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2023年06月04日23:47

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「エリザベス・アーデンvs.ヘレナ・ルビンスタイン」

ブロードウェイ・ミュージカルの日本初演です。

エリザベス・アーデン…明日海りお
ヘレナ・ルビンスタイン…戸田恵子

タイトルのこの二人は20世紀初頭に化粧品メーカーを立ち上げ、熾烈なトップ争いをしていたそうです。
舞台ではエリザベスがピンク、ヘレナが青〜紺のイメージで衣装やセットが統一されています。
プログラムにもありますが、「頂点へ上がっていく物語ではなく、頂点から落ちていく物語」だということでした。
でも「落ちていく」といっても、二人ともパワフルで、ポジティブで、悲惨さがありません。

この舞台では二人は顔を合わせません。舞台がエリザベスのエリアとヘレナのエリアに分かれていて、それぞれの物語が紡がれます。しかしその物語がシンクロしながら二人の対比を浮き上がらせるのです。
しかも会ったことがないのにライバル意識むき出して張り合う。

女性が化粧をするようになったのは1920年代、第一次大戦後のモダン文化が花開いた時期でした。コンパクトやリップスティックなど持ち歩ける化粧品が生まれ、パッケージデザインが注目されるようになったのも。
そんな時代を切り開いてきたパイオニアとしてのプライドでしょうか。二人の火花の散らしっぷりが見どころです。

二人がしのぎを削る冒頭から、パートナーとの亀裂。相手を潰すために密告をしたら反対に密告され、二人とも召喚されてしまう。
結果、化粧品に成分を記載する義務ができてしまった。
二人ともとんでもない!と怒っていましたが、現在では当たり前のことですね。

戦争が始まってぜいたく品が規制されたときに新しいアイデアを考え付く。

このように同じシチュエーションで、あるいは同じような、あるいは違う対応を見せる二人。

戦後、新しい化粧品が生まれ、若者向けの手軽で安価な化粧品が普及して、二人ともピンチに陥る。でも二人とも自分の化粧品を安物と一緒にしたくないと、迎合するのを拒否。しかも、二人ともテレビ番組のスポンサーを提案されながら、そんなものを軽蔑して一蹴。

ところが新興の化粧品会社、それも以前にエリザベスのところに売り込みに来て、体よく追い返された人物が起こした化粧品会社がスポンサーになって、バカ売れ。これがレブロンです。
そんなものを軽蔑する二人のプライドをよそに、売り上げは落ちていく。
やがて、二人は経営を降りることを取締役会から提案される…。

それでも悲惨さが薄いのは、両方のブランドが今でも続いているからかもしれません。
それに、二人の意志の強さ、初期の化粧品業界を牽引してきた自負とその残したものの大きさが伝わってくるから…。

みりおちゃん(明日海りお)は本当に美しくて華やか。次々と着替えてくる衣装もとても素敵でファッションショーのよう。
戸田恵子さんはさすがにベテランミュージカル女優で、歌がセリフのように自然。声も凛としてよく通り、意志の強さが伝わってきます。

二人ともとても対照的で、優劣つけがたい主演ぶり。
ヘレナのセリフに、自分のことを「小さなポーランド人」というのがありますが、みりおちゃんと並ぶとかなり背丈の差があります。それもまたおもしろいところです。

また、年代によるファッションの変化も表していますね。
最初は1930年代。フレッド・アステアとジンジャー・ロジャースのダンスコンビが人気を呼んだ年代で、ジンジャー・ロジャースが着ていたようなスカートのシルエットが素敵です。長めのタイトで、膝から下の部分がふわっとフレアになるスタイル。みりおちゃんはこのシルエットのスカートが本当によく似合う。
40年代になると、もう少し裾が上がってフレアがなくなり、普通のタイトスカートに近くなります。

そして戦争が終わったら、モブの女性たちが釣鐘状に広がったフレアスカートで闊歩します。いわゆるフィフティーズですね。サブリナパンツの女性もいます。
さすがにエリザベスともなると、そんな若者ファッションは身に着けませんが。

それから、美術好きとしましては、ヘレナの肖像画の場面が興味深いです。こんな有名人に肖像画を描かせていたなんて。ダリのシュールな絵、ピカソの線画。デュフィは実際に絵を描いている場面も出てきます。そして、たぶん日本人にはあまり知られていないだろうタマラ・レンピツカ。ここに名前が取り上げられるということは、やはりアメリカでは有名なんだろうなー。1920〜30年代、モダンな時代の最先端としてもてはやされ、モダンな時代が過ぎたら忘れられていった画家。

プログラムによりますと、この二人は貧しい移民からスタートしてサクセスストーリーを実現させ、ビジネス革命をもたらしたというのに、自動車や鉄道のような製造業界の男たちほどの敬意を払われることなく陰に追いやられていた…ということです。それは女性だったから、そして扱う商品が「男にとって意味のないもの」だったから。
私も化粧品ブランドの名前としてしか知りませんでした。もっとその功績を広く知られるべき二人なんだということがわかりました。

東京、大阪、名古屋、ときて、後は京都公演を残すのみ。
4か所回るから4か所のチケットを取った時は多いかな?と思いましたが、いくら見ても新しい発見があって、あと京都しかないのが残念です。
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