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2018年11月05日01:09

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詩『差異は咲く、白秋の元で』

故郷は遠くに来たりて気づくもの。

山から吹き下ろす風に辞易した私は遠く離れた地に住んでみれば、それか故郷の息吹だということを知った。

住んでいるこの街は風は穏やかで空気は湿り気を帯びて異質に思える。

あの怒り狂う獣のように吹き荒れる風がこの地に来ることはない。

ふと私は気づく。

そして不思議に懐かしく。

ただ、ただあの暴力的で獣じみた荒々しさの故郷に季節の合間に吹く突風を愛しく思うのだ。


先月に偶然、同郷の二人と出会った。

赤城の山から降りてくる暴風を彼らはこう評した。

へばりついた季節を洗い飛ばし、次の季節を運ぶ使者。

都会に憧れる田舎者のいじけた根性と共にやってくる大津波。

愕然とする。

そして理解する。


私達は同じ場所で育ちながら違う世界を視界に移している。

それを悲しいとも思うだろう。

それを皮肉だとも思うだろう。

だがそれぞれの差異が、悲しくも切ない私達の重なり合わないその違いこそが逆説的に孤独の寒さにほのかな温もりを与えてくれる。

ああ世界は一つではなかった。

人の数だけ。 思いの数だけ。

世界は分裂し、その美しさを万華鏡のように広げていくのだ。

どうかその見える世界を見せておくれ。
話でもいい。

歌でもいい。

そして詩でもいい。

あなたと私、君と自分。

季節は秋へと傾いた。

朝に薄く白い霜のはる、白い秋に。

そして咲き誇るだろう。

差異は咲く白秋の季節に。

差異は咲くこの白秋の元で。





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