●7月31日(金) 晴れ
きのう、帰りどこにも寄らなかった。
きのう、といっても三十一日のこと。
妙法寺駅に着いたのが夕方の六時二、三分前。
椿谷公園あたりに来ると、セミが鳴いているのが聞こえる。
クマゼミが朝と同じように大挙して鳴いているのだ。
坂を上り家に近づくとセミの声はもっと大きくなる。
アブラゼミやツクツクホウシやヒグラシでなく、
クマゼミも、夕方に、朝方と同じように盛んに鳴くことはある。
淡路の田舎で過ごした子供のころに経験があるし、
ムスメの住む団地あたりでは、セミの来る木々がいっぱいあって
それでクマゼミが、夕方にいっせいに鳴き出し、少し陽の落ちかけたその頃に
ショウやアツシを連れてセミ捕りに行った。
でも、きょうのこのクマゼミの鳴き方は半端じゃない。
大挙して、必死に、一斉に鳴いている。
夕方にふさわしくなかった。
●今朝、八月一日のこと。
寝ているとセミが鳴き出した。
朝のひんやりした風が開け放した窓から入ってきて
少し目覚めて、ああ六時か、と思いながら、セミの遠くで鳴く声を
聞きながら、そのまま寝入った。
どれくらい寝たのか、ストンと眠ってしまった。
突然、雷鳴が轟き、激しい雨音で眼が覚めた。
吹き降りが部屋に入らぬよう、身を起して硝子戸を閉めに立ちあがった。
居間の窓も閉めようとベランダに出ると
また雷が鳴り、雨脚が見えるほどの雨が降っている。
傘をさして中公園を駈け抜けていく中学生が見える。
横尾山には灰色雲と黒雲がかかり、雲はずんずん東に流れていて
高取山も雨雲で曇っており、もうこのあたりから雨は向うの方まで
降り始めているのがわかる。
雷鳴はまた轟き、雨はやや勢いを落としたが
降っている。
おどろくのは、雷が鳴り雨が降るなか
クマゼミが鳴きやまないことだ。
がむしゃらに鳴く。やけくそに鳴く。
雷や雨が祝福しているかのように、前にもまして
わめき散らすように鳴いている。
雨は小降りになり、いまはやんでいる。
曇り空のなか、八時十分、クマゼミはまだ鳴きやまない。
八時二十二分、大粒の雨が急に降り出した。
クマゼミはとうとう鳴きやんだ。
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