もとは江戸川乱歩の明智小五郎ものですが、それを三島由紀夫が戯曲化したものです。三島と親交の深かった美輪明宏が主演・演出・衣装・美術を担当して作り上げたこだわりの舞台です。以前テレビで舞台中継を見たことがありましたが、やはり生はすごいです。
まず劇場がかなり広いのにマイクを使いません。そのため劇場全体に緊張感が漂い、観客全員が真剣に舞台に集中することになり、それによって濃密な舞台空間が出来上がりました。観客の集中力を喚起することで、これだけ舞台の効果が高まることを実感したのは初めてです。やっぱり観客の態度って大切なんですね。
しかも三島由紀夫の書いたセリフは言葉が装飾的であったりリズムがあったり、それでいて無駄がなくセリフの心地よさを味わえました。
そして何と言っても緑川夫人実は女賊・黒蜥蜴の美輪明宏。舞台美術も衣装も全てが一部の隙もなく完璧に作り上げられ、隅々まで美輪明宏の美意識で作り上げられた世界です。その中にあって、黒蜥蜴は人間離れした、非現実世界に生きているような妖しい存在でした。
それに対する明智小五郎は高島政宏。美輪明宏の黒蜥蜴と対決するのにちょうどいい具合の濃さがあり、ダンディな探偵でした。
それにしても美輪明宏はすごいです。チケット代が1万円を越える舞台は珍しくありませんが、こんなにチケット代が全然惜しくない、それ以上の価値があると思って満足できる舞台はなかなかありません。
来年はジャン・コクトー「双頭の鷲」をやるらしい。これも見に行ってみようか…。
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