●2014年08月23日(土) 晴れ ときどき 曇り
▼「キツネくん。
北の空、見てごらん・・。
また、晴れてきて、白い、入道雲が出ているよ」
「ああ、ほんとうだ。
高いところには、筋雲もありますねー。
ベランダのほうは
低い雲がおおっていたのに・・・。
これだったら、洗濯物は、まだ取り入れなくて
いいですネ」
▼「ナラトさん。
これ、見て・・!
機嫌は、上々ですか・・?」
▼「キツネくん。
きみも、なかなかじゃないか・・。
どこから見つけてきたんだ、・・・、・・・、
きみも、やさしいヤツなんだ・・」
「まあ、いろいろあらーな、って事っす・・」
「そうだね・・」
▼「キツネくん。
まあ、そうゆうことで、『氷河期』というのは、どんな生き物にとっても
試練の時だった。
神はその人にとって耐えられない試練というものは、
お与えにならない、と言うが、決してそうでもないんだ。
正しいから生き残る、間違っていたから滅亡する、
そういう事でもないんだ・・」
「正しくても、間違っていても、
神は、等し並に絶滅させることもあるんだ・・」
▼「えーっ、ナラトさん。
神って、そんなもんなんですか?」
「ああ、旧約聖書に出て来る神は、生かすも殺すも
神のみこころ、人知は及びがたしだよ・・。
こうなってくると、他力にも近いものがあるし、
イスラムの「インシャラー(神の御心のままに)」にも、
ビートルズの「レット・イット・ビー (Let It Be)、
(あるがままを あるがままに 受け入れる)にも、
通じるものがある。
そして、それは、「なんとかなるさ」という意味にもなる。
日本語では、『なるようになる』ってことさ・・」
▼「ナラトさん。ナラトさん。
『氷河時代』から話がずいぶん、それてきていませんか・・」
「ああ、そうだね。
じゃあ、ちょっとスピードアップして、もとの
『素数ゼミの謎』にもどろう」
▼「『氷河期』にセミの仲間たちは、土中で成虫になる時期を待つわけだが、
2年で成虫になれるセミや、3年で成虫になるセミや、成長速度によって
いろいろのセミがいたと思う。
そして、いままでは、1年のサイクルで、春夏秋冬の気温の変化に
あわせて暮らしきたが、セミの仲間たちは暑い夏になっても、地上に
出ることはなく、ひたすら、乏しい食糧に耐え、温度上昇によって
地上に這い上がっていきたい欲望を抑え、自分の体力を蓄えた」
▼「これは言い方を変えると、いままで、『温度』を頼りに生活していた
考え方を、これからは、『時間』を頼りに生活していく、という思想に
考え方を改めた、ということなんだ」
「もし、体力もないまま、『温度』に迷わされて地上にあがろうとしたら
地上に出るまであいだに、力つきて死んでしまうことになるからだ」
「こうやって、セミは、自分の成長を待つ、ということと、
『時間』を測るという能力を身につけていったんだ。
「温度スイッチ」から「時間スイッチ」へ
▼「しかし、問題はまだあった・・。
と言うのは、同じ、同一種のセミの仲間でも、成長の早いヤツと遅いヤツが
いる。 それで、その成長速度によって、いくつかのグループができたと
しよう。
たとえば、17年周期の素数ゼミの場合、15年周期や16年、17年、
18年周期のグループに分かれたとする・・・」
▼「すると、どんな事が起こってくるか・・・?」
周期の違う仲間との間で交配が起きる・・
▼「たとえば図のように、15年周期のセミと18年周期のセミが、たまたま
同じ年に、地上に出てきたとする。
すると、15年周期のセミは、15年周期のオス・メスで交尾し、
18年周期のセミは、18年周期のオス・メスとだけ交尾するかというと、
そうじゃない・・。
15年周期のオス・メスは、18年周期のメス・オスとも交尾するんだ。
「交雑」というんだが、まあ、人間でいえば、日本人の男・女が、
スウェーデンの女の人や、男の人と結婚して、子供ができた、と思えばいい」
▼「そうすると、遺伝子情報の中は、日本人にあってスウェーデン人にないもの、
逆に、スウェーデンにはあるが日本人にはない遺伝子情報というのがあり、
それらの遺伝子情報が入り混じった子供が生まれる。
いわゆる『ハーフ』である。
交雑は、日本人のすぐれた遺伝子情報と、スウェーデン人のすぐれた遺伝子情報が
ともに現れ、いわゆる北欧美人で、バイキングの末裔である背の高い子供が
生まれたりする。
▼「蛇足だが、『
優生思想』といって、かつてのナチスの「人種差別」と同じように、
人種間の優劣を問題にし、交雑をなるべくせず、回避しようとする考え方がある。
残念ながら、セミの仲間は、まさに『交雑をもっとも嫌う』生き物なんだ」
▼「しかし、それには、理由があり、しょうがないことなんだ。
周期セミにおいて、周期の異なるセミと交わることは、すぐさま、
自分たちの周期の仲間の数を減らす、ということを意味しているからだ。
15年周期のセミと、18年周期のセミとが交わると、
15年周期ゼミ同士や、18年周期ゼミ同士が交尾した場合と比べれば、
当然の事、
15年周期のセミばかりが生まれたり、
18年周期のセミばかりが生まれる、
ということがないから、結果として、
15年周期のセミも、18年周期のセミも、
ともに自分たちの仲間の数を減らす、ということになる」
▼「したがって、セミのとって一番大事なことは、
自分たちと異なった周期のセミと、
地上に出た時に、でくわさないこと。
これが、生き延びるための、最大の戦略となるわけだ」
▼「ところで、キツネくん。
動物でも、植物でも、群れをなすものと、単独行動をるヤツと
ふたつの流れがあると思うけど、キツネくんは、どっち・・?」
「オレの主義としては、一匹オオカミじゃなくて、一匹ギツネちゅうか、
個人の自由が最も大切で、単独行動主義になるんでしょうか・・?」
「まあ、個人・個体としての主義・主張というものは、あるんだが、
その種・その仲間というのには、それぞれに、群れをなす種と、
なさない種がある。」
「セミはその点、はっきりしている。
『集団至上主義』とでも言うべき性格をもっている!」
▼「へぇーっ、そうなんですか。
『集団至上主義』・・・? 」
「キツネくん。
それは、すぐ理解できると思う・・。
セミは、土の中で何年か幼虫で暮らしているため、せーの、で
一斉に地上に出て、せーの、で、
せっせ、せっせ、と交尾して、自分たちの仲間を大量に増やす方が
たとえ、鳥たちに食われたとしても、種としては生き残れるからね・・」
「集団至上主義」の効果
▼「周期についても、多数派と少数派があったとしたら、絶対に
多数派にならないと損だと、セミは思うのだ。
ひそれも、そのはず、少数派になったり、仲間とタイミングを合わせる
ことに失敗すれば、こんな事が起きる・・・」
▼「それから、セミがよく、同じ木に集まってきて鳴いているのを、
見たことがあるだろう・・」
「ええ、ナラトさんの管理していたマンションの、前の映画館のところに
あるケヤキの大木、あそこにクマゼミの大群衆が鳴いていました・・。
そりゃあ、もう、話し声も聞こえないくらいの大音響で、滝のような
『セミの大滝』とでもいうべき轟音でした」
▼「セミの『集団至上主義』は、『事なかれ主義』も生む。
もし、冒険心があって、ほかの場所にメスを探しにいくオスは
飛んで行っても、誰もいないことが多い。
そうすると、新地開拓をするよりは、とにかく仲間の声のする方に
飛んでいく方が、『交尾の確率』は確実に、向上するからね・・」
▼「ああ、ついでに、ボクの間違いも訂正しておいたほうが、いいかも・・。
いつかの『日記』で、オスのセミが鳴くのは、メスを呼ぶためか、
それとも、自分の縄張りを他のオスに知らせるためか・・、
という問題で、オスが鳴いているところにメスがやってきて、交尾する
ところを見たことがないので、『縄張り説』を採用したのだが、それは
どうも誤りらしい。
セミは、オス・メス関係なく、オスの鳴き声頼りにオスもメスも
集まってくるんだ。 まあ、やっぱり、声の大きいヤツの所に集まるのか、
まあ、みんなが集まれるだけの広さとか、安全に交尾できるとか、
まあ、いろんな条件があるだろうけど・・」
▼「さあ、さて、キツネくん。
ここからが、いよいよ『素数ゼミ』の『素数ゼミ』たるゆえん
の『話』になるんだが、
『素数』って、どんな数字なんだろう・・?
キツネくん」
「ほら、また、オレに質問するーぅ・・・。
オレに質問するのやめてください・・」
「じゃあ、『アルバム』の絵を見て、考えてみたら
どうだろう・・。
『アルバム』の絵は、『素数の不思議』について、つまり
『素数ゼミの誕生の秘密』を描いているんだが・・。
それじゃ、これは『宿題』ということにしよう・・」
▼「ナラトさん。
ナラトさん。
勝手にひとりで、決めないでください・・・」
★★★ ★★★ ★★★ ★★★ ★★★
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