中国陶磁の中でも北宋時代はその頂点を極めた時代であり、特に青磁と白磁の美しさは他の追随を許さない。
その中で、汝窯は活動期間が短く残っている品も少なく、その独特の淡い水色の器は大変希少価値の高いものである。
東洋陶磁美術館では以前汝窯の研究成果を展示したことがあります。発掘された断片やばらつきの多い展示で、とりあえず独特の水色の磁器を生み出した幻の窯を紹介するという内容でした。それでも私は汝窯の磁器を目の当たりにして、なんと美しい水色なんだろうと思ったものです。
さて、その汝窯で焼かれた「水仙盆」という独特の器形があり、台北の故宮博物院に収蔵されている逸品が勢ぞろいをする!という画期的な展覧会がこれです。しかも東洋陶磁美術館所蔵の水仙盤一点とともに世紀の勢ぞろいが実現したわけです。
ということで、東洋陶磁美術館の小さな特別展示室にゆったり空間を取って五点の汝窯の水仙盆が展示されました。汝窯の青磁の色は、雨上りの雲間から見える空の色、「雨後天青(晴)」を映したものだと言われます。器の底のふちにたまった釉薬の濃い色、外側の足の部分の淡い紫、釉薬のなめらかな輝き…いずれもため息が出るような深みのある美しさです。薄く貫入の入ったもの、まったく貫入のないもの、それぞれ趣があります。
故宮博物院の所蔵ということは、紫禁城に伝来したものです。特にこれらの汝窯の水仙盆は趣味人の乾隆帝がめでたものです。おかげで、器の底の裏に乾隆帝の詩が刻まれています。うれしがりの乾隆帝は、骨董を集めて愛玩し、集めた水墨画に賛を書いてハンコを押し、陶磁器に詩を刻みました。「なんてことをするんだ!」と思わなくもないですが、皇帝が刻んだものとあれば時代が立てばこれもまた文物の伝来を示す歴史の遺産になっているといっていいのかもしれません。しかし故宮博物院で見た玉には、当時はわからなかったのか、さかさまに詩を刻んでしまい、文字がひっくりかえった状態で展示されていたのは何とも…。
乾隆帝はついでに水仙盤を乗せる台座を紫檀で作りました。金でびっしりと細かい模様を描いた精緻なものです。
雍正帝から乾隆帝の時代にかけて、この汝窯の美しさを再現しようという試みが行われ、よく似た水仙盤が作られました。故宮に伝わる「倣汝窯」の水仙盤も一点展示してありました。美しい水色をしていますが、どうしても本物の汝窯には及びません。釉薬がなんとなくくすんだ感じで、美しい水色も平板に見えます。本物は微妙な色合いの変化があります。だからこそいくら見ても見尽くせない、いつまでも見ていたいような魅力を醸し出しているのです。
なので模造品を見た後はやはり本物を見たくなってもう一度ざっとひとまわり。
それから、今回は東洋陶磁美術館の宋代磁器を集めて特集展もやっていました。おかげで、普段の常設展で見ている器もイヤホンガイドの解説に入っていました。その中でも龍泉窯の鳳凰耳花生は汝窯の水色とは違ってやや緑がかった濃い色の青磁で、とろりとした釉薬の輝き、完璧な造形、いつ見てもうっとりとします。
そうして館蔵品の特集も見終わって、ミュージアムショップへ。
図録さんぜんえん…たかっ!!!この点数で?
汝窯の魅力を余すところなく伝えるべく撮影した力作写真の写真集らしい。しかもハードカバーの豪華な装丁。
ちょっと手が出ません。
「陶説」という陶磁器の雑誌でこの展覧会の特集をしていたのでそれを買いました。
それからもう一度特別展示室へ行って水仙盆を鑑賞しました。
本当にこの五点だけでたっぷり見たー、という気分になります。
いいものを見せてもらいました。
東洋陶磁美術館のHPでの紹介
http://www.moco.or.jp/exhibition/current/?e=366
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