mixiユーザー(id:2230131)

2011年09月17日08:54

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アンテナ/くるり

 音楽全般に関する造詣が深く、ただしその引き出しの多さをひけらかすような言動が鼻に付くこともあり、生意気で、とにかく小賢しいイメージを持たれがち。そんなくるりが、はじめて小細工無しのストレートなロックンロールに向き合った『アンテナ』。

 まず、ドラマーのクリストファー・マグワイアは間違いなく本作の功労者。強弱の付け方がうまく、ふくよかで、とても雰囲気のあるドラミングをする。岸田繁が本作を「クリストファーのアルバム」と評したことからも分かるように、なまじクリストファーの存在が『アンテナ』の作風を決定付けたと言っても過言ではないだろう。

 では、その方向性はなにかと言えば、「バンド・アンサンブルそのものを聴かせること」だと思う。つまり、歌モノ感はこれまででもっとも希薄。意外なほどオーガニックなロックンロールが全編を貫いている。ある種、くるりというバンドからもっとも見え難かった、あるいはこれまでだったら巧妙に隠していたであろう部分。そこに正面切って向かい合った勇気に、まずは称賛を送りたい。

 ただし、その結果として出てきたサウンドは、あまりに渋く、地味で、結成6年目(当時)とは思えない、どっしりと構えた若年寄りなロックンロールだった。先行シングル“ロックンロール”や“How To Go <Timeless>”はまだ従来のくるりらしいキャッチーなメロが光るが、“花火”や“黒い扉”みたいなジャム・セッションで固められた後半の流れは、あまりにレイドバックし過ぎ。
 一見、アメリカのカントリーやブルースの流れを汲んでいるようだけど、聴いたときの印象は欧米というよりもむしろ日本情緒を強く感じさせるという不思議。くるりというバンドの奇妙さ、捉えどころの無さ、そしてそこから生じる独特な魅力がよく表れてる。そして、「ロックという外国文化を日本人が嘘臭くなく表現すること」について悩み抜いた痕跡があり、ひとつの解答らしきものが含まれているようにも思う。

 もっと早く気付いていれば良かった。つまり、本作『アンテナ』の横に並ぶべきバンドは、よく同列で語られるようなナンバーガールやスーパーカーとかではなく、むしろ70年代初期のニール・ヤング・ウィズ・クレイジー・ホースだったことに(笑)。
 即物的な楽しさ/美しさ/いかがわしさではなく、聴いてるうちに周りの空気がじんわりと音のなかに滲んでくるようなタイプの作品。早朝の澄んだ空気を思いっきり吸いながら聴きたい。
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