室生寺の次は聖林寺です。地図を見ますと室生寺からほぼ東にまっすぐです。
駐車場からはすぐですが、とても急な坂道です。前方を見たら「え?!」となるほどです。途中で折れ曲がります。がんばって登ったら小さな山門が現れます。入るとすぐ目の前が本堂です。
本堂に入りますと、巨大な頭部の地蔵菩薩坐像が目の前に現れてビックリします。その前に荘厳具やお供えのスペースが広く取ってあり、その前にみんなで座ってお話を聞きます。有髪の女性ですが、袈裟を着ているので尼僧でしょう。
目の前の地蔵菩薩がこのお寺の本尊です。三頭身ぐらい頭が大きいです。しかも顔が白い。胡粉が塗ってあるそうで…。相当な大きさの石造で、台座も同じ石から掘り出してあるそうです。これだけ大きかったら床が抜けないか…と思われるかもしれませんが、台座は地面から設置してあって、それを囲んで本堂が作られているとのことです。
地蔵菩薩の両脇には小さな掌善童子・掌悪童子が立っています。
聖林寺は奈良時代に藤原鎌足の息子で唐に留学した僧の定慧(じょうえ)が建てたとされます。
このお寺もまた近隣の神社との神仏習合でしたが、明治の神仏分離で神社に納められていた仏教関連のものが移されてきたということです。そして、本堂の横の方からは山の景色が見えます。あれだけの坂を上ってきただけあって、とてもいいながめです。その山のうち中ほどに重なるように見えているのが三輪山です。三輪山と言えば大神神社。その大神神社にこれまた神仏習合の神宮寺があったのですが、そこにあった大きな観音像が神仏分離で「持っていけ」ということになり、聖林寺に来ました。秘仏だったので布にくるんでしまいこんでいたのですが、そこへやってきたのがフェノロサです。そうして開いてみたら素晴らしい仏像が現れた…。フェノロサが開けさせたのは法隆寺の救世観音だけじゃなかったんですね。
そうして、現在の本堂の向かって右側の部屋に厨子をしつらえて公開するようになりました。かなり大きいので、像の下の部分は床下を掘って安置しました。そして火事などあった時にすぐに持ち出せるように、箱に入れて納めて、厨子の裏側が建物の裏側につながっていて、裏から開けたら箱ごと持ち出しできるようになっていたということです。
しかしやはり安全と保存のため、近年専用の収蔵庫を建てました。今は厨子の表面に西陣織で作ったというそっくりの観音像のタピスリーが掛けられています。(写真中)
といった説明を聞いて、収蔵庫に案内されました。ピカピカの新しい建物です。耐震性もOK。
中に入るとさらに十一面観音を安置している部屋があり、その前で再びお話を聞きます。
この十一面観音は木心乾漆と言う技法で作られています。木で芯を作り、その上から漆をペースト状にして成形していきます。乾漆という技法は奈良時代の特に後期の仏像に用いられることが多く、平安時代になるとすたれてしまいます。ということで、この十一面観音は奈良時代の作と言うことになります。
十一面観音は頭に十の顔が載っています。本面と合わせて十一。
まず正面頭上に三つの菩薩面。その左にしかめた顔の瞋怒面が三つ。右側には牙を生やした白牙上出面が三つ。頭の後ろに暴悪大笑面。これで十面。そして頭の中央には如来が載りますが、如来なのでノーカウント。これを聞いたら、今までうろ覚えだった十一面の種類が頭に入ってきました。
こちらの十一面観音は正面の真ん中の菩薩面と暴悪大笑面が欠けています。簡単にはずれるものではないので、なぜなくなったのかは謎。
手には花瓶を持ち、蓮の花が入っています。つぼみと開花したものが混ざっているのがお約束。
説明を聞いたところで、ようやく中に入ります。
…大きい。
ガラスケースに入っています。このガラスは特殊なガラスで映り込みが非常に少ないということです。確かに、あまりガラスケースを意識しないで像そのものを目の前に見る感覚で見られます。そして360度見られるようになっています。なのでぐるーっと回って見ます。
いや〜〜、すばらしい。
写真では見たことがあったのですが、金箔がムラになってはげたりひびのようになっていたりして惜しいな…と思っていました。しかし、実物を目の前にしますと、はげた部分を越えて造形のすばらしさが伝わってきます。大きな像ですが、とても優美です。後ろに回りますと、背中のあたりが漆のような質感を感じます。せっかく後ろも見られるのに、暴悪大笑面が欠けているのはつくづく残念。尼さんにそう伝えますと、やはり正面と後ろの面だけ欠けているのはおかしい、ひょっとするとボストン美術館あたりに眠っていたりして…などと言います。ということは、ひょっとして…。だとしたら、彬子女王のような人が埃をかぶった倉庫から見つけ出してくれたらいいんですけどねえ。
それから本堂に戻ると、横の方の部屋でマンダラ展をやっていました。一応ざっと見ました。
そして小さな売店があって十一面観音の絵葉書を売っていました。全部で8枚あるので8枚セットを買いました。十一面観音が色々な角度で写っていて、アップや後ろ姿、頭上面や優美な左手のアップまであります。
そうして急な坂を降りてバスに戻りました。
ログインしてコメントを確認・投稿する