●11月7日(日) 曇りときどき晴れ
▼団地の掃除が始まったとき、ちょっと小雨が降りだして
きょうは15分くらいで、月一回の定期清掃は早々と
終わりになった。
家に引き上げると、晴れて来た。
イチョウもマツも、大きな枝が払われて
今年の落葉の量は少ない。
それは、この棟の住民の高齢化によって
大胆な剪定が希望されたからだ。
来年は、10年に1回まわってくる
3回目の役員の年になる。
▼11月に入って、1週間が経った。
1日、月初めの月曜日だった。
前日の雨で舗道に水溜りができていた。
それでも新しい月の始まりが、
仕事初めの月曜日というだけで
なんとなく清々しい感じがした。
3日、文化の日で休み。
ショウとアツシがやって来た。
今月のお小遣いをもらいに来た。
5日、歯医者に行った。
今年二度目の歯医者通いである。
▼「歯」のことを考えると、「寛容」を思い出す。
ここに移ってきてから、私はずっと
妙法寺駅から西に坂を登ったところにある
医療生協の歯科医院を利用している。
五、六人の担当医がいて、
曜日毎に医師が替わる。
中には若い先生も女医もいる。
もう二年近く前になるが
左下の奥のブリッジが傷んで来て
歯医者に行った。
三十前の新顔の医師だった。
ブリッジをはずそうとするが、
なかなかとれない。
医師は力を入れる。少し荒っぽい感じだ。
しかし、それでもはずせない。
そこで、ペンチのようなもので
奥の歯を左右にこぜった。
瞬間、何かパキッというような音がして、
「あっ」と医師がつぶやくのが聞こえた。
▼私にもわかったが、それは
ブリッジを被せていた奥歯が二つに割れる
音だった。
医師はどうこのことを説明したらいいものか
ためらった風だったが、こう言った。
「もう、未練はないでしょう!」
そして、さっさと奥歯を抜いてしまった。
▼自分の失敗を認めることは、なかなか
むずかしいものだ。
しかし、失敗だったことは自分自身が一番よく
知っている。
そんなことを思って、
不思議と咎める気にならなかった。
が、これは「寛容」の精神というより、
抗う力の衰えかもしれない。
武田泰淳は、私よりもずっと若くして
総入れ歯だったようだし、「楢山節考」の
おりん婆さんは、歯がよすぎて自分で折ったくらいだ。
「歯」のことで、そんな、つまらん事を考えていた。
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