『驟雨の後』
雨の上がった夜は何やら清々しく、空を舞う塵が無数の雫に払われ浄められたからなのか、休んでいた虫の音さえも透明感を増して耳に通ってくる。
「土砂降りの雨の音が好き。」
母はそんな事を言っていた。妻も同じような事を言った。
「包まれる感じがいい。」
女に降りかかる灰色の粉が何かは分からない(あるいは当人達にも分からない)が、その全てを洗い流したい無意識の欲があるのだろう。圧倒的な力で有無を言わせず洗い流してくれるのは、夫なのか、でなければ、夢に現れる王子様なのか。
透き通る夜の底に落ちて行く女は幸せな顔をしている。そして、ふと目を覚まし、月明かりにうっすらと現れる寝顔を見つけた男の顔も。
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