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2009年07月20日11:21

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●うみうし独語(413)/■『狂人日記』 (5)

■『狂人日記』 (5)

 ●7月20日(月)  曇り

  曇り空に、うぐいすが鳴いている。

  きょうも休みで、内心、ちょっとだけ仕事が懐かしくなっている。
  あすは理事会である。夜7時半から始まる。5時にいったん仕事が終わり
  それから2時間半後に始まる。 時間待ちと、帰りが遅くなる・・。
  だから、ヤダナーと思う。 それなのに、連休3日目の今日あたりになると
  仕事が懐かしくなる。



 ●色川武大は「年譜」によると
   ・1968年(昭和43年) 39歳
      この頃、神経病の一種ナルコレプシー嵩じるも、医者に
      行かぬため本人には病名わからず。
      幻聴、幻覚甚だしく、長期入院の必要も予想せざるを得ず、
      入院費を稼ぐつもりで、変名”阿佐田哲也”で原稿料の高い
      週刊誌に麻雀小説を書く。
       ・・・・
   ・1974年(昭和49年) 45歳
      この頃、持病はナルコレプシーとわかり、病理まだ解明されぬため
      治療法わからずとのこと。
      それではこの状態を我が健康と思うよりほかないので、
      ぽつりぽつり本名を使う仕事のことを考える。
  と、ある。


 ●参考までに、いつものようにウィキペディアの解説、
  「色川武大」と、「ナルコレプシー」をあげておく。

 
フォト



  ついでに、YouTube「あの人に会いたい」の『色川武大へのインタビュー』も
  あげておく。 (これはオススメである)

  また、色川武大をとりあげた『驚きももの木20世紀』()も。
  (5分割して録画されている。5は、残念なことに音声がないが・・・)

  忙しい方は、『驚きももの木20世紀』4だけでも見ていただければ
  幸いである。
  『狂人日記』がなぜ書かれたのか、その書かれるまでがわかる。



 ●ところで、私は偶然にも、昭和50年頃にはこの病気「ナルコレプシー」のことを
  知っていた。
  というのは、私の配置転換先の職場に、同じ病気のKという私より二つ、三つ
  年下の男がいたからだ。彼は元、県警の施設部かどこかにいて、その後
  私の職場に転職してきた。


 ●嘘か真か知らないが、流通業では東洋一の物流センターと当時言われていた
  その職場では、5階建てかの建物の屋上に、高圧電線を引きこんで大型トランスで
  電灯電源、動力電源に変圧する電気室があった。

  彼はそこの「電気主任技術者」であった。
  巨大なトランスがいくつもも並ぶだだっ広い部屋に、机と椅子が
  一組あり、そこで一人で、トランスのお守や電気修理の仕事をしていた。

  その頃、私も幽閉状態で、労組活動の危険分子「過激派」とみなされ
  職場の仲間は私と口をきかないように指示されており、私は一人部屋を
  あてがわれ仕事をしたりしていた。

  あるとき、彼が私の部屋に来て、電気室の自分のところにはコーヒーセットが
  おいてあるから飲みに来ないか、と誘った。仕事で私に用があるときは
  電話がかかってくるが、私はトイレにでも行ったことにして電気室に
  はじめて彼といっょに行って、コーヒーを飲んだ。


 ●何でKが職場の禁を破って私に近づいてきたのか。
  おそらく、一人部屋という状況が同じだったことと、彼もまた
  職場の中にあって、誰とも違う仕事をしていて、
  しかも、他所から来た人間で「孤独」だったからだと思う。

  Kとはその後、ある事情があって別れてしまうことになるが、その日以来、
  彼はずっと、25年以上もの長きにわたって、私の親友であった。
 
  彼は自分がナルコレプシーであることを私に言った。
  突然、睡魔に襲われることや、歩いていていつの間にか眠ってしまって
  ドアにぶつかったことがあるなどと話した。
  普段の様子からはまったくの健康者であり、病気による何かの事件の話を
  聞いたこともない。もちろん、幽閉状態だから私が知らないだけかもしれないが、
  職場で眠ってドアにぶつかった話など、誰かが見ていれば噂にでもなったろう。

  おそらく職場ではそのことを隠していたし、薬を服用していることは誰も知らな
  かったろう。

  だから、そのときは「へぇーっ」と思って、私は、そんなこともあるものだ、と
  思って聞いたのだとおもう。
  


 ●ただ、一度だけ、私はその現場に立ち会ったことがある。
  付き合いはじめてかなりたったころで、二人で飲むことがあった。

  座敷で向かい合って飲んで、しゃべっていた。が、なんかヘンなのである。
  レコードの回転数が落ちるように、彼のしゃべる音声がのっぺりとしてきて
  のろのろと緩慢になり、そして歯が抜けた老人がしゃぺっているような
  フガフガいう音が混じった。 おやっと思っていると、今度は急に顔の筋肉が
  たるむような感じになり、表情がみるみる変化して目がトロンとしてきた。


  そのあとのことをよく覚えていないのだが、私はあわてて何が起きたのか、
  彼の方に行き、顔が急変していることを告げ、大丈夫か、と尋ねたりしたのだと思う。
  そして、いつも持参しているクスリを彼は飲んだのだと思う。



 ●後日、聞いたところでは、話に興が乗ってきたり、何か特に興奮するようなことが
  あると、急に力が抜けるようになることがある、とのだった。



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