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2009年01月31日16:09

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ヴェルピエ音楽祭2007アルゲリッチ室内楽リサイタル

番組「クラシック・ロイヤルシート」の放送としては昨日の続きになりますが、コンサートは全く別。

ここからは、ヴェルピエ音楽祭2007から、アルゲリッチ中心の室内楽リサイタルを2本。
1曲目は、2007年7/23、スイス、サル・メドランでのライブ収録のバルトーク、「2台のピアノと打楽器の為のソナタsz.110」。
2曲目は、場所は同じですが7/27、同じバルトーク「ヴァイオリン・ソナタ第1番sz.75」。

「2台のピアノと打楽器の為のソナタ」は、ピアノ、マルタ・アルゲリッチとネルソン・フレーレ、打楽器、グレゴリー・ズーパー(小太鼓,木琴他)とマイケル・イズラエリヴィッチ(ティンパニ他)というメンバー。

1楽章、アッサイ・レント〜アレグロ・モルト
不穏な楽想で曲は始まります。一体何処から何がやってくるのだろうか?先々に待ち構えるものは何か?不安に満ちています。

この曲が作られたのは、1937年。
前後関係で言えば、1934年にはヒトラーがドイツの元首になっています。
1939年には、ナチスがポーランドに侵攻し、ヨーロッパ大陸で第2次大戦が始まります。
そういった時代の足音が、ひたひたとバルトークには聴こえたに違いありません。
ティンパニーは時々ペダルでキーを上げ下げし、一層不安は昂じます。

そして、テンポがアレグロとなり、狂おしい祝祭がやってきます。

2楽章、レント・マ・ノン・トロッポ

何かが静かに静かに、しかし1歩々々確実に近付いてきます。この作られた静けさは異様な感じがします。

3楽章 アレグロ・ノン・トロッポ

ついに走り出す何か。走りだしたら、それは誰にも止められない。


「ヴァイオリン・ソナタ第1番」は、ヴァイオリン、ルノー・カプソン、ピアノ、アルゲリッチ。
1921年に作られた曲で、ハンガリーの旋法や民俗音楽が随所に取り込まれています。

1楽章、アレグロ・アパッショナータ

勢いよく溢れ出る泉の水のようなピアノの音型の上に、ヴァイオリンの情熱的な歌が始まります。
感情の飛躍が激しく、ある時は孤独に、ある時は狂燥が巡ってくる。

2楽章、アダージョ

1楽章ではあまり表に出なかった、ハンガリーの民俗舞踊的な楽想が濃厚に香ります。

3楽章、アレグロ

疾走の舞踊楽章。テンポが何段階かギアが変わり、その度に駈け出す様、色彩が変わり、その極みに駆け抜けて曲は一気に終わります。

古典のヴァイオリンソナタと異なり主従のバランスではありません、”ヴァイオリンとピアノの為のデュオ”と称した方がいいでしょう。
アルゲリッチは、両曲共にそうでしたが、アンサンブルミストレスとしての気遣いを見せ、カプソンを後ろからよく見ていました。
位置関係から、アイコンタクトはできませんが、繰り返しやっているアンサンブルでは、これで充分なのでしょう。
昔の、あたしは弾きたいように弾く、指揮者はオケをコントロールしてついてきて、という彼女のコンチェルトスタイルからは、随分変化したものです。
歳を経て、アルゲリッチは本当にいいアンサンブルプレイヤーになりました。


放送の冒頭で面白い事がありましたから、紹介しておきましょう。

1曲目、4人が舞台に現れ、客席の大きな拍手。
ここ迄は何処も同じコンサート開始の風景ですが、その後すぐ、アルゲリッチが椅子を持って位置変えをしています。
それは譜めくりの人の椅子で、自分の座り位置の左側にあったのを、右側へ持っていったのです。
ステージマネージャーに指示するのでなく、アルゲリッチが自らですよ。静かに何も言わずに。
この曲はあまりない楽器構成ですから、譜めくり含めて、位置がなかなか難しいのでしょう。
ピアノはステージ前面に、逆ハの字型に並び、プレーヤーは客席に対し斜めに背中を見せて座ります。
打楽器群は、ピアノの向こう側にあれこれ何種類も置かれます。
向って左のピアノにフレーレ、右にアルゲリッチ。
普通はピアノはステージと平行に横に置かれます。ピアニストは下手側に座り、譜めくりは当然その奥側、目立たない位置に座ります。ピアノに対しては左側です。
今回の場合、どちらもピアノの左側に譜めくりが座るという手もあったでしょうが、そうすると、アルゲリッチの位置からは、フレーレやパーカッションプレーヤー達を見やる方向に譜めくりが座っているという事になり、視線の邪魔になります。
で、譜めくりは、フレーレの左とアルゲリッチの右に座る事に相なった訳です。
これだけの事ですが、私にはそれがなかなか面白い事件として目に映りました。
他の誰でもないアルゲリッチがこのアンサンブルのマスターである事、また、アンサンブルでのコンタクトを大変重要視しているという事が、実によく判った訳です。
そして、繰り返しになりますが、それを誰かに指示するのでなく、自ら動いてそうしたところに、最近の愛すべきアルゲリッチを垣間見たように、私は思ったのです。
 
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