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2006年07月11日19:35
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●身辺雑記�供�10）/■「きりぎりす」（続々）
■「きりぎりす」（続々）
●ようやく本論を書く段になった。
もとより「どうでもいい話」であるのは、前と同じである。
いま、「本」の片づけをしているが、昭和２４年６月に
筑摩選書25として刊行された太宰治の「きりぎりす」が
本箱の奥のほうから出てきた。
それで、この「本」のことや、本書に収められた書名と同一の
作品「きりぎりす」のこと、また、太宰治を読んだころの
「話」をしようと思っていた。
●いまでは、宮沢賢治の作品と並んで、太宰治の作品も中学や
高校の国語の教科書に収載されているようだ。調べていないので、
感じやぼんやりとした記憶でものを言っているが、私の覚えている
限りでは、私自身は、太宰治を中学でも高校でも、教科書で
読んだ記憶がない。
私は昭和２０年生まれだから、昭和３５年前後の国語教科書の
ことである。
これも、まったく私の想像で、しかも、当時の国語教科書に
太宰の作品が採用されていなかったという前提でしゃべっているので
事実は、私の考えることとはまるきり反対で、誤った推論に基づき、
実際と異なる結論を導き出そうとしている、ということかも
しれない「話」ではあるのだが・・・。
・・・・
つまり、太宰は当時、まだ亡くなってから日が浅く、「現代作家」で
あり、また作品内容がどこか教科書にふさわしくなく、そのため、
教育的な配慮がなされていたのではなかったか、と思う。
●太宰が亡くなったのは、昭和２３年の６月１３日である。
どのようにして亡くなったかは、山田風太郎の「人間臨終図鑑」
から適宜抜粋して、日記「文学者の不自然な死」の太宰治の項に
書いた。太宰は愛人、山崎富栄と玉川上水で入水自殺をした。
それが「心中」なのか、どうなのかはさておき、二人は１９日に
死体で発見された。
「桜桃忌」が、太宰の実際に亡くなった６月１３日ではなく
６月１９日の死体があがった日に設定された経緯は、三鷹市生涯
学習情報のホームページに簡単に紹介されている。
●文学作品を評価するにあたっては、生（なま）の作家その人物の
実人生や生き方と、その人物によって創作された作品との関係が、
プラス・マイナス、微妙にではあるが、文学作品の評価に影をおとす。
書かれた作品そのものでも、作品に書かれた内容が実人生と
どう関わっているかが問われたりする。
そういうことだから、当時としては、高校でも、まして
中学では「太宰は教科書に採用されなかった」と、私は思う。
でも、採用している教科書があるかもしれないし、私は、誰かが
事実関係を正確に調査し、「太宰が教科書に載ったころ」みたいな
「話」を書いてほしいと思う。
いつ、誰が、太宰のどんな作品を、どこが出版した教科書において、
採用し始めたか。また、いつごろから、高校生に「太宰」が
受容されはじめたかも。
（これも、実はそういう「本」がすでにあって、ただ
私が知らないだけなのかもしれない）
まぁ、時事問題でも何でも、「事実」は作られたり、「発掘」されたり
するものだから、素人は「事実」に惑わされずに、自分の信ずる
「真実」を述べる以外に方法はない。
●つまり、私が言いたいのは、昭和３５年当時、宮崎の田舎の高校では
太宰はまだ、死後１２年しか経過しておらず、志賀直哉のようには
倫理的、道徳的でもなく、作品もまた教科書に収載するのには
ふさわしくない、という社会的教育的な判断があったように
私には思えた、ということだ。
ロカビリーが「不良」であるように、太宰もそれに近いものがあった。
しかし、だからこそ、その田舎の高校でも、太宰は読まれ
多くの生徒に支持されていたと思う。
中学と高校の違いみたいに、それは高校生になったら読む「本」として
教科書経由でなく、先輩・仲間経由で読まれていたと思う。
なかに「太宰嫌い」もいたが、評価は別にして「太宰をどう思う」
という仲間での話は、青臭い自分の「思想」を表明するような
趣きを持っていた。
●この「本」、「きりぎりす」には表題作を含めて１１篇が収められ
その編集にあたった臼井吉見が「あとがき」を書いている。
「・・死んだのが十三日で、『グッド・バイ』が十三回で、まだ
何とかが十三だといふから、この二篇（『富嶽百景』と
『トカトントン』）を加へて十三篇にすれば、太宰は
例の閉ぢた唇を歪めたまま、人なつっこい眼にいたづらっぽい
笑ひをうかべて、下卑た趣味だね、などといひ出すかも
知れぬ」
そして、最後のところに「あとがき」書いた日付を
「１９４９年６月 一周忌を数日後に控えた日」
と、記している。
「桜桃忌」は亀井勝一郎などが中心になって準備し、執り行われた。
臼井吉見は「一周忌」と書いて、「桜桃忌」とは書いていない。
しかし、「きりぎりす」を編み、「あとがき」を書いた臼井吉見は
この数日後の１９日、午後二時ごろは、第一回「桜桃忌」に出向き、
おそらく、三鷹・禅林寺の太宰治の墓前にいたのだろうと思う。
（つづく）
■参照
・フォトアルバム「太宰治を読んだころ」
■案内
・日記/「Home」案内
●ようやく本論を書く段になった。
もとより「どうでもいい話」であるのは、前と同じである。
いま、「本」の片づけをしているが、昭和２４年６月に
筑摩選書25として刊行された太宰治の「きりぎりす」が
本箱の奥のほうから出てきた。
それで、この「本」のことや、本書に収められた書名と同一の
作品「きりぎりす」のこと、また、太宰治を読んだころの
「話」をしようと思っていた。
●いまでは、宮沢賢治の作品と並んで、太宰治の作品も中学や
高校の国語の教科書に収載されているようだ。調べていないので、
感じやぼんやりとした記憶でものを言っているが、私の覚えている
限りでは、私自身は、太宰治を中学でも高校でも、教科書で
読んだ記憶がない。
私は昭和２０年生まれだから、昭和３５年前後の国語教科書の
ことである。
これも、まったく私の想像で、しかも、当時の国語教科書に
太宰の作品が採用されていなかったという前提でしゃべっているので
事実は、私の考えることとはまるきり反対で、誤った推論に基づき、
実際と異なる結論を導き出そうとしている、ということかも
しれない「話」ではあるのだが・・・。
・・・・
つまり、太宰は当時、まだ亡くなってから日が浅く、「現代作家」で
あり、また作品内容がどこか教科書にふさわしくなく、そのため、
教育的な配慮がなされていたのではなかったか、と思う。
●太宰が亡くなったのは、昭和２３年の６月１３日である。
どのようにして亡くなったかは、山田風太郎の「人間臨終図鑑」
から適宜抜粋して、日記「文学者の不自然な死」の太宰治の項に
書いた。太宰は愛人、山崎富栄と玉川上水で入水自殺をした。
それが「心中」なのか、どうなのかはさておき、二人は１９日に
死体で発見された。
「桜桃忌」が、太宰の実際に亡くなった６月１３日ではなく
６月１９日の死体があがった日に設定された経緯は、三鷹市生涯
学習情報のホームページに簡単に紹介されている。
●文学作品を評価するにあたっては、生（なま）の作家その人物の
実人生や生き方と、その人物によって創作された作品との関係が、
プラス・マイナス、微妙にではあるが、文学作品の評価に影をおとす。
書かれた作品そのものでも、作品に書かれた内容が実人生と
どう関わっているかが問われたりする。
そういうことだから、当時としては、高校でも、まして
中学では「太宰は教科書に採用されなかった」と、私は思う。
でも、採用している教科書があるかもしれないし、私は、誰かが
事実関係を正確に調査し、「太宰が教科書に載ったころ」みたいな
「話」を書いてほしいと思う。
いつ、誰が、太宰のどんな作品を、どこが出版した教科書において、
採用し始めたか。また、いつごろから、高校生に「太宰」が
受容されはじめたかも。
（これも、実はそういう「本」がすでにあって、ただ
私が知らないだけなのかもしれない）
まぁ、時事問題でも何でも、「事実」は作られたり、「発掘」されたり
するものだから、素人は「事実」に惑わされずに、自分の信ずる
「真実」を述べる以外に方法はない。
●つまり、私が言いたいのは、昭和３５年当時、宮崎の田舎の高校では
太宰はまだ、死後１２年しか経過しておらず、志賀直哉のようには
倫理的、道徳的でもなく、作品もまた教科書に収載するのには
ふさわしくない、という社会的教育的な判断があったように
私には思えた、ということだ。
ロカビリーが「不良」であるように、太宰もそれに近いものがあった。
しかし、だからこそ、その田舎の高校でも、太宰は読まれ
多くの生徒に支持されていたと思う。
中学と高校の違いみたいに、それは高校生になったら読む「本」として
教科書経由でなく、先輩・仲間経由で読まれていたと思う。
なかに「太宰嫌い」もいたが、評価は別にして「太宰をどう思う」
という仲間での話は、青臭い自分の「思想」を表明するような
趣きを持っていた。
●この「本」、「きりぎりす」には表題作を含めて１１篇が収められ
その編集にあたった臼井吉見が「あとがき」を書いている。
「・・死んだのが十三日で、『グッド・バイ』が十三回で、まだ
何とかが十三だといふから、この二篇（『富嶽百景』と
『トカトントン』）を加へて十三篇にすれば、太宰は
例の閉ぢた唇を歪めたまま、人なつっこい眼にいたづらっぽい
笑ひをうかべて、下卑た趣味だね、などといひ出すかも
知れぬ」
そして、最後のところに「あとがき」書いた日付を
「１９４９年６月 一周忌を数日後に控えた日」
と、記している。
「桜桃忌」は亀井勝一郎などが中心になって準備し、執り行われた。
臼井吉見は「一周忌」と書いて、「桜桃忌」とは書いていない。
しかし、「きりぎりす」を編み、「あとがき」を書いた臼井吉見は
この数日後の１９日、午後二時ごろは、第一回「桜桃忌」に出向き、
おそらく、三鷹・禅林寺の太宰治の墓前にいたのだろうと思う。
（つづく）
■参照
・フォトアルバム「太宰治を読んだころ」
■案内
・日記/「Home」案内
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