■『狂人日記』 (6)
●7月21日(火) 朝、土砂降り 昼から降ったりやんだり
5分か10分待てばやむこともこともある。
しかし、今朝の土砂降りはそんな雨ではなかった。
8時前ごろから、あたりは夕闇のように暗くなり
しばらくすると、誰かが二階で走っているような
だだだだっ・・という音がして、
大粒の雨が降り出した。 急いで窓をしめた。
びしょ濡れになるナーと思いつつ、家を出た。
二、三歩も歩かぬうちに、ズボンの裾が激しい雨のはね返しで濡れてくる。
家のすぐ下の階段を下り、団地の出入り口に来るまでの間で、
靴がびちゃびちゃになり、濡れたズボンが脚に纏わりつく。
●椿谷公園の階段は、水が小川になって段を下るように流れていた。
その脇にある側溝は、どどどどっと鉄砲水のような激流が走っていた。
階段の一番下、幼稚園の横の道に出るあたりは、
流されてきた枯葉や小枝が行き場を失って、山のように積もり、
会所をふさいでいた。
飛び越そうにも越せない幅でプールのような 水たまりができていた。
●湊川公園駅からは、西に一本筋を変え、アーケードのある商店街の中を
雨をさけて職場に向かった。
茶色の皮の靴は、黒みがかった濃い小豆色に変わっていた。
制服に着替えるため、靴を脱ぐと、脱いだ足の、じっとり濡れた靴下の足跡が
カーペットについた。
が、そのあと雨は、嘘のようにおさまり
降ったりやんだりしたが、ほとんど降らなかった。
ムシムシするばかりだった。
●こんな日の理事会は
早く終わっても疲れる。
更衣室で、帰るために、しっとりと濡れた靴に履き直し、
ロッカーの中に雫がたれなかいかと心配したズボンをさわってみた。
まだ、膝近くまで、搾りの悪い雑巾くらいに濡れていて
雨に打たれてもいないのに、ふくらはぎや弁慶の泣き所など
脚のあちこちに、ペタペタとくっついた。
家に着くのは十時をまわるだろうか。
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