旅行記にかまけていたら、読んだ本の感想が全然書けていません。
とりあえずいくつかまとめて書いておきます。
「二十四史」
岡本隆司:著 中公新書
https://www.chuko.co.jp/shinsho/2025/04/102852.html
「二十四史」といえば司馬遷の「史記」に始まる中国の正史です。中国では王朝が滅びると、新しい王朝が前の王朝の「正史」を編纂します。中国史の根本的な基本史料です。
…ということを疑ったことがありませんでした。
そもそも歴代王朝の「正史」というものはどのようにして作られたのか。また王朝が分裂したり短命乱立だったりすると、どの王朝がどの王朝の史書を編纂するのか。よく考えたら知らないことばかりです。
そういったことが書いてあってとても面白かったです。「正史」ではありますが、内容にその時の著者のスタンスが表れていたり、紀伝の構成が史書によって違っていたり。
そして清朝になりますと、「正史」の数も増えていきますので、史書を研究する歴史学もできていきます。
ということで、中国の歴史学の歴史という側面もある本でした。
「名画を見る眼」�機↓�
高階秀爾:著 岩波新書
https://www.iwanami.co.jp/book/b625299.html
https://www.iwanami.co.jp/book/b626369.html
西洋美術の古典的名著ですが、高階氏が2024年に亡くなったことで改めて注目を浴びるようになった本です。しかも、2023年に図版を一新した新版を出してたんですねえ。
絵は見たまま、感じたままに鑑賞すればいいという風にも言われますが、時代背景から書き込まれた内容の説明などがわかると一層見方が深くなります。まあ、そんなもんいらん、と思って見るのが好きな人は否定しませんが、私はわかった方がうれしい。ルネサンスから現代までの主要な絵が詳しく説明されていて、よく知っているはずの絵も「なるほど〜」と思います。
最初に出てくる絵がファン・アイクの「アルノルフィニ夫妻の肖像」で、これはもう本当に細部まで緻密に描かれた絵なので解説するべきものがいっぱい。知らなかったことがいっぱい。
個人的にはプラド美術館で見たベラスケスの「宮廷の侍女たち」(ラス・メニーナス)が取り上げられていたのがうれしいです。この絵は本当に素晴らしかった…。あまりに大きいのでプラドから出ることはないと思いますので、実物を見られたのは幸せでした。
これだけの知識と教養で美術を解説してくれるような人は他にいるでしょうか…。
「マルコ・ポーロと世界の発見」
ジョン・ラーナー著、野崎嘉信/立崎秀和:訳
法政大学出版局
https://www.h-up.com/books/isbn978-4-588-00886-3.html
「マルコ・ポーロの冒険」が絶賛放送中なので、もっとマルコ・ポーロのことを調べたいと思って見付けた本。絶版なのでネット古書店で手に入れました。
口絵に中世の世界地図がいくつか載っていて、当時の世界観がわかるようになっています。
「東方見聞録」の内容や成立事情が詳しく考証されています。
マルコは商人であり、しかも15歳でヴェネチアを出て東方で長い年月を過ごしました。なので中世で文章語の基本だったラテン語の読み書きはまずできなかっただろうということ、そしてマルコが話していたと思われるヴェネチア方言では書物を表すには不十分だったと思われます。そこでルティケッロに出会って、東方で過ごした記録や回想を語ったら、当時民衆の読み物を書いていたルスティケッロはそういった本の体裁と同じように本を書いてくれたというわけです。
また、中世のヴェネチアで商人が習得するべき商売上の計算や商取引の教材があったことまで書かれていて、おそらくマルコもこういった勉強をしていたのだろうということです。国際的な通貨や重量の換算まで書かれています。
「東方見聞録」は、当時のヨーロッパではまだまだ未知だった世界のことを書いていて、空想だと思われることもありますが、ある程度真面目に地理書として受け取られてもいました。そして大航海時代が始まって、「地理書」という意味付けが薄れてしまってからも多くの言語に翻訳され、版を重ねて読まれてきました。マルコは自分自身のことを本の中にほとんど書くことはありませんでしたが、その分当時の世界を客観的に記述したものになっており、そうした「真実」が人々の心をとらえてきたということかもしれません。
「芙蓉千里」
須賀しのぶ:著 角川文庫
第1巻「芙蓉千里」
第2巻「北の舞姫」
第3巻「暁の兄弟」
第4巻「永遠の曠野」
https://www.kadokawa.co.jp/product/321611000852/
20世紀初頭のハルビンが舞台になっているということで読んでみようと思いました。
フミがハルビンに着いたところから始まります。
フミは辻芸人の父親に連れられて角兵衛獅子の踊り子をしながら日本中を回っていました。しかし父親に置いて行かれ、自ら女郎屋に売り込んで、船に乗ってハルビンにやってきたのでした。その時船で出会った一つ年上のタエという娘も同じ女郎屋に連れて行かれる所でした。「酔芙蓉(チョイフーロン)」というその店は日本人向けに日本人が経営している老舗で、フミとタエはまだ店に出る年ではなかったので下働きから始まるのでした。
と、いきなり最下層のどん底から始まる人生です。立派な女郎屋で雨漏りの心配もなく米のご飯を食べて布団で寝られるだけでも夢みたいに思う二人です。
ロシア人が清から鉄道敷設権を手に入れて開発したハルビンの街の様子も描かれます。地図も付いています。地名を見ると「ああ、あそこか」とわかります。そこへ進出してくる日本人。腹の探り合いのような国際情勢なども描かれます。伊藤博文もハルビンにやってくる…。
しかしその後タエは女郎になりますが、フミは日本で見よう見まねで覚えた日本舞踊を生かして芸妓の道に進むことになります。
そうしてフミの人生はどんどん波乱万丈に。絶体絶命の危機に陥るし、ついには愛する人を追って満洲の曠野へ飛び出すし。馬賊も出て来るし、昔の満州を舞台にした一大ロマンが展開していきます。
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