私はリストが好きです。それほどたくさん曲を知っているわけではありませんが。
ブダペストへ行った時も、リストが住んでいた家が博物館になっているということなので行きました。写真はその博物館です。入り口は撮影できましたが、中は撮影禁止なので絵葉書です。ハンガリー風の家具のある部屋、ピアノのある部屋。イケメンリストの肖像画もいくつか掛かっていました。
そうしたら今回宝塚でリストをやる!リストが好きなのと、れいちゃん(柚香光)がイメージピッタリなのでとっても期待していました。
最初の方はいかにもリストらしい場面が続きます。
ジョルジュ・サンドといい仲で、ピアノにかぶさるラブシーンはドキドキするし、リストが演奏すれば女性が騒ぐし。
れいちゃんはもうリストそのもの。
2階から見たんですが、ピアノを弾く指の長いこと。これがあの超絶技巧を生み出した指か、と思えるような。
でもリストはそんな風にふるまいながらも、本当の自分を探してたんですね。
途中からリストは長い自分探しの旅に出ます。
本当に自分が求めるものは何か…。
その割に、ハンガリーで貴族の仲間に加えてもらって得意になったり。
そこがまたさまよう人間の性を感じさせてくれます。
ピアノを弾いている途中から踊る。
剣を授けられたら踊る。
ダンサー・れいちゃんなので踊るんでしょうけれど、それもまたリストの心情を表現していて効果的に見えます。
超絶技巧のイケメンピアニストとしてもてはやされながらも、本当の自分、自分が本当にしたいことを求める「魂の彷徨」の軌跡が描かれた物語になっていました。
大枠はそれでいいんですが。
もうちょっと細かいところまで掘り下げてほしいと思う所も。
マリーといきなり駆け落ちするところが本当にいきなりすぎる。
「いきなり」を納得させる仕掛けが欲しい。
単に「自分をわかってくれた」「今の生活から逃れたい」では「駆け落ち」につながりません。特に宝塚なんですから、そこは「恋が芽生えた」に持って行ってほしい。ベタでもいいから、二人で愛のデュエットでもして、そこで二人が魂で結び付いていることを感じてその勢いで…とか。
また、ショパンとサンドが愛し合うようになったことがわかる場面があったら…。二人が恋人だったのは有名過ぎて知ってますけど、リストの恋人から始まっているんですから、リストと別れた、ショパンと恋人になった、ということをどこかで見せてほしい。別に過程を追わなくてもいいから、例えばせっかくドラクロワがいるんですから、二人が一緒にいる肖像画を描いている短い場面がちらっとでもあれば。そこで二人が仲睦まじそうにしているだけでも表現できたのでは。
そして、ラストシーンが唐突。
これこそ本当に「何年たったの?!?」になります。
いいラストシーンでもあるので、それまで重ねてきた年月がもっとしみじみ感じられたらよかったのに。何年前たっているのかさっぱりわかりません。
とはいえ、私はれいちゃんのリストが見られただけでも満足です。
なお、ハンガリー語は他のヨーロッパの言葉とは全く違う言葉です。名前も姓・名の順。ハンガリー語で「リスト・フェレンツ」をタイトルに採用したことでも、リストのアイデンティティや「魂の彷徨」を描こうとしたことがわかります。(「フランツ」はドイツ語)。
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