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2022年05月30日01:45

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「華風到来 チャイニーズアートセレクション」

大阪市立美術館は秋から3年間、改修工事のため閉館になります。そのため館蔵品の特別展が行われました。
館蔵品のコレクションは個人の寄贈品が多く、それも中国美術が多いため、日本美術津に関しても、中国の影響があったり中国とのかかわりを持つものが多いということで、中国をテーマにした展覧会となりました。それが「華風到来 チャイニーズアートセレクション」です。

昔の関西の財閥、経済人は、その財力を使って美術品のコレクションを形成し、さらにそれを大阪の文化の発展のために、大阪市立美術館に寄贈していたのです。そもそも大阪市立美術館を建てるにあたって、住友家が茶臼山に所有していた土地を寄贈したのです。当時は大阪が近代都市として発展するためには文化を充実させることが重要だという意識を持っていたのです。
それなのに、どうしてこんなに「文化」が生活必需品ではないといって軽んじられる時代になってしまったのでしょう。

まず最初の部屋では壁沿いに並ぶのは水墨画。墨一色で表した竹の葉の描写の繊細なこと。
また、山水画は何層にも重なって上方へと視線をいざなうようになっています。そして隠棲する文人の姿が描かれるのは、理想的な生活を表しています。私が最初に中国の山水画に触れた時、何層にも重なっていく山の描写、薄墨の遠景など空間の奥行や広がりに雄大な自然とそこから醸し出される幽玄の世界が広がっていくのを感じて大変心惹かれました。その時の気持ちを思い出しました。じっと見ていると、その世界に引き込まれそうになります。そこに描かれているのは、西洋の風景画と違って理想的な世界です。
また、江南春色図は長い絵巻になっていて、それをたどっていくと水の豊かな風景にいざなわれて行くような気分になります。、水の上を行く舟、草木の茂る岸辺にところどころ点在する楼閣。

ここですっかりウットリしてしまったのですが、この部屋の中ほどには堆朱がある!青花もある!しかも景徳鎮。

次の部屋には青銅器。それから大きな拓本が並んでいます。大雁塔に褚遂良が揮毫した文章もある!大雁塔は、玄奘三蔵が天竺から持って帰ってきた経典を修めるために作られた塔です。
そうしたら、唐三彩があるので操られるようにフラフラとそちらへ。端正な駱駝です。すてき〜。
また漢式鏡があり、さらに唐代の鏡もあります。

次の部屋は日本美術です。日本では長らく中国美術を手本としてきました。それに学んで技法を取り入れたり画題を取り入れたり、中国風の人物を描いたりした絵が生まれました。
でも全然心に刺さらなくてざーっと流してしまいました。
水墨画でも、中国の水墨画は幽玄で、奥行きがあって、広がりがあって、雄大な自然を感じるのですが、日本の水墨画はそういった奥行きや広がりがあまり感じられないのです。紙のサイズの中だけの世界、みたいな。中国の水墨画を見た後にこれらの水墨画を見ると、ますますその差を感じてしまいます。
きっちりきれいに描かれてはいますが、お手本通りに描きました、みたいな気もします。

あとは大正〜昭和1:41 2022/05/30に画家が中国へ行って描いた絵がいくつか。
ポスターにもなっている島成園の絵は描け軸になっていたんですね。やはりきれいで繊細な絵です。そしてもう一枚上海娘の絵がありますが、こちらは気だるそうに横たわっています。
島成園は親の決めた銀行家と結婚して転勤で上海に行きます。上海で中国を題材にした絵をいくつか描きますが、結局夫は絵を描くことに理解がなくて、家事育児に追われるうちに絵を描かなくなっていくのです。
そのほか油絵で北京の街の情景を描いた人、天壇を描いた人、万里の長城を描いた人。

次の会場に進みますと、石仏がいっぱい。
山口コレクションの石像彫刻群です。あと小野コレクションも少し。今までも館蔵品展で見たことはあったのですが、だからといって流したりはしません。これだけまとまって見られる機会はなかなかないのでじっくり見ます。
特に北魏〜西魏時代のものが多いです。四角い石材の中に三尊像などが刻まれたものが多いです。横にも後ろにも線彫りなどの描写や文字や寄進者などが表されています。
また、道教の像もあります。おそらく仏像彫刻に刺激されて、礼拝の対象となるものを作ろうと思ったのでしょう。一見仏像かと思いますが、中国風の衣服を着ているなど仏像とは違う像です。
小野コレクションは龍門石窟から持ってきた唐代のものが多いです。

ここで「華風到来」の展示は終わりです。

しかしここからは大阪市立美術館の成り立ちを説明する展示になります。
開館は1936年。立派な近代建築です。図面と竣工当時の写真。それからポスターがいくつか。ポスターは全て戦後のものになりますが、時代を感じます。

さらに、中国以外のコレクション。
埴輪はあるし、エトルリアの陶器はあるし、イランのラスター彩はあるし、コプト美術はあるし。

また、「なにわの海の時空間」にもともと収蔵されていた海からの引き上げ品の磁器類も、閉館になった時にこちらに引き取られてきたということです。

さらに京蒔絵とか、鍋島焼とか…。

こんなにいろいろなものがあるなんて知りませんでした。

ずいぶん盛りだくさんな展示でした。
しかし、館蔵品放出のためか図録はなし。
もうちょっと絵葉書とかぐらい作ってくれないかな。
ほとんどの展示品は撮影可能です。だからといって全部撮るわけには。しかも長い絵巻は収まらない。

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