mixiユーザー(id:1040600)

2006年04月07日01:18

93 view

●捨てる/■用・不用 (4)

■用・不用 (4)

 ●椎名麟三「深夜の酒宴」を読んでいるときも、あれは
  「四畳半生活」のことを想っていたのだと想う。

  たとえば、運河近くの安アパート。裸電球がついている。
  雨が降れば、トタンかスレートかで葺かれた屋根に雨があたる。
  
  雨は、四畳半生活に降るように、屋根にあたって
  音をたてる。

    ざんざん ざかざか
    ざんざか ざかざん

  山田今次の詩とかさなって、ガランとした部屋で雨音を聞いている。



 ●のちに題名もズバリ「簡単な生活」という評論を書いた秋山駿。
  彼の「無用者の告発」を読んだのも、あれも「四畳半生活」に
  憧れいてたからだろう。

  「四畳半」、それはひとつの「空間」。私の魂の居場所。
  「四畳半」は私の内面。生活のすべて。

  あとは何もいらない。
  あるのは、「四畳半」という空間に転がっている
  私の魂、内面だけ。

  そんな感じで、読んでいた。



 ●だから、引越しも簡単だ。

  風呂敷につつんだコップと歯磨きと
  二、三の道具。

  これを棒の先にくくりつけ、肩にかついで歩くだけ。
  西江雅之「花のある遠景」は、そう読んだ。

  「四畳半」の狭い空間から解放し、身ひとつ、
  魂は、手ぶらでサハラの砂漠を歩くようだった。


  ここ日本では、未練がましく、湿っぽく
  森繁久弥が唄っている。

   こんな恋しいこの土地捨てて
   どこへ行くだろあの人は
   どこへ行くのかわしゃ知らないが
   荷物片手に傘さげて
   わしも行こかなこの土地捨てて
   荷物片手に傘さげて

       (野口雨情/作詞)


 ●そして、しっかりと現実に掴まれ、見るのは夢ばかり。
  観念だけが飛翔する。

  あくせくと、日々を暮らす。
  生活も物も捨てることができずに・・・。


  「変わる」というのは大変なことだ。
  「捨てる」というのも並大抵のことではない。

  でも、憧れはいまもある。



 ●吉本隆明の本に「ほんとうの考え・うその考え」というのがある。
   (「正しい思想・誤った思想」でないところがいい)


  人は、自分の物語を自分で書いて、それをなぞって歩くような
  ところがある。


  俗には、「イメージ・トレーニング」や「自己暗示」というのが
  あるように、人生には、その人の「すでに書かれた物語」が
  あるようだ。


    蟹は自分の甲羅に合わせて穴を掘る。


  なのに、わざわざ「不幸になりたがる」こともある。
  それが、「うその考え」と私には思える。


 ●「四畳半」、そして「捨てる」。
  これは私の夢だ。

  茅辺かのうや、
  シモーヌ・ベイユ。

  エリック・ホッファーや
  良寛。

  捨てて、生活や生き方をまるごと変えた人もいる。


  ヤバイ私も考える。

  しかし、考えてみても、考えひとつで
  変わるものもあれば、変わらぬものもある。


  もう若くもないが、いまだ「憧れ」を捨てきれず
  かと言って、飛び出すこともままならず・・・。

  
 ●「愚かなる若者よ!
   君の腕は短く、君が慕う天は遠し、
   かの星々は、かの高きところに
   金の鋲もて固く留められ居れり。
   憧れもむなし。嘆息もむなし。
   眠れ、ただ眠れ、何ものかそれに優らん」

       (ハイネ詩集「夜の船室にて」から) 

  そして、

   夢は枯野を駆けめぐる


  また、孫の口ぶりをまねて言う。

  「まぁ、いいか」



■案内
  ・日記/「Home」案内

 

0 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する