐらいせんとね。
おはようございま〜す」
と、挨拶した。
●一瞬、妻もニャッと笑った。
それでケンカは、おしまいである。
が、ニャッと笑ったあと、今回、妻は追撃に出た。
「わたしは、許さへんからね。
もう、あんたのことなんか、しらへん」
で、私は、ちっと気分を損ねて、
「まだ、いうとる！」
と、言った。
そこから、第二次夫婦ゲンカがはじまった。
●消費者対応をしていれば、すぐ気づくことだが、
クレームのクレームたるゆえんは、クレーム対応のまずさが
原因となる「二次クレーム」にある。
「二次クレーム」こそが、クレームの本質である。
最初のクレーム、夫婦ゲンカの素は、そんなの何だっていいので
あって、対応のまずさがクレームやケンカを大きくさせ、
クレームやケンカの「核」をなしている。
●つまり、「相手への期待」が裏切られる、
それが耐えられないのである。
ケンカの発端や、クレームとなったもとの内容などは、
もうどうでもいいのである。
ただただ、相手の対応に不満なのである。
相手に期待するものがあるから、腹が立つ。
私もそのとき、妻に期待したのだ。
もう許してもらえると。
許してもらえなくても、妻のほうが正しいのだから、そこまで
つまり、「窮鼠、猫をかむ」という状態まで、私を追いこまなくても
いいじゃないか、という気持ちが起きたのだ。
●人に期待する、わかってもらおうとする。
ひどいときには、「わからせよう」とさえ、する。
この態度、押し付け、が事態をより深刻にさせる。
わかりあう、というのは「情緒」の問題なのに、それを
「論理」の問題にしてしまう。
正否を決めるのは「論理」であるが、その「論理」に従うか
否かは「情緒」の問題である。
●ケンカは二日目に突入し、三日目になった。
二人が口をきかなくなると、その均衡を破るのは私である。
そういう役目に私はなっているし、私のほうが、口を利かないでいる
状態によわいのである。
だから、妻とのケンカで、私はときどき、たまには勝ちたいと
真剣に思うことがある。
そんな思いを抱くと、いよいよ事態はこじれ、傷は深くなる。
このような苦闘の過去は、日記「家の中」にも書いているが
最近は、私もすこし成長してきて、妻からも、
「あんたは、暖簾に腕押し
のらりくらりとして！」
と、言われるほどにムキならなかったのに、今回、つい、まじに
「わかってほしい」気持ちに、なってしまったのである。
●だいたいが、夫婦ゲンカというのは、「求愛行動」である。
「愛は惜しみなく与える」のではなく、「惜しみなく奪う」
ものである。
今朝、ケンカ三日目になり、朝まで起きていた私は
起きてきた妻と、入れ替わりに布団に入った。
そして、私は考えていた。
考えながら、また、妻の行動を注意深く、また、耳をそばだて
ながら、妻がどうしているか、何を考えているか、を探索していた。
また、目をつぶったまま、むかしのことも思い出していた。
●妻とケンカして、これまで一回も勝った経験がない。
妻にわかってもらおう、今回は勝とう。
そう思いながら、過去のケンカを思い起こしていた。
若いころは、妻が泣いた。
あれは、私の勝利だったか。
いゃ、あれは勝ったことにならない。
私の完全な敗北だった。
子供が大きくなるにしたがって
妻は強くなり、決してあやまらなくなった。
私は、わざと子供の前でケンカし、近所にも聞こえるように
大声でわめいた。
子供たちに聞いた。お父さんとお母さんと、どっちが正しいか。
子供たちにとっては迷惑な話だ。
長男は、そして、のこり二人の子供も
「さぁーっ」と言って、あからさまには、妻にも私にも味方しなかった。
妻は、いよいよ迫力を増した。
そして、私は少しずつわかってきた。
到底、かなう相手ではないし、また
大抵、妻が正しかった。
●だから、私たちのケンカは真剣なのだが、最近は
気心が知れているので、「にらめっこ」みたいなもので
顔をあわせて、ニッと笑ったら相手も笑い、先に笑ったほうが
負けなのである。
・・・・
●そのようなことを思い出し、寝ながら、妻の物音を聞いていた。
歯を磨いて、うがいをして、プラスチックのコップを洗面台に
置く、妻の音が、いつもより大きい。
私は荒れているのだ、と一生懸命アピールしている。
居間にもどってきて、妻は新聞を広げ読んでいるようだ。
ページをめくる音も、私に聞こえるように、大げさにめくる。
そして、ため息をつくような、咳払いをするような、そのような声を
たてる。
「う〜ん。 ･･･ うん。
うへん。うんっ」
●私は知らない顔して、その声や妻の物音を聞きながら
奥の部屋で寝ていた。
そして、いつの間にか、眠ってしまった。
・・・・・
●どれくらい、眠ったのか。
私の眠っている間、妻がどうしていたか、私は知らない。
うとうとしながら、私は目が覚めた。
目を覚まして、起き上がって、
私は、自分が眠ってしまうまでの間、何を考えていたか、や
また、その間、妻が立てていた物音のことを考えた。
●私は、洗面所に向かい顔を洗い、歯を磨いた。
そして、居間でＴＶを見ている妻に声をかけた。
「おはよう！」
すると、妻が言った。
「おはよう！」
二人して顔をあわせて、ニヤッと笑い、
それで、もう、とうとう、今回のケンカは終わってしまった。
それから、きょうは、妻が休みだったので、
二人して、並んで、さっきまでＴＶを観た。
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