●9月15日(木) 晴れ
▼ところで、
むかし、鈴虫と言っていたのは、今の「マツムシ」で、
むかし、松虫と言っていたのが、今の「スズムシ」である、
という「説」がある。
説というより、いまや通説で常識に近いらしい。
高校の古文でもそのように教えられている。
試しに手許の古語辞典を開いてみると、
まつむし[松虫] 昆虫の名。今のスズムシ。
秋の夜、リンリンと澄んだ声で鳴く。
すずむし[鈴虫] 今のマツムシの古称。
と書いてある。(金田一京助監修『明解古語辞典』)
▼私の手元の辞書にかぎらず、
近代辞典の先駆けといわれる大槻文彦『言海』以来、
「マツムシ・スズムシ入れ替わり説」はどの辞典も踏襲してきた
立場であり、学会の「定説」なのである。
しかし、本当にそうなのだろうか、と疑問を呈した人がいた。
昔も今も、リンリンと鳴く虫を「鈴虫」と呼び、
チンチロリンと鳴く虫を「松虫」と呼んでいたのであって、
二つの虫の呼称に入れ替わりはなかった、というのである。
異を称えたのは学習院大学・教授の
松尾聡であった。
(『国語展望』84号 1990年2月)
▼鈴虫と松虫の呼称に入れ替わりが果たしてあったのか、なかったのか、
その辺の事情について、昼休みに読んだ「本」に、詳しく書いてあった。
白石良夫・著『古語の謎 書き替えられる読みと意味』(中公新書)
ログインしてコメントを確認・投稿する