1939年の上海が舞台の音楽劇です。
開演前からバンドの演奏でチャイナドレスの女性が歌っています。わりとギリギリに来たので、もっと早く来るべきだったと思いました。
しかもこの歌、どうも中国語に聞こえる…。
あとでわかったのですが、主要な舞台となるジャズバーの歌手役の秋夢乃は中国人だったのです。日本にやってきて劇団四季に入り、主要な役を次々とこなしてきたのです。四季の母音メソッドで発音を鍛えたのだと思うと明瞭な日本語にも納得。
物語は公家の出で政府の要人を父に持つ白河清隆(藤木直人)が上海に到着して、暴漢に襲われている兄妹(マイコ、小西遼生)を助けたところから始まります。清隆は二人と親しくなり、フランス租界のジャズバー「ル・パシフィーク」に出入りするようになります。ここでは実際にバンドが演奏しています。
この時代を取り扱った「上海バンスキング」とかぶる所もあり、途中まであの名作と肩を並べることができるのかと気になりました。
しかしこちらは冒険活劇の要素もあり、最後は状況が二転三転して主人公がいかに危機を脱するか、という方向になって行きます。そうして危機を脱した爽快感と共に物語は幕を下ろします。もっとも、日中戦争の行方を知っていると、手放しでハッピーエンドとはいかないのはわかるのですけれど。
この話のネタは、実際に当時首相を務めた近衛文麿の長男、近衛文隆がモデルになっているということです。近衛文隆が国民党のスパイ、鄭蘋如(テンピンルー)と接触し、蒋介石と日本政府との和平工作を画策したといわれているとか。
作品には実在・架空さまざまな人物が登場します。けがをした文隆を治療し、なにかと面倒を見る医師。ジャズバーを買い取ったという支配人、ジャズバーのピアノ弾きは歌手に片思い。特高に狙われて逃げるコミュニスト。
そして、川島芳子と李香蘭と甘粕正彦がそろい踏みで登場します。李香蘭は本物の美しさやカリスマ性には及ばないものの、歌はとても良かったです。
そして川島芳子を演じるのは、元雪組トップスター、壮一帆。男装がカッコよかったー。尊大な口調にどこか虚勢を感じさせ、いかにも川島芳子はこういう人物だったかもと思わせました。出番は飛び飛びですが、最後の方では深紅のチャイナドレスで艶やかに登場し、日本の憲兵相手にピストル構えて立ち向かい、重要な役どころを担います。
それからもう一人私が見たかったのは春風ひとみ。元月組の芸達者・実力派娘役です。下宿のお茶くみおばさんで、セリフはほとんど中国語。何かと言えばお茶を入れて、中国語で「お茶を飲んで」とリピートします。
それが、二幕ではきらびやかな衣装でジャズを歌い始めるのですが、お芝居にも少しかかわっていて最初はお茶くみおばさんの正体は実は…かと思ったのですが、どうやら別人の設定のよう。チュンフォン(春風)って呼ばれてるし…。
セットも当時の上海を感じさせるようにできていて、実際に合ったお店の名前のネオンが輝きます。蘇州河にかかる鉄橋、外白渡橋も重要な舞台です。
歌は1曲この作品のためのオリジナルがありますが、あとは当時流行した歌です。
ムーンライト・セレナーデ、イン・ザ・ムード、煙が目にしみる、ブルームーン、夜のダンゴなど。
さらに上海の裏町で少女が「茉莉花」(好一朶美麗的茉莉花〜のバージョン)を歌い、李香蘭が「蘇州夜曲」を歌います。
ほとんどが「実際に歌っている場面」なので、歌手ではない主要人物は歌いません。壮さんも一節チラっと。川島芳子はレコードも出しているので、歌ってもいいじゃないかと…場面的に入りませんか。
カーテンコールは全員並んで歌います。
公式HP
https://cube-s.wixsite.com/matoyakyoku/special
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