「西遊記事変」
馬伯庸:著
齋藤正高:訳
ハヤカワ・ミステリ
随分前に読んでいたんですが、感想を書きそびれていました。
「両京十五日」を読んだ後、馬伯庸の本って他に翻訳されてないかな〜と思っていたら、あったんですね。
天界やら仙界やらを舞台にしたなかなか壮大なファンタジーです。
まずは太白金星である李長庚が鶴に乗って住まいである啓明殿に戻ってくるところから始まります。啓明殿には織女がいて天衣を織っています。織女は牛郎と別れさせられた後、啓明殿で神仙の衣を織る役目を与えられていたのでした。
実は、玉帝が霊鷲山(りょうじゅせん)から文書を受け取り、唐土の高僧が西天取経の旅をすることになり、諸国を通過するので天庭に世話を求めてきたのです。そうして観音大士が現れて李長庚にその手配の段取りを相談にやってきました。
その相談というのは、その道中で規定の劫難を用意しなくてはいけないので、それの準備に関することでした。決まった劫難をクリアしたら功徳を積むことができ、やがて仏となる資格が得られるのです。
妖怪は現地のものを雇うか、天庭から派遣するか、舞台となる場所は賃借するか、臨時に建てるか、瑞雲や五光などの演出はいるか…。決めなくてはいけないことがたくさんあります。
ということで、「西遊記」に書かれている玄奘の西天取経の旅の途中に遭う困難が、実は全て計画通り仕組まれていたものとして書かれているのです。しかもその舞台裏が何ともいろいろあっておもしろい。
計画通りにうまくいかず、あわてて手配をし直したり、道具立てをそろえるのに経費が掛かりすぎて清算がたいへんだったりしますし、報告書も書かなくてはいけません。しかも観音はアイデアは出すものの、すました顔で面倒を李長庚に押し付けてきて、李長庚は不満に思いながらもやらざるを得ない状況になっていくこともしばしば。
そこへ、啓明殿に一匹のサルがやって来て、李長庚に訴えかけます。孫悟空に対する疑惑です。李長庚は事実を調べてから知らせる、とだけ言いましたが、そのサルはそれで納得して帰っていきました。
李長庚はその後西天取経の手配のすったもんだが次々と起こるので、サルの訴えを放置していたのですが、そのうち全然返事が来ないのでしつこく訴えに来るようになります。それは天界をゆるがす大きな秘密に通じることがわかり、もっと早く調べていれば…と思っても遅かった、ということになります。
「西遊記」のパロディとも読めますし、中国の神仙譚、伝説などに出て来る仙人、妖怪などが片っ端から出てきてそれはにぎやかです。
結局は原題で「太白金星は少々お悩み」というように、太白金星である李長庚の視点で描かれ、最後を締めます。
作者はこの作品を長編の合間の息抜きのつもりで書き始めたらしいです。なるほど、遊び心いっぱいの内容です。歴史に題材を取った「両京十五日」に対して思う存分空想を広げて、楽しく書いたことが伝わってきます。
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