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2019年04月11日01:14

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アール・デコの館、東京都庭園美術館

東京都庭園美術館は、もともと朝香宮邸として建てられました。1933年の竣工で、当時流行のアール・デコ様式で装飾されています。アール・デコが好物の私は以前から行きたいと思っていました。

朝香宮は名前を鳩彦(やすひこ)殿下といい、もともと皇族ですが、何代か前の天皇にさかのぼり、代々宮家を形成してきました。明治天皇から朝香宮の称号を賜り宮家を創立しました。そして明治天皇の第八皇女と結婚しました。

当時の皇族は軍人になることが定められており、朝香宮も軍人として軍事研究の名目でフランスに渡りました。そして同年代の皇族たちもフランスに滞在していたので互いに親交を深めていたのですが、ドライブに出かけた時に事故に遭って重傷を負います。その看護のために、急遽妃殿下がパリに駆けつけました。朝香宮は順調に回復し、パリでゆっくりと療養生活を送ります。
当時は第一次大戦が終わり、「モダン」な文化が花開いていました。朝香宮夫妻はパリで最新の流行に触れます。そして1925年には「現代装飾美術・産業美術国際博覧会(Exposition Internationale des Art Decoratifs et Industriels Modernes)」が開かれます。この博覧会こそが新しい「モダン」な文化を体現し、ファッションから建築まで、工芸品や装飾品など新しい時代の産業を見せるものでした。「アール・デコ」という言葉はこの博覧会の名称の一部、Art Decoratifs(アール・デコラティフ)から生まれました。
朝香宮夫妻はこの展覧会を訪問しました。そしてのちに朝香宮邸の装飾を依頼するアンリ・ラパンのデザインに触れます。

交通事故のため予想外に長引いたフランス滞在によって、朝香宮夫妻は最新流行のモダンな文化をたっぷりと味わいました。そしてその装飾芸術を使って新しい邸宅を建てることにしました。
朝香宮がそれ以前に住んでいた家は、パリ滞在中に関東大震災で傷んで取り壊しになり、残った家族は仮住まいの建物に住んでいました。朝香宮も帰国後この仮住まいの暮らしになり、新邸の建設は切実のなものだったのです。
朝香宮は明治天皇から結婚の時に白金に広大な領地を与えられていました。朝香宮はここにアール・デコに彩られた邸宅を建てることにしたのです。

基本的な設計は宮内省内匠�錙覆燭�みりょう)の技師、権藤要吉が手がけました。権藤要吉はヨーロッパに研修に出かけ、現代装飾美術・産業国際博覧会にも行ったことのある人物です。
内装はパリで出会ったアンリ・ラパンに依頼し、フランスから資材を取り寄せ現地で組み立てました。また、ルネ・ラリックのガラスの彫刻の女性像が作られ、玄関の扉に据え付けられました。よくぞパリから運んだものと驚きます。壊れた時のスペアまであって、修復の時に一部が取り替えられました。

西洋の古典的建築や、その前の時代のアール・ヌーヴォーの植物的な曲線と違って、アール・デコはモダンで幾何学的なラインで構成されます。そのためこの宮邸も外観はごくシンプルで、張り出した円形の部屋や直線のリズミカルな組み合わせという新しい美意識が表現されています。

玄関を入るとまず目に留まるのはルネ・ラリックのガラスの彫像です。もともとはこの扉は開閉していたのですが、保護のため動かさないようになり、横の方から出入りします。床のタイルの幾何学模様も美しいです。(購入したパンフレットの写真)
中に入ると大広間があります。部屋のデザインはアンリ・ラパンです。
その横の小さな空間には「香水塔」がそびえています。セーヴル焼の背の高い白い噴水塔で、妃殿下が香水をかけて香りを漂わせたということで「香水塔」と呼ばれました。これまた素敵なアール・デコのデザインです。
さらに見事なのが大客室です。扉のモダンな装飾は見ていて楽しく、またシャンデリアもアンリ・ラパンによるアール・デコ特有のジグザグのラインを使った独特のデザインです。(7パンフレットの写真)
大広間と大客室と大食堂は、お客様をお招きしてもてなす空間でした。
それに対して2階は家族の居室になっています。殿下の居室と寝室、妃殿下の居室と寝室、浴室、書斎など。
ラジエーターカバーなど金属の透かし彫りの素材にもアール・デコのデザインが多用されていますが、これらは美術に造詣の深い妃殿下自身がデザインしたものと言われています。また一部のラジエーターカバーの模様が青海波になっていました。青海波模様ってアール・デコに見えるんですね。
照明のデザインも各部屋それぞれ異なっています。

朝香宮は終戦後皇籍離脱することになり、このお屋敷を明け渡すことになりました。
その後は吉田茂が外相公邸、首相公邸として使ったことがあります。
そしてさらに白金迎賓館という名称のもと、国賓を迎える施設になり、さらに一般人が利用する宴会場、結婚式場にもなりました。
そして東京都の所有となり、美術館に生まれ変わりました。

美術館なので、展覧会が行われます。
私が行ったときは「岡上淑子 フォトコラージュ 沈黙の奇蹟」という展覧会が開かれていました。シュールで不思議なコラージュ写真が並んでいました。

これだけフランス風アール・デコにこだわって作られた建物は珍しく、今ではとても貴重です。
中を見ている間、ウットリしっぱなしでした。

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